世界線1001回目の書き換え —ペットに転生した俺

宇佐耳 らっきー

序章 「聖女シエラは必ず死ぬ。」

「はぁ。またか。」

頭をかきながら俺は言う。

俺は佐藤レン。ニート。


パソコンを眺めながら、マウスをカチカチさせ、ため息をつく。

1週間に一度は見る光景だ。


パソコンの画面では、白髪の美しい女性が、涙を流しながら光の粒子になって消えていく。

眩しいほどに輝く白髪、白くてプニプニとした肌、クリクリとした目…

「ファイナル⊗The⊗FOREST」、このゲームのヒロインである。


…聖女シエラ。


彼女は最後にどうやっても死んでしまう運命にある。

このゲームは、魔王を倒すことが目的のゲームだ。

魔王を倒すため、魔王城を目指して冒険をするが、そこに行くまでにシエラの死亡イベントが何百個もある。


そう、いくつも世界線があるゲームだ。


ただ、どの世界線でもシエラは最後に必ず死ぬ。


だから、ゲーマーの間では「クソゲー」と言われている。

もちろん、魔王を倒す世界線はある。


しかし、シエラを救うことはできない。


シエラは、庇護欲がでるような見た目をしている。

ソレに加え、人間味がある。

だから、シエラをどうしようもなく愛する人が出る。

俺もその一人。


たとえ、その見た目が、言葉が、表情が、設定されたものだとしても。


死亡イベントを回避、またはクリアすることをできないのかと言われたら、答えは


YES。



   ★  ★  ★



回避することはできる。


ただ、最後の生贄の死亡イベントだけは回避できない。

ソレだけは。


ここだけの話だが、俺はである。


今ちょうど、シエラが死ぬ1000回目の世界線を経験した。


俺は、世界で最もゲームをした、世界で最もシエラを愛する人であり、世界で最もシエラを殺した人。


ちなみに、この記録とかは海外のサイトから盗んだ資料である。


これは、聖女シエラが死なない世界線、1001回目の世界線を探す物語。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界線1001回目の書き換え —ペットに転生した俺 宇佐耳 らっきー @RAAKI

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ