生命体

もっちゃん(元貴)

第1話 わたし

---チュンチュン


なにやら、小鳥の鳴き声がする。


「うっ、もう朝か‥‥‥」


仕事の支度をしないと思い起きあがろうとする。


 寝ぼけた瞼を開けると、家ではない何処かにいた。

 

 辺りを見渡してみる。滑り台や砂場がある。

どうやら、近所の公園で寝ていたようだ。


おかしいな、こんなところでは普段寝ないはずだが‥


 だんだん眠っていた思考が、機能し始めたようだ。


いや、それよりさっきから胸に違和感がある。



 胸の方を見るとナイフが刺さって‥


    刺さって、い‥‥る?


 

    「うぁぁぁぁぁ!!」



思わず、大きな声を朝から出してしまった。



えっ!どういうこと?一体俺になにがあったのだろう?


 まだ起きたばかりで、あまり動いていない脳を最大限働かせてみる。


 昨日は、たしか仕事から家に向かって、いつものルーティンで公園にある自動販売機でコーヒーを買いベンチで飲んでいたはずだ。


 その後は・・・あっ!思い出した!


 コーヒーを飲んでいた時に急に見知らぬ若い男がやってきて「金を出せ!」とナイフを突きつけて脅してきたんだった!


 それで、俺は必死の抵抗をしたが、男の腕力に負けてナイフを胸に刺され意識を失ってしまったようだ。


 そう言えば、ベンチに置いていた自分のカバンもなくなっているから、どうやらカバン自体盗まれたんだろう。


 うーん。救急車を呼びたいが、カバン自体盗まれたから、入れていたスマホもないし、お金もない。


 仕方がない近くの病院まで歩いていくとするか。

 

 公園を出て歩道を歩いていると、前から通学中の女子高生がわたしを見るなり


 「ギャー!!ナイフが刺さっている人が!?」


 悲鳴をあげながら逃げていった。


 たしかに、胸にナイフが刺さっているけど仕方がないじゃないか、素人が抜くのは血が大量に出て良くないと聞いたことあるし、犯人は素手でナイフを持っていたので指紋が残っていると思うし。


 その後も、道中出会った人々に悲鳴をあげられながら、病院に向かって歩いているとサイレンの音が聞こえてきた。


 パトカーがわたしの歩いている歩道のすぐ横に止まり、若い二十代くらいだろうか。1人警察官がパトカーから降りてきた。



 「きみだね。胸にナイフが刺さっている人って?」

 

 どうやら、道端で悲鳴をあげた誰かが通報したようだ。


 「はい、昨日の夜、泥棒に刺されまして…」



 警察官に事情を説明しようとしたら、救急車もやってきた。


 「事情は後で良いから、まずは救急車に乗ってください」


 救急車から救急隊員が出てきて、私を見るや


「救助者はあなたですね。早く乗って!」



 「あっ、はい。わかりました」



 救急車に乗せられ、病院で手術を受けた。


         ◇


 数時間後、目が覚めるとベッドの上にいた。


 ーコンコン


 扉を叩く音がする。


 「はい、どうぞ」

 

 −カチャ


 「どうも、わたしはあなたの手術を担当した田中です。寝ながらでも結構ですが、体の具合はどうですか?」


 「ええ、手足も動きますし、何にも問題ないみたいです」



 「そうですか。警察官の田口さんがあなたになにが起きたのか詳しい話が聞きたいそうで、今来てますが、呼んでもよろしいですか?」

 

 「ええ、いいですよ」


 田中さんが病室を退出すると、すぐに警察官2人が入ってきた。



「どうも、わたしは〇〇警察署の田口と言います」

 

 「先程、道端でお話を伺った同じく〇〇警察署の下田です」

 

 「早速ですが、あなたに起きたことを話してください」


 「はい…」

 

  わたしは、警察官に会社から帰宅時に公園で襲われたことや、犯人の特徴などを覚えていることを洗いざらい話した。


 「なるほど、些細なことでもよいのですが、その犯人、金をよこせの言葉以外になにか言っていなかったですか?」


 うーん。他に、何か…あっ!



  「そう言えば…あまり記憶が定かではありませんが、犯人に胸を刺されて、ベンチに倒れ込むときに、これで任務完了と言っていたような気もします」


 警察官の田口は、その話を聞いた途端、一瞬驚いた表情をし、もう1人の下田と顔を見合わせた。


 「そうですか….ご協力ありがとうございます」

 

 警察官2人は、そう言った後、急に足で帰って行った。


 その後、医師の田中さんが、わたしの部屋に入ってきた。

 

 「警察官の事情聴取後にすみませんが、わたしからも話をしてもよいですか?」


 「はい。わかりました」


 医師の田中さんは、ベッドの横にあった椅子に深刻そうな顔つきで座った。


 その姿を見て、一体何を言われるのか息を呑んだ。


 「わたしは、何十年と医師をやってきて、今回あなたの今の状態は初めてで、大変驚いています。信じられないかもしれませんが、あなたは


 何を言われるのかと思っていたが、そんなバカな話があるか!

 

 「なんの冗談ですか?そんなの信じられません!どうして死んでいるってわかるのですか?」


 「それは・・・あなたは、からです。心停止をしているのに他の臓器に以上は見られないし、血液も全身に循環している不思議な状態になっているのです」


 ん?一体どういうことだ?理解ができない。


 「わたしは、この通り身体は動きますし、刺された時に血が出てましたし、普通に生きていますから、心臓が動いていないわけないじゃないですか」


 「医師であるわたしも、その点については先程もいいましたが驚いています。ですから、これからあなたをしかるべき場所に移動してもらい、さらなる検査を受けてもらいます」



 医師がそう言った瞬間、ふと頭の中から機械的な女性の声がきこえてきた。



 −ただちに機能停止モードに入ります–



 

 機能停止?なんなんだ一体この声は!?



 この状況に理解できないまま、知らぬま脳内にインプットされていた主の命令により、今までの蓄積されたデータを、とある場所に送った後、



★★


 とある地下研究室



 −ピコーン、ピコーン


    

 『試作機101が機能停止、機能停止』

 


 『試作機101のデータを総受信中』

 


 パソコンから、知らせを受け取るデータ上では主と設定されている初老の髭を生やした男性がいた。


 

「おや?もう機能停止になってしまったか。あと数年ぐらいは、この国のデータが欲しかったが、他の国にまだいくつか試作機が稼働しているし、まぁ、よしとするか」


 「それから、協力者にも連絡しないと…」



⭐︎⭐︎


 とあるビル最上階の一室



 ワインを片手に眼下に広がる夜景を見ながら、とある人物から連絡を受けた中年の男性がいた。


        −ピッ


 「はぁ〜。働き手と臨時収入がなくなり、すぐに国からも捜査のメスが入りそうだな。もうこの国からトンズラするか」



         完

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生命体 もっちゃん(元貴) @moChaN315

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