ミュートされたリアル

桃里 陽向

ゆびきりげんまん

「これって顔デカく見えない?」

 そんな独り言を呟きながら今日も自撮りを投稿する。いいながつかないと死にたい。てか死ぬ。


私はこの世の中で浮いてると思う。この世は浮世だ。こんな考え方だからだろうか。私は昔から「普通じゃない」と言われて友達ができなかった。でも、


 「そういえば友達だった子がいたな」


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 とある日の小学校の帰り道


「岬ちゃん一緒に帰ろ!」


私が振り向くとお日様のような笑顔で話しかけてくる咲がいた。

咲は誰とでも分け隔てなく接することのできる子で、おしゃれで、かわいくて、友達もたくさんいた。


「う、うん、、、」


私は糸のような声で返した。


「岬ちゃん今日のお洋服かわいいね」


「そ、そうかな」


私はまんざらでもなかった。なぜなら最近リボンや髪飾り、かわいいスカートなども履いて髪にも気を遣っている。咲の影響だろうか。しかし、今日の咲はいつもより静かだ。気のせいかもしれないけど。


「私達ずっと一緒だよ」


咲が突然そんなことを言い出すからびっくりした。


「どうしたの急に」


「いいから、ゆびきりげんまんしよ?」


咲から半ば強引に手を引かれて、私達はゆびきりげんまんをした。


「私も、ずっと一緒がいい」


そんな約束をした次の日だった。咲は引っ越してしまった。


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 あれから時間がたって、私はもう高校生だ。お気に入りの髪飾りと、ミニスカートを履いて、化粧だってする。仕草の練習も忘れないようにして、学校に行く。今日から新学期だ。でも、私にはそんなことどうだっていい。


「昨日の投稿、伸びてないなあ」


投稿が伸びない、人に見られないということは、この世界では人権がないということだ。

最近では際どい投稿しか伸びなくなってきている。どうやら人々は刺激を求めているらしい。いままでのデッキでは通用しない。


私は学校ではそれほど目立っていない、と思う。しかし最近は視線を感じる。ネットでの私を知ってる人もいる。でも私は現実をミュートする。だって、ネットの方が誰かに求められてるし私も求めている。


朝のホームルームが始まった。まあ私には関係がない。


「転校生を紹介します」


先生が言った。

転校生?だが私はそもそもクラスメイトと話した内容なんて覚えていない。大事なのはネット

の海に居続けることだ。タイムラインに居続けること、タイムラインは流れが早すぎて、考える前に置いていかれる。だから、私は何かを投げる。よく見かける形に整えて、少しだけ尖らせて。


反応が来る。

数字が増える。

その瞬間だけ、存在が輪郭を保つ。


そんなことを考えていたら、先生が言った言葉が不意に、鮮明に聞こえた。


転校生の名前は

「白石 咲さんです。」


「--え?」


聞き覚えのある名前だった。





 

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