塩より砂糖をひとつまみ

チェゲ

第1夜 それは痛いでしょ

はぁ~ 人生ってほんとつまらない。


同じ電車、同じ仕事、同じご飯…。

上京してから会社でOL・一人暮らし…何も変わらずはや5年。

あまりにも代わり映えがない。

世の中にはカップルもいるけど、私には無縁。


いや!彼氏は欲しいよ!?

イチャイチャしたいよ!?

あま~い時間過ごしたいよ!!?

なーーーーんで私は独身なんだよ~!!!


「はぁ~、どこかに将来の彼ピッピ落ちてないかなぁ。」


深く息を吐く。

今日もチキンタルタル弁当買おう。

コンビニに行く途中、ふと横を見る。

夜の公園、明かりが少しだけある。

中にはヤンキーがたむろっている。


「友達って良いなぁ。あの子たちも元気かなぁ?」


地元ではよく友達を作っていた。

男女関係なく、同い年なら基本話が合って意気投合していた。

なぜか、友達以上にはならなかったけどね。


それじゃあ今は、上司の飲み会に付き合って…時々同期と愚痴言い合って…


「…帰ろ。」


買い物を済ませてコンビニを出る。

なんとなく、公園を見る。

すると奥のベンチに男性が座っていた。


「あれ?さっき居なかったのにな。今来たのかな?」


同い年…いや年上?

かなりのイケメンやな。


それにしても、あの飲みっぷり。

缶ビールをほぼ一気!?

ちょっとあの飲み方は心配になる。

気付けば近付いて、話しかけていた。


「…あの~?」


「んぁ?なに?」


「お酒、強いんですね。」


「へぇ?お姉さんも一緒にお酒飲んでくれるの?」


「え?いいんですか?1人は寂しいと思ってたんです~。」


「…へぇっ?」


私が話に乗ってくるとは思わなかっただろ?

男が『え?なんで??』って顔をしている。

特技:友達作りの私をなめるなよ♪


「あっ、このお酒!新発売のザクロチューハイじゃないですか!私も飲みたいと思ってたんですよ~!」


「え?なんで?いいのか?」


「ん?何の事です?誘ったのはあなたじゃないですか~。」


「そうだけど、結構投げやりだったんだけどな…。」



この人、目が笑ってないなぁ。

これは愚痴りたいことがある様子だ。

ここは“聞き上手の芽亜”にお任せよっ!


「ンッ…ンッ…プハァ~!」


「お姉さんも凄い飲みっぷりやな。」


「そりゃ、上司の飲みに付き合ってますからねぇ。聞きたくもない自慢話とか、一生合わないツマミで飲んでるから!!」


「それは御愁傷様だな。」


「それより…君!私はあなたに興味があるんですよ。話を聞かせて欲しいなぁ。」


「え、俺?…はぁ、話すつもりなんて無――」


「いやっ。あなたのことが気になるんです。全て吐いちゃって下さい♪全部受け止めますから!」


ここまですれば、話す気になるでしょ。

大抵の男女はこれで話してくれる。

これまでつちかってきたスキル、効果はどうかな?


「………はぁぁ~。まぁ、あなたには関係ないから、話してもいいか。」


よっしゃキタァーーー!!

こういう時、少し心を開いてくれた気がして、達成感を味わえるのよね!

どんな話でも明るく切り替えてあげるからね!


「でも、あなたにこれを話したら帰る。」


「『あなた』じゃないです。私は芽亜めあ!好きに呼んで良いですよ?あなたは?」


「…雄大ゆうだい。」


「そっ、雄大さん!話聞かせて下さい!」


少し戸惑いながら私を見る。

しかし、ゆっくり下を向いて話し始めた。


「学生の頃からやってたプロジェクトがあって…仲間と頑張ってたんだ。『俺たち3人で、絶対成功させような!』って。」


「へぇ~、凄いですね!」


「そうでもないよ。仲間も俺の彼女と昔からの親友で、成り行きで結成した感じだったし。」


「そうなんですね~。」


「でも、絶対社会の為になるって。信じて進めていたのに…。」


なるほど、よくある『若い頃から頑張ってた事が失敗しました。』ってヤツね。

なら得意分野よ♪

最後まで話を聞いた後に、認めてあげて褒める!

さぁ、早く話しちゃいなさい!



「彼女が親友と浮気してて、プロジェクトも奪われて、就活していなかった俺は無職になりました。」


「…………ふぇ?」


え?なに?ん!?

一度に出す情報量が多すぎて処理出来ない。


え、ヤバくない!?

もう何もかも失ってるじゃない!

しかも、就活してなかったからブランクが出来て、面接で不利になっているってこと?


戸惑っている私を気にせず、雄大さんは締めくくる。


「まぁ、別に今はどうでもいい。心も何とも思ってないよ。」


突如、私の思考が中断した。

え、なに言ってるの?

何とも思ってない?

そんなの…ただの強がりじゃない!


「じゃ、話し終わったから。俺は帰る。」


雄大さんが立ち上がりその場から遠ざかる。

すると、言葉より体が動いていた。


ガシッ!


「…?なんだよ。もう全部話したぞ?」


「…いや、まだです。心が何とも思ってないとか嘘です。」


「何を言って…」


「それは…痛いでしょ…!!」

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