第17話 秘密のお花見スポットで…。(明未の視点)

2029/4/3(火)PM9:00


 その前日の午後9時に、わたしの自伝風ドラマが2時間スペシャルでTVSで放送され、その主題歌として起用された。そう言えばわたしが産まれる前に、●村●菜さんの●イレの●様というドラマがやってたみたいだけど、あれに近い感じだ、ってパパが言ってた。


 4月6日に、Mスタ春の3時間スペシャル、4月9日のCount Up TV ライブライフ、両方ともトップバッターで出させて頂いた、わたし達がまだ13歳だから…。


 4月10日に社長に呼ばれ、学校帰りに会社に寄り、桜庭さんから、週間ランキング初登場1位で、ドラマの影響もあり、シングルが150.3万枚、アルバムが151万枚売り上げた、と伝えられた、本当に嬉しいし有り難い…。そんな中、ママが。


「ねえ、皆で今度の日曜日にやる、鹿の城公園の桜祭りに行こうよ?」

「良いけど、今の俺達が行ったら大混乱にならないか?」

「帽子被れば大丈夫っすよ?。まだマスクしてる人も多いっす!」


 と皆それぞれ言い合う中、ママが社長に「という訳なんですけど、良いですか?」と尋ねると社長が訝し気に「まあ構わんが、あまり目立つ事しないでくれよ。そうでなくてもお前達は、トラブルに巻き込まれ易いみたいだからな…。」と言うとすぐさま桜庭さんも「もしデジタトゥに何かあったら、我が社は莫大な損害を被ります」と言われ、すぐさまパパが頭を下げながら。


「有り難う御座います!、てか本当にすみません…。」

「だったら前の日にあーしの実家に行って泊まろーよ?。そうすれば当日、朝一でお弁当を作れるから」

「やったね蘭お姉ちゃん、凄く楽しみだよー!」

「ボクもっす!」

「くれぐれもトラブルに巻き込まれないでくれよ、もしそうなったら本当に一大事だからな…。」


2029/4/14(土)AM7:00


 この日わたし達は新幹線に乗って地元に行き、ママの実家に到着するや否や、蒼乃さんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい皆、朝一で来て疲れたでしょう、上がって」

「やっほーいお母さん、来ちゃった♪」

「これ、つまらない物ですが…。」


 とパパがお土産を渡しつつお邪魔させて頂き、皆で夕飯の準備を行ないつつご馳走になる中、ママが。


「そう言えば蒼っち、明日鹿の城公園の桜祭り、一緒に行けそう?。折角だからあーしらだけの秘密スポットでお花見しよーよ?」と言うとパパが「そんな所あるのか?、地元民の俺ですら知らないぞ」と言うとママが「あそこはあーし達家族だけしか知らない場所なんだけど、桜がホントに綺麗なんだよ~♪」と言うと蒼絵お姉ちゃんが気まずそうに。


「悪ィ皆!。アタシその日仕事なんだ、ウィッチもザックも…。その代わりルミーは来れるそうだ」

「ああ、あそこは普段ブラックな代わりに、日曜と祝日だけはしっかり休めるからな~…。」

「でも残念だよ、蒼絵お姉ちゃん達とも一緒にお花見したかったのに…。」

「ボクもっす…。」


 と蘭お姉ちゃんがそう言うと、蒼乃さんが。


「そう言えばあの事件の後、国太さんは安藤と一緒に逮捕され、晃子さんと智枝ちゃんはすぐ釈放されて、2人は晃子さんの姉夫婦の家でお世話になってるそうよ」

「ああ、あの似た者一家ね」

「何であびるがその人達の事を知ってるんだ?」


 とアビーさんが尋ねると、ママ達が秘密裏にわたしの部屋に来てくれた時の事を話した。それを聞いたアビーさんが。


「酷いな、その家族も…。」

「てかあんた達、もし鮫妻さん達にバレてたら、タダでは済まなかったわよ?、明未ちゃんも含めて」

「だってめいみんがあまりにも可哀想過ぎるんだもん!」

「あの時、ママ達が来てくれたお陰でわたし、どんなに救われたか…。」

「てか常司先輩、俺の高校時代のバスケ部の1個上でキャプテンだったんですよ実は。あの人からも虐められたなあ…。」

「ほんっと似た者同士っすね、鮫妻家も長田家も…。」


 こんな感じで夕飯を食べ終えてお風呂に入り、その日は眠りに就いた…。


2029/4/15(日)AM7:00


 翌日、わたし達は朝早く起きてお弁当と蒼絵お姉ちゃんの朝食を作って皆で食べた。職場に行く蒼絵お姉ちゃんを見送り、わたし達もお弁当や荷物を車に乗せて瑠実お姉ちゃんを待っている間、わたしは隣の空き家…。そう、かつてわたしが住んでいた家を見て、ここでの嫌な想い出に苛まれてると蘭お姉ちゃんが。


「どしたっすか明未クン?」

「わたし以前ここに住んでて、その殆どがあの人達からの嫌な想い出ばかりだったけど、脱獄する迄の約2ヶ月間だけでも良い想い出を作れて良かった、って想ってたんだよ…。」

「明未はここで、あいつらの理不尽にたった1人でずーっと耐えてたんだよな~…。」

「そだよ。さあ、それを忘れられる位楽しい想い出を、今から皆で作りに行こう!」


 ママのその言葉を皮切りに、わたし達は鹿の城公園に車で向かい、瑠実お姉ちゃんと現地で合流し、例の隠れスポットに向かう事にした。道中、瑠実お姉ちゃんの話を聞かせて貰うと、社会の大変さと、仕事で覚える事が多くて大変、との事だそうで…。


 更に道中、屋台が並ぶのが見えたけど、ママの手料理の方が断然美味しいから、目的地に一直線に向かった。道中、細いけもの道を見つけ、ママの案内で到着後、人が誰も居なく、他の人が来た形跡も殆ど無い。到着するやママが。


「ここが、あーし達の秘密の隠れ家だよ!」

「わあ~、綺麗!」

「ここなら俺らだけで水入らずにお花見を楽しめそうだな、でも何でここだけ人が来ないんだ?」

「そんな事より早くお弁当食べようよ?、ボクお腹空いたっす!」

「スマン皆、トイレ行きたいねんけど、場所解らんから教えてくれへんか?、あびる姉…。」

「オッケー!、ついでにあーしも行って来るから」

「俺達で準備してるから、ゆっくり行って来て良いぞ」


 こうしてわたし達は、2人がトイレから戻って来る迄の間に準備を終えて、少し早いお昼ご飯を食べる為にランチョンマットを敷いてお弁当と飲み物を用意し、2人が戻って来るのを待っていたその時、向こうから物音がした。


「ママかな?」

「トイレから戻って来たんすかね?」

「にしては早いような…。」


 とパパが言ってる間に何故か常司さんが現れ、猛ダッシュでパパに詰め寄り、お腹にパンチを食らわせると、パパがお腹を押さえながら蹲った。そして胸倉を掴みながらこう叫んだ。


「この野郎、国太ん家崩壊させといて、幸せそうな顔してんじゃねえぞ、ヅラ男のくせに!」


 と言いながら頭突きすると、パパはそのまま気絶してしまった…。そしてわたし達を睨みながら、今度はわたし達に近付いて来た。


「明未クン、急いでママ達のトコに行くっすよ!」

「うん、今トイレに居る筈だし…。」

「待てお前ら!。言う事聞かねえと、ヅラ男の顔と両手をグスグスにするぞ!」

「な、何をすれば良いんすか?」

「取り敢えず2人共裸になってレ●プレイしろ!」

「なっ、何でそんな事しなきゃいけないんですか?」

「おめえらがこの事を警察に言わねえようにする為だ。さあ早くしろ!、グズグズしてると人が来ちまう!」

「明未クン、今は言う通りにした方が良いっす…。」

「ハハハ!。随分物分かりが良いな?、おめえらにしては!」


 わたし達が服を脱ごうとすると、向こうから九十九と寿枝さんが現れた。


「久し振りだな~、智加」

「お盆以来ね?、智加ちゃん」

「2人共、これでこいつを拘束してくんねえか?」


 と言うと常司さんは、ビニール袋に入った結束バンドと荷造り紐を2人に渡して、それを受け取った。2人がパパを拘束してる間、脱いでるわたし達を見ながら常司さんは、スマホのカメラで撮影しながらこう言い出す。


「さっき綺麗な姉ちゃん2人がけもの道から出て来るのを見て、気になって入ってみたら、まさかおめえらが居るとはな~。つか2週間前のドラマの後、九十九が中学校に入った途端虐められて、学校に行けなくなったんだぞ!。それに俺の会社にも抗議の電話が殺到して、職場に居づらくなって辞めざるを得なくなったし、どうしてくれんだコラ!」


「わ、わたしは脚本家の方に、事実をありのままに話しただけですよ!」

「ボクもっす!」

「まあ良い、これでお前らは一生俺らの言いなりだ。ざまあ見やがれ、ハハハハハ!」


 と常司さんが撮影しながら勝ち誇ったように笑い、他の2人もパパを拘束しながら一緒に笑っていると(ドガッ!)と鈍い音がしたその先で、常司さんが右脇腹を押さえながら蹲った。次の瞬間、蹲ってる常司さんの頭上に踵落としを食らわせ、常司さんはその場にうつ伏せで気絶した。そこに居たのは、踵落としの構えをしてるママだった。


「あーしの可愛い娘達に、何させてんだよ!」


 ママがそう言うとすぐさま、2人を睨みながら歩み寄ると、九十九が。


「く、来るな!。こいつがどうなっても良いのか?」

「九十九、一旦ここを離れるよ!」

「でも、おとーさんが…。」


 九十九が狼狽えながらそう言うと。


「何だ、向こうから悲鳴が聞こえたぞ?」

「もしかして事件?」

「面白そうだ、行ってみようぜ!」

「え~、危なくない?」


 と、大勢の声があちこちから聞こえて来た。


「どうしようおかーさん、人が大勢来るよ?」と動揺しながらそう言うと、寿枝さんが顔を押さえて「あ゛~っ…。」と言いながら、観念したように落胆した。こうして常司さん達は、直後に駆け付けた警察に連行された…。


「ごめんね2人共、あーしが居ない間に…。」

「しょうがないよ、こんな目に遭うなんて誰も想像出来ないよ!」

「ボクもっす!」

「おーよしよし、怖かったやろ~!」


 とわたしがママの胸で、蘭お姉ちゃんは瑠実お姉ちゃんの胸でそれぞれ泣いていると、警察官がママの所に来て「すみません、一応貴女も署まで任意同行願います」と言われてママも警察に行く羽目になった。すぐさまアビーさんと蒼乃さんが車で来てくれて、パパを病院へ連れて行き、治療と検査をした所、命に別状は無い、との事で安心した。ママも警察署から戻って来て、それ迄の経緯を話しつつ、瑠実お姉ちゃんがこう言い出す。


「てかあびる姉、空手技であんな筋肉大男を倒すなんて、男の子みたいでカッコ良かったわ~!」

「男の子って言えば、わたし国太から昔『もしお前が男の子だったら(智力)と書いて(ともりき)、もしくは当て字で(ちから)って名前にするつもりだった』って言われたんだけど、どっちも嫌!」

「ボクは例え男の子だったとしても、薫って名前で行くそうだったっす…。」

「ねえママ、もしわたしが男子だったとしても、わたしを家族にしてくれた?」


 わたしの問いに、ママが約1秒間沈黙して、こう切り返す。


「勿論だよめいみん!」

「何だママ、今の間は?」

「例えめいみんが男の子だったとしても、あーしは家族として迎え入れてたよ、ともりき君。いや、ちから君!」

「わたしは、鶴牧 明未だよ~!」


 こんな感じでその場が大爆笑に包まれて、今回の件は幕を下ろした。ちなみに3rdシングルの売り上げは最終的に下記のようになった。それに近い売り上げの曲がどれ程凄い曲かを後にパパに教えて貰って、蘭お姉ちゃん共々に本当に驚いた。最後に1stアルバムも最終的に300.3万枚売れて、写真集風バンドスコアも社長の目論見通りにバカ売れした、と言われた…。


 229.9万枚 ●坂(●山●治)

 229.8万枚 Beast All Men!(Digital Tattoo)

 229.7万枚 ●AN ●OU ●ELEB●ATE?(安●奈●恵)


{上記の記載は作中のオリジナルの設定で、実在する売り上げ記録とは一切関係ありません。}


2029/4/16(月)


 常司さん達が逮捕された後、パパとママの手当ても無事終わり、わたし達はママの実家に戻り、ゆっくり休んで翌日の午後に東京へ帰り、会社に寄って今回の件を話すと、社長が。


「お前達、大丈夫だったか?」

「はい。てか、申し訳ありませんでした!」

「いえ、悪いのはあーしです!。『秘密のスポットに行こう』なんて言わなければ…。」

「過ぎた事を言っても仕方ない。それより明日の朝一に今回の件を一斉報道すれば、お前達が又注目されてCDが更に売れるだろう」


 と社長が言った後、わたしは古田さんに長田一家について尋ねてみた。


「彼等は結局どうなるんですか?」

「ボクも気になるっす!」

「女性陣はすぐ出られると思うけど、常司さんの方は傷害罪、器物損壊罪、拘束幇助、児童ポルノ法違反、恐喝罪、これだけやらかせば多分10年位出られないと思う…。」


 と説明されて、すぐさま社長が。


「そう言えば明未、以前学芸会で『東京武道館に絶対立ちます』とか言ってたそうだが、随分とビッグマウスだな?」

「違うんです!、あれは智枝に無理矢理言わされて」

「じゃあ辞めるか?」

「どういう事ですか?」


 わたしの問いに社長が。


「実は1stアルバムリリース後、『ライブをやって欲しい』という電話やメールが我が社に殺到してる。だから急遽、ライブを行なう事にした。開催場所は勿論、東京武道館だ!」

「やったね蘭お姉ちゃん、武道館でライブ出来るなんて嬉しいよ!」

「ボクもっす!」

「がっはっはっはっは!。本当に凄いな、お前達!」

「流石あーしの自慢の娘達!」

「まさか俺がそこでライブ出来るとは、サポートメンバーだけど…。」


 皆が驚いてる中、社長が。


「ちなみに日程は5月5日土曜日だ。本当はもっとデカい箱でやりたかったんだが、今空いてる最も大きい箱と日時がここしか空いて無かった。ちなみにチケット代は1万円だ」

「1万円って、新人アーティストのチケット代としてはちょっと高い気が…。しかもデジタトゥはまだ、14曲しか無いんですよ?」

「何言ってるのパパ、●猿が昔、●浜●リーナでライブやった時も14曲だったんだよ?」

「よく知ってるなあびる。それに『やって欲しい』というリクエストが殺到してる以上、企業としてファンのニーズに応えるのは当然だろう?」


 こうして、わたし達の武道館ライブが急遽、開催される事が決まり、社長室を後にした。


「まさか智枝に言わされた事が実現するなんて…。」

「それよりこの事、Berryenの皆に伝えるっすか?」

「やめとこう蘭。今あいつら多分、社会人になり始めて一番辛い時期だろうから…。」

「誘おうよパパ、それで来れないならしょうがないし…。」

「というかわたし達の勇姿、蒼絵お姉ちゃん達に是非見て貰いたいよ!」

「ボクもっす!」


 こうしてママが、蒼絵お姉ちゃんに今回の事を伝えると、ゴールデンウィークを確実に休める瑠実お姉ちゃん以外は来れるか解らない、と言われた。翌日、チケット販売が開始され、わたし達4人は会社の控室で待機してる中、わたしは思わず。


「初ライブがいきなり武道館なんて、本当に完売するのかな~?」

「ホントそうっすよね~。幾らCDの売り上げが好調とはいえ、1万人っすよ?」


 こんな感じでわたしと蘭お姉ちゃんが弱気になってると、古田さんが入って来てすぐさま。


「がっはっはっはっは!。凄いぞ皆、チケットが発売開始1分で完売だ!」

「やったよ蘭お姉ちゃん!、完売なんて嬉しいよ~!」

「ボクもっす~!。まさか1分で完売だなんて~!」

「まさか本当に、1万円のチケット1万枚が完売するなんて…。」

「解んないよパパ、転売ヤーが買い占めたかも知れないよ~♪」

「がっはっはっはっは!、それなら心配いらん。転売対策はしっかり行なってる!」


 こうしてわたし達のチケットは無事完売し、安心してリハーサルに勤しむ日々を、本番前日迄続ける事が出来た。


2029/5/5(土)AM10:00


 本番当日。朝一で瑠実お姉ちゃんが来てくれて、両手を合わせながらこう切り出す。


「スマン皆、他の3人は無理やった。ウチは3~6迄休みやから何とか来れたけど…。」

「仕方ない、ゴールデンウィークはスーパーにとって3大稼ぎ時の1つだからなあ…。」

「後の2つは何なのパパ?」

「お盆と年末年始だよめいみん。てかゴールデンウィークはイベントが多く行われる時期だから警備会社も忙しくなる、って蒼っちも言ってたな~…。」

「後、ゴールデンウィーク位は介護から解放されたいとかで、お年寄りが多く預けられるそうっすね」

「せやから、Berryenを代表してウチが見に来たさかい!」


 こうしてママと古田さんと瑠実お姉ちゃんが舞台袖から見守る中、本番を迎え緊張しつつ、所々間違えながらも何とか14曲をやり遂げ、大盛況の中ライブを終えた。わたしと蘭お姉ちゃんがパパやママ、瑠実お姉ちゃん、そしてサポートメンバーやスタッフさん達とハイタッチして打ち上げを行ない、瑠実お姉ちゃんはわたし達の誰かの部屋に泊まる事になったんだけど…。


「誰でもええんならウチ、蘭姉の部屋がええわ。これを機に蘭姉と腹割って話してみたいし」

「ボクも瑠実お姉さんと色々話してみたいっす!。後たこ焼き作って欲しいっす!」

「ほなら蘭姉の部屋で決まりやな、たこ焼きは明日作ったげるさかい。今日は移動やら何やらで疲れたわ…。」


 こうして瑠実お姉ちゃんが蘭お姉ちゃんの部屋に泊まる事になり、その日を終えた。後で聞いた話によると、お互い深夜迄色々語り合ったとの事。翌日の午前中、社長から呼び出され、わたし達は会社に行く事になったので、瑠実お姉ちゃんはそのまま明日の仕事の為に宮城に帰る事になった。社長室に到着後、社長がこう切り出す。


「お前達、昨日のライブご苦労だった。早速だがこれから、ジャパンテレビの『しゃべりまくり008』に出て貰う」

「あの生放送番組にですか?、俺何回も観てますよ!」

「そこでデジタトゥに重大発表を行なう、心しておけ」


 と社長に告げられ、桜庭さんが続ける。


「ご安心下さい、無茶な事は絶対させませんので…。」

「がっはっはっはっは!、だそうだからしっかり頑張れ!」


 と古田さんが締め括った。一体明日、何を発表されるんだろう…。不安に駆られる中、わたしと蘭お姉ちゃんは、4人でジャパンテレビのスタジオへと向かい、わたしと蘭お姉ちゃんとパパはスタジオ入りした。そして生放送の収録中、司会者が。


「今年の『26時間TV、愛で地球を救おう』の99キロマラソンのランナーは、Digital Tattooの2人に決定致しました!」

「ボクと明未クンが、26時間TVの今年のランナー!?」

「そう言えばもうそろそろ、ランナーが発表される時期だったな~…。」

「待って下さい!、わたしも蘭お姉ちゃんもまだ13歳ですよ。午後8時から翌午前5時迄どうするんですか?」


 わたしが驚きながらそう聞き返すと司会者が、午後6時半頃にスタートして、午後8時直前に建前上『翌午前5時迄自主的に走る』という事にする。その間は経過報告のみで、翌午前5時になったら又彼女達を撮影し始める。という流れで行く、との事だそうで…。わたし達は翌日学校帰りに社長に詳細を確認すると。


「そういう事だ、それに作戦はまだある。26時間TVのある週に合わせて、4thシングルを発売する。発売日は8月22日水曜日だ!」

「そういう事です。貴女達が一生懸命走ってる姿を見たら、大抵の人は感動してその場でポチるでしょうし、CD買いに行く人も絶対居る筈です!」

「早速桂は新曲の作編曲を、明未と蘭は新曲の作詞とマラソンのトレーニングを同時並行で行なって貰う。細かい根回しは我々に任せろ!」

「がっはっはっはっは!。大丈夫だ、キツイのは最初だけだ」


 と古田さんが締め括った、なんか色々大変な事になって来ちゃったな…。寮に帰宅後、ママにこの事を話すと。


「凄いじゃん2人共?、99キロランナーに選ばれるなんて!」

「でもわたし、やり遂げる自信なんか無いよ…。」

「ボクもっす!、幾らバスケかじってると言っても…。」

「大丈夫だ、プロのトレーナーさんがしっかり監修して下さるから無理はさせないだろう」

「明日学校から帰ったらトレーナーさんと打ち合わせして、早速トレーニング始めるんだって…。」


2029/5/8(火)


 翌日、学校が終わってから会社の近くのグラウンドでトレーナーの外山さん指導の下、ランニングと基礎体力作りに勤しんでいた。外山さん曰く、試しに1km走らせてみる事にした、わたし達の体力が現時点でどれ位かを知る為に。蘭お姉ちゃんは完走後もまだ余裕があるみたいだけど、わたしは…。


「はあ、はあ…。よく1km走っても疲れないね、蘭お姉ちゃん…。」

「でも久々に走ると、中々キツイっす…。」

「お前達、体力無いだろうな~、と想ってはいたけど…。蘭は歴代でもワースト5に入る程で、明未に至っては、こんなに体力無い人は初めてだ…。」


 厳しい現実を突きつけられて落ち込む中、外山さんが続ける。


「ただ…、素直さは2人共歴代トップだ。文句一つ言わずにサボらず、手を抜かずに一生懸命取り組んでるから、そこだけは評価してやる!」


 と言われ、2人揃って「有り難う御座います!」と言いながら頭を下げた。それを見て外山さんが。


「よし、午後からは基礎体力作りで筋トレだ!」

「は、はい。わたし頑張ります!」

「ボクもっす!」


 こうして初日のトレーニングを終えて、クタクタになりながら寮に戻って夕飯時に、ママが。


「2人共トレーニングどうだった?」

「本当に疲れたよ~、これを後3カ月半も続けられるのかな~?」

「ホントっすよ~。バスケ部で半年間やってたボクでも自信無いっす…。」

「2人共頑張れ、俺も作編曲頑張るから!」

「あーしも皆の栄養考えた食事作り頑張るから!」

「無理しないでね、ママも一応妊婦なんだから。もしママやお腹の子に何かあったら大変だよ…。」

「ボクもっす…。」


 こうして、それぞれのやるべき事に従事した。ちなみに翌日、2人共激しい筋肉痛に苛まれた。特にわたしは今迄本格的なトレーニングを一切やって来なかった為か、全身が痛くて力が入らず、とてもトレーニング出来る状態じゃ無かった。それを見て外山さんは酷く落胆していた…。


 その翌日からやっと動けるようになり、軽めのトレーニングから徐々にレベルアップして行った。そんな中、学業と新曲のレコーディングも同時並行で行ない、何とか無事完成した。今回のマラソンや愛や絆に因んで『2人で乗り越えよう!』というタイトルに決まった。


2029/7/20(金)


 この日は1学期の終業式で、午前中に学校を終えて、午後にトレーニングを行なった。この頃になると流石に運動オンチなわたしでも少しは体力が付いて、ある程度は走れるようになっていた。そして翌日、今日から夏休みで、午前中だけでなく、午後も練習するようになった。つまり練習量が今迄の2倍になりつつ、同時並行で歌とギターと歌詞のトレーニングも何とかこなして行った。そんな中、ママが。


「もし当日ゴールに間に合いそうに無かったら言いなよ、秘密裏に車に乗ってゴール付近まで運んであげるから」

「絶対やめろ!、そんな事したら大炎上するぞ…。」


 と社長から注意され、すかさず。


「わたし、絶対ズルなんかしないよ!」

「ボクもっす!」

「それこそ、デジタルタトゥーになって一生残るぞ!」

「がっはっはっはっは!。上手い事言うな、桂!」


 と古田さんが言うと、その場が大爆笑に包まれた。

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