第5話 夢がある夢ガールランド(明未の視点)

2028/8/27(日)AM8:00


 わたしは朝ご飯を急いで食べて鶴牧家に向かうと、あびるお姉ちゃんが出迎えてくれた。


「おはようあびるお姉ちゃん、今日は送迎宜しくお願いします!」

「おはよーめいみん。あーしも楽しみだよ、一緒に楽しい想い出作ろう!」

「もう少し待ってくれないか?、今日は全部で7人来るんだ。姉貴とラッズ、それぞれ4人ずつ乗せて行こうと思うんだ。姉貴の車にはアタシら3人ともう1人乗せたいから」


 と蒼絵お姉ちゃんが言うとすぐさま、桂お兄ちゃんの車が来た。


「おはよう皆、他のメンバーはまだ来ないのか?」

「もうそろそろ来る筈なんだけど…。」


 と蒼絵お姉ちゃんが言うと、「おはようみんなー!」と向こうから向こうからポニーテールをシュシュで縛った少女がやって来た。


「紹介すっぞ。こいつがアタシらのバンド『Berryen』のドラマーだ」

「初めまして、ウチは『桑島瑠実くわしまるみ』言うねん。地元が大阪やから関西弁使ってんねん。オトンの仕事の都合で2年半くらい前からこっちに住んでんねん。話は蒼絵姉から聞いてるさかい、2人共タメ口でええで。宜しくな桂兄、明未姉!」


 と気さくな感じで大阪弁を喋りながら自己紹介してくれた。身長は165cm位で、割とラフな格好且つジーンズで、胸は蒼絵お姉ちゃんよりやや大きめだった。


「こちらこそ宜しく、瑠実」

「よ、宜しく。瑠実お姉ちゃん!」


 わたしがそう返すと、向こうから「おはようございます、皆様」と言いながら別の少女の声が来た。


「紹介すっぞ。こいつはウチのベーシストだ」

「ごきげんよう。わたくし『梨木初なしきうい』と申しますわ。好きなアニメは『マリア様みたいに』ですわ。わたくしにも、所謂『タメ口』で大丈夫ですわ。宜しくお願い致しますわ、桂お兄様、明未お姉様!」


 と眼鏡を掛けたおさげの少女が、お嬢様風の口調で自己紹介してくれた。身長は瑠実お姉ちゃんより僅かに大きい位で、落ち着いた身なりのロングスカートで、胸はあびるお姉ちゃんに近い位大きかった。


「あ、ああ。宜しく、初…。」

「よ、宜しく、初お姉ちゃん。ていうか何で年下のわたしがタメ口なのに初お姉ちゃんが敬語なの?。あと『お姉様』って…。」

「気にするな、こういう奴だから…。」


 蒼絵お姉ちゃんがそう言うと、「待たせたな、諸君!」と言いながら、又更に別の少女の声がした。蒼絵お姉ちゃんが「紹介すっぞ。こいつがウチのボーカル兼リズムギターだ」と軽く紹介した後、その少女は片手で顔を覆いながら。


「ククク。我はBerryenの歌姫にしてレイガルマ帝国の女王『折北おりきたざくろ』、又の名を『ザクロード』。好きなゲームは『リングランサーⅠ&Ⅱ』だ。覚えておくが良いメイミス、そしてヤミノよ!」


 とツインテールを縦ロールした少女が、アニメに出て来る王族のような口調で自己紹介した。それによく見ると、右目が青く、左目は赤い。カラーコンタクトしてるのかな?。身長は蒼絵お姉ちゃんより僅かに低い位で、ゴシックロリータのドレスを着ていた、胸は瑠実お姉ちゃんと同じ位だ。わたしは戸惑いながら。


「よ、よく解んないけど宜しく。ざくろお姉ちゃん…。」

「よ、宜しくざくろ。それより、何で俺が『ヤミノ』なんだ?」

「山野だからヤミノで良かろう!」


 と言うと桂お兄ちゃんが蒼絵お姉ちゃんに歩み寄りながら。


「蒼絵、本当に大丈夫なのか?、色んな意味で…。」

「心配な気持ちはよ~く解る。だが安心しろ、こう見えて歌は上手いし、ギターも初心者は脱してる。何より音域が広いから曲作り易いぞ。それより、誰がどの車に乗るか決めようぜ!」


 と蒼絵お姉ちゃんが言うと、初お姉ちゃんがすぐさま。


「ではこうしましょう。あびるお姉様の車には、後部座席に蒼絵お姉様と明未お姉様。助手席にはわたくしが乗りますわ!。そして桂お兄様の車には、後部座席にざくろお姉様と瑠実お姉様。以上で良ろしいですわよね?」


 と急に仕切り出した、わたしは思わず感心して。


「凄い、誰がどの車に乗るかをもう決めてるなんて!」

「違うよめいみん、単に初対面の男性と一緒の車に乗りたくないだけだよ」

「何か鍋奉行ならぬ、車奉行やな~…。」


 こんな感じで各自、車に乗って目的地へと向かった。市街地を出て広い農道に差し掛かった。日曜の朝という事もあり、車が少ないからか?、あびるお姉ちゃんが何を想ってか、スピードを出し始めた。


「姉貴、安全運転しろ!。小6女児も乗ってんだぞ!」

「蒼絵お姉様の言う通りですわ!」

「だってめいみんに誰も優しくしないこんな町、早く出たいでしょ?」


 その言葉にわたしは嬉しくなって泣きそうになり、蒼絵お姉ちゃんが「よっしゃ!、そのまま天国まで突っ走ろうぜ、Knockin' on Heaven's Door!」と言いながらわたしに寄り添ってくれた。何言ってるか解んなかったけど、嬉しかった。まるでわたしを地獄のような現実から連れ出してくれるように…。


 午前10時過ぎ。わたし達は八重山ベリーランドの駐車場に到着し、約1分遅れて桂お兄ちゃん達も到着した。


「成る程、そう言う事やったんやな」

「農道に出た途端、急に飛ばすから何事かと思ったぞアルビレオ!」

「お陰で俺はもう既に疲れたけどな…。」

「ごめんごめん♪。さあ皆、館内へレッツゴー!」


 こうして館内に入る為のフリーパスを、皆それぞれ買う事にした。


「すみません、フリーパスを大人1枚、子供1枚お願いします」

「かしこまりました。小学生歳迄は4000円、中学生以降は5000円となります」


 と受け付けのお姉さんにお金を払った後、桂お兄ちゃんが。


「他の皆は自分の分は自分で買ってくれよ、全員の分を出す余裕なんか無いからな」

「本当に有り難う桂お兄ちゃん。わたしだけフリーパスはお年玉から天引きされてたから。『お姉ちゃんだから』って、勿論智枝は普通に買って貰ってた…。」

「マジかよ!、あの毒親共…。」

「まあまあ蒼っち。さあ今日はあーし達と思いっ切り楽しもう!」


 こうしてわたしは、本来親が楽しませてくれる事を、彼等にうんと甘えて、色んなアトラクションを思いっ切り楽しんだ…。


「あ~楽しかった!。本当に有り難う桂お兄ちゃん!」

「喜んで貰えて何よりだ。さて、国太君に命じられてるベリーパイを買いに行かないとな…。」

「ある意味、今回の最重要事項だからね~♪」

「本当にごめんね、あの人達が…。」


 こうしてわたし達は売店に行き、八重山ベリーパイを買う事になったのだが、桂お兄ちゃんが何を想ってか?。


「すみません、八重山ベリーパイ2つ下さい」

「かしこまりました。2つで8640円となります」


 と受け付けのお姉さんにお金を払う桂お兄ちゃんを見て、思わず。


「えっ!、あの人達に2つも買ってあげるの?」

「まさか、1つは鮫妻家に。もう1つはあびるん家で皆で食べる為だよ。明未だって食べたいだろ?」


「桂お兄ちゃん…。」と感極まりながらお礼を言うと、さっき迄向こうに居たあびるお姉ちゃんが。


「ねえめいみん、あっちにリボン売ってるから見に行こう!」


「うん!」と言ってリボンコーナーへ行った。そこには色んな柄や模様のリボンがあり、あびるお姉ちゃんに促されて色んなリボンを試着させて貰った。まるで着せ替え人形のように…、そんな中。


「わたし、オレンジとパープルが良い!」

「え~何で?、白とかピンクの方が似合うのに~…。」

「以前道徳の授業でカラーリボンの話をしてて、オレンジは『虐待やDVに反対』って意味で、パープルは『暴力やいじめに反対』っていう意味があるから好きなの」


 あびるお姉ちゃんが「めいみん、尊い…。」と言いながら泣きそうになってる中、ざくろお姉ちゃんが何処からか現れて。


「くくく。良い心掛けだ、流石我が眷属。我も同じリボンを付けてみたぞ、これぞ我が誇りだ!」


 と言いながら左にオレンジのリボンを、右にパープルのリボンをそれぞれ付けていた。それを見て感極まったわたしは思わず泣いてしまって、それを見たあびるお姉ちゃんが。


「あーざくっち、めいみんを泣かした~、いじめっ子~!」

「いじめてなどおらんわ!」

「違うの。わたし今迄『お前とお揃いなんて嫌だ!』とか、罰ゲームと称してわたしとお揃いをやらされてその人から、明らかに嫌そうな顔されて来たから、自分から進んでわたしとお揃いになってくれて、しかもそれを『誇り』と言い切ってくれた事が本当に嬉しくて…。」

「あ~俺も昔は、てか今も似たような目に遭わされてるな~。職場やあの一家から…。」


 こうしてわたしの夢のような時間は終わり、今から現実世界へと帰って行くのだった…。車中わたしは、思わずこう呟いてしまった。


「あ~あ、出来ればあの家に帰りたくないな~。しかも3日後に従姉妹達が来るし、わたし又部屋で待機させられるよ…。」

「めいみんは親族の輪に混ざらないの?」

「あの中に居たって従姉妹達に虐められて、反論するとお父さんにぶたれるもん…。」

「マジかよ?。最低だな、親族揃って!」

「蒼絵お姉様の言う通りですわ!」


 こうして自宅に着いた。桂お兄ちゃんが先ずわたしの家に行って、八重山ベリーパイを家族に渡した。それを受け取ると早速お父さんが。


「遅えぞヅラ男、いつ迄遊び呆けてんだ!。さあ皆で3等分して食おうな、智加はお姉ちゃんだから我慢しろよ?」

「やったー!。流石おとーさん、ありがとー!」

「ふふふ、ご馳走様ヅラ男君。さあ、お父さんが機嫌良い内に帰った方が良いわよ?」

「そんな事よりおかーさん、早く切ってよー!」

「だな母さん、紅茶用意しろ」

「うふふ、はいはい」


 お母さんがそう言うと皆足早に茶の間に向かって行った。わたしと桂お兄ちゃんは取り敢えず玄関を出た。


「本当にごめんね桂お兄ちゃん。あの人達、自分から催促しといてお礼も言わないなんて…。」

「ははは。別に良いさ、もう慣れたよ…。さあ、俺達はあびるん家に行って食べような」


 わたしは「うん!」と言って鶴牧家に向かうと、鶴牧姉妹のお母さんこと、蒼乃あおのさんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい。貴方が桂君ね、娘達から話は聞いてるわよ。今日は本当に色々有り難う」

「いえ、俺も好きでそうしてるだけですから。あのこれ、つまらない物ですが、もし良ろしければどうぞ」


 そう言いながら八重山ベリーパイを手渡すと、蒼乃さんが。


「あらまあすみません。お礼に夕飯食べていきませんか?、明未ちゃんも」

「すみません、ではお言葉に甘えてそうさせて頂きます、うっ…。」


 桂お兄ちゃんが感動して泣きながらそう答えた。うちの家族からあんな扱いされた後だから、余計そう想えて思わず感極まっちゃったんだろうな~…。


 皆で夕飯と八重山ベリーパイを準備して、それらを御相伴に預かった。9人だけどパイは8等分にした。鶴牧姉妹の父であるアビーさんと蒼乃さんが8等分を更に半分にして、それで良いと言ってくれたからだ。わたしはウチとは比べ物にならない程楽しく温かい団らんの中で、夕飯とベリーパイを美味しく、お腹いっぱいに頂いて、その日はお開きとなった…。

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