12月27日『観測と火について』

 マッチからろうそくに火が移される。炎は一瞬だけ一つになり、ほどなくして分かれて双子のように暗い部屋に聳える。

 たくさんの眼がその火を見ている。この家に棲む大勢の、いないものたち[#「いないものたち」に傍点]が、ぎょろりと見ている。祈っているわけでも、祝っているわけでもなく、ただ見ている。形なき視線が炎の輪郭を象り、微細な気流に揺れる炎が彼らの息遣いをつくる。

 振り消されたマッチの先端は黒く煙を上げている。誰が消した? 誰がろうそくの火を消さなかった?

 ろうそくの揺らめきの中に彼らは宇宙をみる。暗く湿気った地下室の真ん中に燭台を立てて宇宙をみる。数えきれないほどの星がひとつひとつの原子だった。

 彼らは星座を見出さなかった。その眼差しの空虚さによってすべての分子結合は崩壊した。ろうそくは蒸発し、それによってまた、彼らは死んだ。

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