お下劣妖精さんの倒錯的教育論

杜若狐雨

【史家の戯言】

 絶海の楽園アルス・フェリタの当代史家は、その著作においてかの者をこう評した。


 最高の頭脳と最低の姑息さを兼ね備えた、見た目癒やし系エロ妖精。弱きを罵倒ばとうし、強きを愚弄ぐろうし、どいつもこいつも有象無象とるにたらんとばかりに鞭を打つ。セコくてズルくて卑怯臭くて、下々ザコどもが慌てふためく姿を高処より見下ろすことに至上の喜びを見出す、真性の人格破綻者クズ


 目的のためには手段を選ばず、当然犠牲もかえりみず、時には主人すらをもエサにして、罠にかかった馬鹿者どもを主人もろとも踏みつぶす。そんな性根しょうねはおくびにも出さず、抜群の演技力で己へ向けられるべき怒りのすべてを主人に押しつけるあざとさは、控えめに言っても人外であった。


 まああれだ。主人を蹴っ飛ばして竜の巣に特攻ダイブさせ、主人エサが死にそうになっているのを尻目に、自分はさっさとお宝頂戴して逃げるタイプ。その本質を知る者たちは、口を揃えてこう語る。『悪魔』『寄生虫』『虐使ぎゃくしきみ』『侍従じじゅうの姿を借りた暴君』。およそ召喚されてよい生命体ではありえない。


 好き嫌いが極端に激しく、こいつが契約に応じた者は数えるほどしかいないとされる。厄介なのは、その者たちが想像を絶する苦難と引き替えに、たしかな成功を手に入れたことであろうか。果たしてこのクソ妖精は聖か邪か……ご意見ご感想、心よりお待ち申し上げております。


 これは、かの国の同時代を生きた人々から曰く付きで絶賛された、とある女の物語である。




*********筆者より**********

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