呪ってやる!

姉森 寧

わたしとハチワレちゃんとひなたくん

 ――これは、私の黒歴史。


  🦈


 「愛美あいみ、お誕生日おめでとう」


お父さんは水族館で、十さいになったわたしにぬいぐるみを買ってくれた。

かわいいサメのぬいぐるみ。


 わたしはその子に「ハチワレ(※1)ちゃん」っていう名前をつけた。

このぬいぐるみはだれかが持ってるかもしれないけど、

この名前のぬいぐるみを持ってる子は、だれもいないと思ったから。

こんなに小さくてかわいいお友だちがいる子は、わたししかいないんだよ!


 わたしはハチワレちゃんとなかよしになった。

おうちにはほかのお友だちもいるけど、

ハチワレちゃんは特別だった。

さらさらの手ざわりがお気に入り。


  🦈


 わたしのおうちには、よく、いとこのお兄ちゃんが来る。

おとまりすることもある。

そのお兄ちゃんは二さい上で、

名前は「ひなたくん」。

漢字が難しくて書けないけど、ひなたくん。


 ひなたくんにはお母さんがいないから、

おじさんが出張のときとかに来る。


 今日もそうだった。

わたしはいつもどおりにハチワレちゃんをおひざの上に置いてて、

ひなたくんはわたしに夏休みの宿題を教えてくれてた。


「ぼくも割り算は苦手なんだよなぁ……」


それでも、

ちゃんと教えてくれてた。


 ――そのとき、

ひなたくんの手が、机の上のコップに当たった。


 コップの中にはサイダーが入っていた。

だから、コップが倒れたら、サイダーがこぼれた。


 サイダーはわたしの方に向かってきた。

わたしの方、

わたしのおひざの上、

ハチワレちゃんのお顔にかかった。


 ハチワレちゃんはべしょべしょで、

べとべとで、

あまいにおいになった。


 「あぁっ、ごめん!!」


ひなたくんは大きな声であやまったけど、

ハチワレちゃんは泣いてる。

だって、そう見える。


 だから、

(のろってやる、ひなたくん、のろってやる……!)

って考えるのは、ふつうのことだと思う。


  🦈


  つづく


  🦈


※1 ハチワレ(八割、Alopias superciliosus,Bigeye thresher)は、ネズミザメ目オナガザメ科に属するサメ。

 (Wikipediaより抜粋)

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