シスコン兄姉の妹

十坂すい

第1話 シスコンな私の兄姉

「いくよ。3、2、1……GO」


私の間の前のモニターには、合図に反応したふたつの影と、その影に翻弄されるたくさんの人が映っていた。

その大勢は次々と倒れていき、ふたつの影は最奥にいるであろう今回のターゲットの元へ向かった。


『ルナ、目標は』


兄の声。


「例の部屋にいる。一応大男2人が護衛してるみたいだけど」


別のカメラでターゲットを捉えて、それを2人に共有。


『あははっ、たったのふたり?舐められたもんだね』


姉が言う。


『さっさと終わらせよう』

『だね。ルナちゃん、残りもお願いね』

「任せて」


話している間にも、2人はターゲットがいる部屋に向かってくれていた。

依頼完了もすぐそこだ。


「いい?ターゲットを含めて敵は3人。気をつけて」

『『了解』』


こんなことを言わなくても、ふたりならなんてことはないんだろうけれど。

心配するのも私の役目だ。


ふたつの影は部屋の扉の前に伸びる。

ここまでくれば、もう私の役目は終わりだ。実行役でない私は兄姉を見守ることしかできない。


液晶越しに、2人の動きをじっと見る。

勢いよくドアを蹴飛ばして、大男2人を瞬時に気絶させる。

……流石だ。


「なっ青羽あおば!?ま、待て、話が……!」

「話すことなんてない」


残ったターゲットがうろたえている間に、部屋には赤が飛び散った。


「帰りはルートBで来て」

『わかった』


兄の返事。姉は……やっぱりまだ刃を向けていた。

まぁいいや。兄がなんとかしてくれるだろうから。


私は体の力を抜いて、背もたれにもたれた。


ある男の暗殺。

今回の依頼も完遂だ。




***




少しの足音。兄姉が帰ってきた音だ。


「きゃあああああったっだいま月渚つきなちゃんっ」

「月渚、お疲れ様って言って」


私は引き気味に笑う。

あの任務中のかっこいい2人とは別人格かと思うほど顔が緩みきっている。

家に帰ってくるなりこれだ。困ってしまう。


「2人ともお疲れ様……」


私が言うと、2人は嬉しそうに笑って私に抱きついてきた。


「月渚ちゃんもおつかれさまっ」

「お疲れ様」

「……ありがとう」


仕事ではあんなにかっこいい兄姉も、家では私に懐いて甘える犬のようだ。

でも結局私はこうしてくれるのが嬉しくて、つい2人を甘やかしてしまう。


私たち3人は、裏社会で名の通る青羽のメンバーで、きょうだいだ。

兄の青羽星羅せいらと姉の綺羅きら。2人は双子で、青羽の双璧とも呼ばれている。

そして2人を指揮する私、月渚で青羽家は構成されている。

両親と、もう1人の姉は、私がまだ幼い頃に亡くなった。


そのせいか、2人は両親と姉の代わりに私に(過剰な)愛を注いでくれるようになった。

保育園に通っていた頃なんて、2人は学校を抜け出して、園のお庭の柵の外から私を観察していたくらいだ。

当然、2人は不審者扱いされて追い出されていたけれど。


「ふたりとも、お疲れだろうしお風呂入って寝なよ。お風呂沸いてるから」

「お風呂まで沸かしておいてくれたのか」


当然だろう。返り血が付いた体で寝てほしくはない。


「月渚ちゃんは私と一緒に入ろうねっ」

「え」


私はもう高校2年生だ。姉とはいえ、一緒にお風呂は少し恥ずかしい。そんなお年頃なのに。

さっさと逃げなくては。そう思っていたら姉に拘束された。非力な私ではこの拘束を逃れられない。

……こうなったら。


「星羅お兄ちゃん助けてぇ」


必殺、兄に助けを求める。発動!

すると兄からなにやら黒いオーラが出てきた。よしよしいい調子だ。


「ちょっ月渚ちゃん!そんなに嫌がらなくてもっ!あああやめて星羅くんいやああああ」


兄は双子の妹を羽交締めにした。


「よくも月渚に」

「いいじゃん今日くらいっ」

「ダメだ。月渚は俺と一緒にお風呂に入るんだ。な?」


なにを言っているんだこの人は。気持ちが悪い。


「ダメに決まってるでしょうがああああああ」

「いっ」


姉が応戦する。


うーん、まだまだ元気そうだなこのふたり。

私は頭を使って疲れて、もう眠いからさっさとお風呂に入って寝よう。


……また2人の抱き枕にされる前に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る