怜の母視点:いつまでも幸せに

 私は怜華れいかれいの母です。

 怜は、今年二十歳になったばかりの大学生で、私たち夫婦の、とっても大切な息子。


 小さい頃から体が細くって、むしろ女の子みたいにカワイらしいところがあるから、それをいつも心配してきました。

 怜は小さい頃から、友達に「女の子みたい」ってからかわれて泣いて帰ってきたりしてました。

 そんな時は、私が抱きしめて「怜は怜のままでいいのよ」って、なぐさめてたんです。


 やさしくて照れ屋で、笑顔がとてもすばらしくて、本当にいとおしい子です。


 そんな怜が、高校一年生の頃、美咲さんという女の子と付き合い始めた、って聞いたときは、正直ビックリしました。


 美咲さんは怜より二歳年上で、その時はまだ高校三年生。

 見た目も性格も、まさにギャルっぽい感じで、怜とは正反対。


 怜はいつも「美咲ちゃんは、とてもやさしいんだよ」って赤くなって言ってました。

 だけど、私は内心、「怜はまだ高校生なのに、二歳も上のお姉さんに振り回されてないかしら……」って、かなり心配だったんです。


 でも、美咲さんが何度か、自宅へ遊びに来てくれたとき、怜がとっても幸せそうな顔をするのを見ていました。

 それに美咲さんは、ギャルっぽい見た目だけど、あいさつはちゃんとしてるし、私たちにも気遣いしてくれていました。

 なにより、怜の話をするとき、目がキラキラしてて……本気で怜を好きなんだな、って伝わってきました。


 それで、「この子なら、怜を大切にしてくれるかも」って、少し安心したんですよね。


 それから、怜が高校三年生になったばかりの5月のある日。

 怜から、「美咲ちゃんが、今日は大事なお話があるって、家に来たいって言ってる」って、言われたんです。

 顔を赤くした怜が、

「結婚の話……かも」

 って小声で言ってきて、私は夫と顔を見合わせて、

「え、え? もう、そんな話……?」

 って、ビックリしちゃいました。


 そのあと、美咲さんが一人で来て、リビングに通して、怜も一緒に座って、四人でソファに腰掛けました。

 美咲さんは、普段の派手めなギャル服じゃなくて、わりとカッチリした服装。

 でも髪は明るめのままだし、ネイルもキラキラで、やっぱりギャルオーラは全開。


 そんな美咲さんは、私たち三人の前で、ピシっと背筋を伸ばして、

「今日は、大事なお話があって来ました」

 って切り出して、リビングの床にさっと正座して、私たち夫婦に向かって頭を深く下げて、

「息子さんを、私にください!」

 って、いきなり宣言されたんです!


 結婚の話かもと、怜から聞いてはいたものの、あまりに唐突な宣言に、夫も私も、ポカーンってなりました。

 私たち夫婦に並んで座っていた怜を見ると、真っ赤になって、うつむいて震えてて……カワイイけど、こんな大事なときに、何も言えないんだから!


 美咲さんはそのままの姿勢で、私たちのそんな戸惑いなんてお構いなしに、

「怜さんのお母様、この世に怜さんを産んでくれて、本当にありがとうございます!」

 って、私に頭を下げてきて、それに続けて、

「怜さんのお父様も、こんなに怜さんをカッコよく作ってくれて、それで、やさしく育ててくれて、うれしいです!」

 って、夫にも告げてきたんです。


 正直、「作ってくれて」っていう表現に、夫はドン引きして、しばらく何も考えられなくなっちゃったようですけど、私はもう、涙が出そうになりました。

 この子が、こんなに怜を愛してくれているなんて。

 しかも、まだとっても若いのに、こんなに真剣で……。


 そんなことを考えてるうちに、美咲さんは、とどめの一言を放ってきちゃったんでした。

「怜さんは、必ず私が……幸せにします!」


 それを聞いた私は、母として、胸が熱くなりました。

 夫はここまで来て、やっと「幸せにするとかそういうのは、男が……」とかモゴモゴと言ってましたけど、美咲さんはそんなには全くひるんでない感じで。

 その時の美咲さんの目は、本気でキラキラしてて、私たち夫婦は、完全に押されちゃってました。


 結局、夫と二人で、

「どうか……怜を幸せにしていただけるよう、よろしくお願いします……」

 って、言わされちゃいましたね。


 私たちがそう言ったことで、美咲さんはパッと笑顔になって、

「ありがとうございます!」

 って、飛び上がるみたいによろこんでくれました。


 あの日の美咲さんの熱意、今でも忘れられません。

 怜は、あれからも、美咲さんに少し……いいえ、たぶん、かなり振り回されながら、それでも毎日、幸せなんだと思います。

 たまに家に帰って来ると、怜が照れながらも、すごくうれしそうな顔をしているんで、美咲さんによくしてもらっていることは、間違いないんでしょう。


 母として、まだ若い怜が、家を離れちゃったのは、少しさみしい気もします。

 だけど、美咲ちゃんみたいな強い子が、怜の隣にいてくれるなら、怜はきっと、ずっとカワイイままで、幸せでいられるのかな。


 だからこれからも、怜と美咲さんの二人が、ずっと仲良くやってくれることを、祈ってます。

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