カオスすぎる!日本史「出来事」ベスト3会議
遠藤 世羅須
第1話 舞台の幕開け
日本の歴史を司る神々の会議室。司会の「日本史」君が、重々しく口を開いた。
「えー、本日の議題は、我々の中での『インパクト・ベスト3』の選定だ。
異議はあるか?」
一同は顔を見合わせ、探るような目つきでお互いを見渡した。
すると、真っ先に手を挙げたのは、ボロボロの軍服を着ながらも圧倒的な
威圧感を放つ、「太平洋戦争」君だった。
「1位は俺だ。異論はないだろう。
この国の形を根底から変えちまったんだからな」
その重すぎる空気と、近代日本を物理的に更地にした圧倒的な実績に、
会場は一瞬で静まり返った。
「異議なし!」
「まあ、1位は妥当だよな……」
一同は震えながら頷き、1位はすんなりと決定した。
しかし、問題はここからだった。
2位の座を巡る仁義なき戦い
「よし、では2位だが――」 司会の日本史君が言いかけるや否や、
派手な甲冑をガシャガシャ鳴らして「関ヶ原」君が立ち上がった。
「2位は拙者だ! 日本を真っ二つに分けた天下分け目の決戦!
260年の平和を築いたのはこの拙者でござるよ!」
「甘いな、関ヶ原君」
それを遮ったのは、スマートな洋装に身を包んだ「明治維新」さんだった。
「侍の時代を終わらせ、近代国家を爆誕させた私こそが2位にふさわしい。
君はまだ、刀を振り回している時代に浸っているのかい?」
「なんだと!?」
「関ヶ原」君が刀に手をかけたその時、後ろから冷ややかな声が飛んだ。
「ちょっと待ちなさいよ」
腕組みをして現れたのは、泥にまみれた軍服姿の「戊辰戦争」君だった。
「明治維新さん、あんた華やかに語られてるけど、
実務(戦争)を請け負ったのは俺よ?
俺が体を張らなきゃ、あんたはただの『理念』で終わってたんだぜ?」
割り込む古株と海軍派
これに黙っていられなかったのが、歴史の教科書の最初の方に載っている
古株たちだ。
「おいおい、若造どもが……」 真っ赤な装束で現れたのは「大化の改新」君である。 「国家の形を最初に作ったのは誰だと思っている?
中大兄皇子たちとあんなに苦労した俺を差し置いて、2位だの3位だの
片腹痛いわ!」
「古いんだよ、おじいちゃん!」
突然、水浸しの制服で割り込んできたのは「日本海海戦」君だ。
「世界最強のバルチック艦隊を沈めた俺の爽快感!
あの瞬間、日本は世界に『俺、強い!』って証明したんだ。
私のおかげで日本という名前がバズッたんだぞ。
エンタメ性なら俺が3位以内だろ!」
収拾がつかないカオス状態
「いいや、俺だ!」「私よ!」 ここから会場は収拾がつかなくなった。
「応仁の乱」君:「誰が味方で誰が敵かわからないカオス度なら、
俺がナンバーワンだぞ!」(誰も聞いていない)
「元寇」さん:「神風とかいうチート疑惑かけられてるけど、防塁とか頑張った
私の努力も認めてよ!」
「バブル経済」君:「歴史というか、あの時の札束の舞い方こそトップ3でしょ! 踊ろうぜ!」
結末:司会の決断
「静かに! 静かにしろ!」 司会の日本史君が机をバシバシ叩く。
全員が息を呑んで見守る中、彼は諦めたように告げた。
「……もう、2位と3位は、『明日までにエゴサして、SNSでバズった順』にする!」
「「「「そんなのアリかよ!!」」」」
歴史上の出来事たちは、一斉にスマホを取り出し、「#日本史選抜総選挙」と
ハッシュタグを打ち込んで自撮りを投稿し始めるのだった。
(第2話に続く)
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