27歳でつかんだ栄光

🎍三杉 令

丸山希さんと勢藤優花さん

日本のスキージャンプ界に新たなスターが誕生しました。

男子の小林陵侑さん、女子の高梨沙羅さんが有名ですが、今回紹介するのは今シーズン大活躍の丸山希さんです。


長野県野沢温泉村出身。1998年6月2日生まれの27歳です。

小学校4年生の時にスキージャンプを始め、2017年に明治大学へ進学。

2018/19シーズンから本格的にワールドカップへ参戦しました。


当時20歳。素質はあるように見えましたが進化が著しかった女子ジャンプの世界。簡単には一流選手の仲間入りはできません。スキージャンプは時速90キロメートルの速度で台を滑り降り、空中を100メートル以上飛ぶという、素人目にはクレイジーな競技です。わずかにバランスを崩したり風にあおられたりするだけで、転倒して大きな事故につながります。


特に女子は筋肉や骨格が強くないため、転倒して大けがを負う選手が少なくありません。そして、不幸にもそれは丸山選手も襲ってしまいました。


2021年10月24日、札幌大倉山ジャンプ競技場で行われた全日本選手権ジャンプの女子ラージヒルで丸山希選手は転倒し、左膝前十字じん帯損傷、外側半月板損傷、大腿骨・腓骨(ひこつ)骨挫傷という重傷を負い長期離脱となってしまいました。2022年2月の北京冬季五輪ももちろん出場することはできませんでした。


当時23歳で、ようやくこれから選手として大きく成長を遂げるであろうと思われた矢先の悲劇でした。年齢的な事も鑑みて正直、彼女は復活はできても、Wカップランキング上位まで上達するのは難しいのではないかと私は思いました。


怪我が治って2023年に本格復帰してから、まずまずの成績を上げるようになりました。それでもだいたい定位置は10位から20位の間。体が少し立ち気味になる姿勢で距離は伸びません。


【驚異の2025年】


それが、私は知らなかったのですが2025年夏の大会から急成長したのです。2年ほど前からスロベニアの若き天才ニカ・プレブツが圧倒的な強さを見せてWカップの勝ち星をすごい勢いで重ねていたのですが、彼女と遜色がない飛距離を出すようになったようです。


そして2025年11月22日のワールドカップ初戦、リレハンメルの大会で私は信じられないものを見ました(テレビ中継ですが)。


1本目、133.5メートルの大ジャンプ!(プレブツは124メートル)

2本目も130.5メートルとこれまた圧倒的な飛距離。

合計得点は285.5ポイントで2位に25.8ポイントもの大差をつける圧倒的な勝利でした。私は目が点になりました。


「どうしちゃったの? 大化けしちゃったよ」


そして大怪我をしてから足掛け3年の彼女の努力を想い、涙が出てきました。


その後もここまでWカップ10戦を戦い、丸山5勝、プレブツ4勝と二人で大激戦を繰り広げています。今夜、6勝目を期待して祝いたいと思います!


頑張れ! 丸山希さん!





【勢藤優花さん】


もう一人紹介させてください。

今シーズン、丸山選手の活躍で目立ちませんが、勢藤優花選手(28)も必死に頑張っています。

1997年2月22日生まれ、北海道上川郡上川町出身。


高梨選手や伊藤有希選手の華々しい活躍の陰で、勢藤選手は10年以上も日本代表選手として頑張ってきました。でもWカップでなかなか上位に入れず、悔しい思いを随分としてきたと思います。


苦節10年ですよ。同年代のチームメイトが大活躍してるんですから、何度も心が折れそうになったと思います。普通の人なら耐えられないでしょう。


しかし、この12月頃からすごくジャンプが良くなってきました。6位前後に入るようなジャンプが出るようになってきています。


これまで、いつも着地後不満足そうな彼女の顔ばかり見てきましたが、最近会心のジャンプができて笑顔が見られるようになりました。こちらまでとても嬉しくて涙が出そうになりました。


今年なんとか表彰台に上がって欲しいと思います。長い間ずっと耐えて努力を重ねてきた人に温かい光があたらないかなって思います。


頑張れ、勢藤優花さん!



(2025.12.31)

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