寝取られたくてたまらない俺のところに寝取られの神が妹としてやってきたのだが、そのことにブチギレた幼馴染に寝取り返ししようとしてくるし寝取られなくて絶望しかなさすぎる件

くろねこどらごん

第1話

 寝取られが好きだ。

 そう心から言えるくらい俺、杉原学すぎはらまなぶは寝取られが好きだった。

 いや、好きなんてもんじゃない。

 好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きでたまらないのだ。


 きっと、俺という人間に刻まれた、魂の性癖だったのだろう。人生の初期に己の性癖を知ることが出来た俺は、きっとこの世の誰よりも幸運な男なのだろう……そう思っていた時期が、俺にもありました。


「学が寝取られる前に私が寝取る……!」


「いやあああああああああああああ!!! 犯されるうううううううううううう!!!」


 高校二年生になった現在。

 俺は寝取られるより先に、幼馴染である燐子にホテルに連れ込まれそうになっていた。



「学には最近、女の子の知り合いが増えすぎている。このままじゃ学を盗られる可能性がある。泥棒猫には渡さない。学は私のモノ。それを身体に刻み付ける」



「なんで!? どうしてこうなったの!? なんでホテルに行こうとするのぉっ!? 俺がなにしたってんだよぉっ!?」



 なにやら嫉妬と焦りに駆られて凶行に走ったようだが、その相手が俺とあってはたまったものではない。

 未来の間男さんのために清い身体でいなければならない俺にとって、燐子からの逆レ〇プは最悪の一言だ。

 このままでは俺が寝取らない未来が確定してしまうではないか。それだけは避けなければならない。


「おまわりさーん! 助けてぇー! 仕事してー! ヘルプミー!」


 恥も外聞もかなぐり捨て、騒ぎまくった結果、なんとかその日は燐子の魔の手から逃れることに一応成功するのだった。

 


   ♢♢♢



「はぁ……畜生。なんで俺は寝取られないんだ! 高校2年にもなって寝取られを体験出来ていないなんて……こんなの絶対おかしいよ!」


 そしてその日の夜。命からがら帰宅した俺は自室でラブコメ漫画の原稿を描きながら、己が運命について嘆いていた。



「こんなに俺は寝取られたくて仕方ないっていうのに……間男さんだって悲しむだろうが……」


 こんなに寝取られを心から愛し、寝取られに全てを捧げているにもかかわらず、だ。これを理不尽と言わずして、いったいなんと呼ぶのだろうか。思わずため息をついていると、


『お言葉ですが杉原様。寝取られないのは当然のことかと』


「なにっ!? 理由を知っているのかかがみん!」


『ええ。まぁ』


 俺の心からの嘆きに反応したのは、部屋に設置しているこちらの質問になんでも答えてくれる魔法の鏡、かがみん(勝手に命名)である。

 以前寝取られの神を探しに世界中を放浪したときに入手して以来、話し相手になってくれている友人(無機物だけど)は、コホンとひとつ咳払い(喉がどこにあるのか分からないが)をし、


『だって貴方、彼女いないじゃないですか。そんなんで寝取られるはずないですよね? 忌憚の無い意見って奴です』


「おまっ……それを言ったら、戦争だろうが……!」


 ストレートな意見をぶつけてくるかがみんに、俺は思わず憤る。正論は時に人を傷付けるんだぞ……!


『でも事実じゃないですか。現実を受け入れないと先に進むことは出来ませんよ。戦わないと、現実と』


「ぐっ、無機物には人の心が分からないのか……出来ないから困ってんだよ、畜生……」


 そう、生まれついての凡人である俺には、彼女なんていたことがない。

 超美少女の幼馴染がいたり、ハーフの美人お姉さんとかエセロリ編集さんみたいな知り合いこそ最近は増えたものの、彼女が出来る気配なんてサッパリなのだ。

 これを理不尽と言わずしてなんと言うのだろう。思わずガックリ来ていると、


『一応言っておきますが、貴方が望めば彼女はすぐ出来ますよ? まぁ寝取られる可能性は皆無で、生涯その人とイチャイチャ純愛することになる前提ではありますが……』


「んなもん却下だ却下。寝取られることなくイチャイチャだぁ? そんなことするくらいなら俺はこの場で舌をかみちぎって自決するわ」


 あり得ないことを言われ、俺は即座に否定する。

 寝取られのない純愛なんてカビの生えたピザのようなものだろう。

誰も食べたいとは思わないし、目にしたいとも思えない。この世の常識と言うやつである。


『ええ……それ本気で……うわ思ってるよこの人……こわ……』


 腐っても魔法の鏡というべきか、かがみんも俺が本心から言っていることをすぐに察したようだ。

 出来ればこんなこと口に出す前から察していて欲しいものだが、無機物にそこまで望むのは酷というものだろう。描きかけの原稿をよそに俺は椅子に背をもたれつつ上を向く。


「あーあ。誰でもいいから俺と付き合ってくれた後に速攻寝取られて絶望させてくれないかなぁ。それだけで俺はもう満足なんだけどなぁ」


 『無理ですよ。そんな都合のいい展開ないですって。ファンタジーでもあるまいし』


「うっさい。とにかく俺は寝取られることに飢えてるんだよ!」


ったく、イチイチツッコミいれやがって。

大体存在そのものがファンタジーみたいなやつに言われたくねーよ。


「はぁ……なんかやる気なくなったな。もういいや、今日は寝よ」


『大丈夫なんです? 原稿の締め切りは明後日だったと思いますが……』


「朝イチで描けば間に合うよ。6時頃起こしてくれ。今日はもう描く気になんねーわ」


『私は質問に答える鏡であって目覚まし時計ではないのですが……まったくもう……』


 なにやらぶつくさ言っているかがみんを放置して、俺はベッドにもぐりこむ。

 なんだかんだ律儀なやつなので起こしてくれるのは間違いないだろう。

 今はただ、この胸の奥に溜まった不満を眠ることによって目を背けたかった。


「はぁ……彼女がいなくても寝取られてくれるような都合のいい女の子が、俺のところに来て、くれない、かなぁ……」


 まどろみに落ちていく最中、ついそんなことを願ってしまったのは、それが俺の心からの願いだったのだと思う。

 こんな願い、決して叶うことがないと分かっているのに。ただ——


————うふふ、いいよぉ。大好きな君の願い、叶えてあ・げ・る♪


 意識が途切れる直前、誰かの声を聞いた気がした。



  ♢♢♢



『起きてください杉原様。朝ですよー6時ですよー』


「ん、んん……」


 朝。まだ日の光も弱く、寒さすら感じる時間に声をかけられ目を覚ます。

 寝ぼけまなこで壁にかけられている時計を見ると、確かに針は6時を指しているようだ。


「サンキューかがみん。なんだかんだ言ってもやっぱ起こしてくれたんだなぁ。やっぱ持つべき者は友達……」


「んん、むぅ……」


「だなって……え……?」


 お礼を言っている途中で、聞こえてきた声。

 それは明らかに女性のものだった。しかもなんかやたら近くで聞こえてきたような……というか、なんか布団がいつもより温かくて、しかも柔らかいような……って……。


「ふわあ……もう朝かぁ……」


「うわああああああああああああああああああ!!! だ、誰ええええええええええええええええええ!!??」


 俺は思わずベッドから飛び起きる。

 なんと、昨夜ひとりで寝たはずの俺のベッドに、女の子が潜り込んでいるではないか。


「あ、おはよーお兄ちゃん。朝から元気だねー」


「お兄ちゃん!? 俺が!? WHY!?」


 ど、どういうことだ。俺は一人っ子で、妹なんていなかったはずだぞ。

 しかもこんなめちゃくちゃ可愛くてピンクの髪をしているだなんて、俺の記憶には全くない。というか、見たことすらない。例え妹でなくても、こんな目立つ子がいたら覚えていないはずがないのだが……。


「そうだよ。忘れちゃった?」



 記憶にないピンク髪の女の子は、どこか心配そうな顔をしながら、俺に身体を寄せてくる。


 ふにょん


「……………………」


 するとまぁ当然というべきか。身体の一部が俺に接触するわけで。それがとても柔らかいわけで。


「う、うーん。そういえば、俺にも妹がいたような気が段々してきたような……」


「だよねだよね!」


 悲しい男の性というやつなのだろう。

 俺の脳は全力でこの子を妹と認識するべく稼働を開始し……。


『なーにアホなことを言ってるんですか貴方は』


「ハッ! か、かがみん! いたのかお前!」


『いやいるに決まってるでしょ鏡なんだから。いくら寝起きとはいえボケ過ぎですよ。そんなんだからそこの駄女神に丸め込まされそうになるんですって』


「うっ、それは……って、駄女神? もしかして、この子のことを知っているのかかがみん!」


 明らかにこの子の正体を知っていそうな言い方をするかがみんに思わず食いつく。


『ええ、まぁ』


「じゃあ教えてくれ。この子は一体誰なんだ!?」


『聞かれたからには魔法の鏡としてお答えしますが、そこにいるのは寝取られの神です。日頃から杉原様をラブコメの神に寝取られていることに興奮し、脳破壊をされ続けていたはいいものの、段々刺激が物足りなくなってきたため、更なる刺激を得ようと昨晩の杉原様の願いにかこつけて下界に降りてきたんです。妹を名乗ったのはより間近で寝取られを堪能しようと画策したからですね。ちなみに策も何もなく欲望のまま下界に来たので素寒貧でロクにお金も持ってません。今すぐ家から追い出すのをお勧めしますね』


「え」


「あーん、もうどうして全部言っちゃうのぉ。あと少しだったのにー!」

 

 かがみんから明かされた衝撃の真実に、俺は思わず固まってしまう。

 寝取られの神? この子が? え、物理的に存在出来るもんなの神って。

 そんな疑問がぐるぐると頭を駆け巡り、やがてゆっくり神へと視線を向ける。


「えっと、君が寝取られの神なの? ホントに?」


「はーい、そうでーっす♪ 鏡がネタバレしちゃったから白状するけど、そういうことだからよろしくね♪」


 いや、よろしくねと言われても。

 そもそもこっちはまだ半信半疑だし、こんな子が寝取られの神だとはとても思えな……。


「んほおおおおおおおおお!!! それにしてもこの部屋しゅっごおおおおい!! ラブコメの神の加護であふれてるのおおおおおおお!!! 私の杉原くんが現在進行形で寝取られているのを感じられてたまんないよおおおおおおおおおお!!! ほおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「うん、確かにコイツ寝取られの神だわ」


『分かっていただけたようでなによりです。すぐ追い出しましょうそうしましょう』


 かがみんの言葉には大いに同意だ。

 俺は寝取られが大好きだが、別に他人が寝取られで興奮する姿を見るのが好きというわけじゃない。まして相手が変態を超えた変態としか思えない残念な有り様を見せた後なら猶更だ。


「かがみんかがみん。これを捨てるならどこがいいのか教えてくれよ」


『そうですね。とりあえずアダルトショップの前で放置して本人が吸い寄せられるように中に入ったところで全力ダッシュをかますのがベストかと思われますが……』


「ちょ、ちょっと待ってよー! 私を捨てるなんてそんなのこうふ……じゃなくて、テンション上がるからもっとやって! 私よりラブコメの神を選んだことを選んだことをより実感出来て惨めになれるから! んほぉ! どう転んでも私勝ち組ぃ! あへぇぇぇ!!!」


「『なんだコイツ……』」


 かがみんと相談しているところに割って入ってきて勝手に興奮してる……こわ……。

 ここは普通説得に動こうとするもんじゃないの? やはり神という存在は人間とは思考回路そのものが違うのかもしれないな……。そんなことを考えていると、


「って、興奮してる場合じゃない! 待ってお兄ちゃん! 私を捨てちゃ駄目だよ! なんのために私が下界に来たと思ってるの?」


「なんのためって……寝取られてることに興奮して気持ちよくなるためじゃないの?」


「それも勿論あるけど……でもそうじゃないの。私は大好きなお兄ちゃんのために、寝取られるためにお兄ちゃんのところに来たんだよ!」


「…………はぁ? 寝取られるためぇ?」


「うん、そうだよお兄ちゃん!!!」


 なーに言ってんだこの駄女神。大体なにがお兄ちゃんだよ。

 寝取られに脳をやられたのか? こっちはさっきまでの醜態を見てるってのに、そんなことを言われても意味がさっぱり分からないんだが?


「あのね、お兄ちゃんは寝取られたがってたでしょ? だから私が大好きな杉原くんの妹になって、寝取られてあげようと思ったの。私はお兄ちゃんがラブコメの神に寝取れらているのを間近で感じて脳が破壊されて気持ちいい。お兄ちゃんは私を寝取れられて脳が破壊されて気持ちよくなれる。ね? お互いに得しかない、いい取引きだと思わない?」


「思わない? って言われてもなぁ。大体アンタとは初対面みたいなもんだし、そもそも彼女どころか妹設定じゃ寝取られもクソも……」


「でも、さっきまで一緒に寝てたじゃない?」


「!? た、確かに……!」


 言われてみれば、俺はこの寝取られの神と一晩同じ布団で寝ていたのだ。

 その子が他の男に奪われる。それは、立派な寝取れと言えるんじゃないのか?

 だって今も同じベッドの上で話してるわけだし。うん、そうだ。間違いない。妹だろうが一緒に寝てたなら、寝取れは成立するはずだ!


「そうか……そうだよ。なにも彼女とか恋人とか、そんな関係に拘る必要なんてなかったんだ……」


「分かってくれた? お兄ちゃん」


「ああ、ようく分かったよ。俺たちは一晩一緒に寝た仲だ。そんな子が間男さんと付き合ったら、俺は脳が破壊される! 寝取れたって思える! 間違いなくそれは寝取れだ!!!」


「うん、その通りだよお兄ちゃん! 寝取れの解釈なんて人それぞれでいいの! 呪〇でいう拡張術式みたいなものだよ! 要は解釈広げられればなんでもOK!」


「おお! やったー! 俺はついに寝取られるんだー!!! うれしー!」


『……うわあ。やっぱりこの人たち頭おかしいよ……』


 キャッキャッとはしゃぐ俺と寝取られの神。

 かがみんがなにか言ってた気もするが、そんなことはもはやどうでもいい。

 目の前が急速に開かれたような心地よさに、俺は有頂天になっていた。


「それで、寝取られの神様。早速で悪いんだが寝取られてもらっても……」


「待ってお兄ちゃん。その寝取られの神は不自然だよ。ここは下界だし、名前で呼ばなきゃでしょ? 私のことはイ〇ヤって呼んで……」


「ああ、寝取られの神だし、ねと子ってこれからは呼ぶことにするか。うん、いい名前だ!」


 危険なことを言おうとした神を遮り、俺は咄嗟に思い付いた名前で呼ぶ。

 流石にそこまで寄せたらクレームが来そうだからな。削除依頼を出されて垢BANされるのは望むところではない。


「ぶー。なぁお兄ちゃんがそういうなら我慢するしその名前でいいけど」


「よし。じゃあねと子、改めていつ寝取れてくれるのか相談を……」


『あのー、杉原様。ちょっといいですか?』


 ひとまず危険を回避して寝取れの話をしようとしたところで、かがみんから待ったがかかる。


「おい、なんだよかがみん。今いいとこなんだが」


『いえ、そのですね。実はつい先ほどまずい事態が起こりそうなことが分かりまして』


「はぁ? まずいことってなにが……」


 ガチャッ


「おはよう学。早速だけど今日は私とデー、ト……」


『そのー、燐子様が家に入ってくる可能性があると伝えようとしたんですけど……どうやら、遅かったようですね』


「おまっ!? なんでそれもっと早く言ってくれないの!?」


 手遅れなんてものじゃない。

 幼馴染である燐子の顔がみるみる青ざめていくが、俺も同じくらい青ざめていたことだろう。

 なにせ……。


「学。これは一体どういうことなの。私という幼馴染がいながら、なんで他の女を連れ込んでいるの」


「え、えーとその。これは海より深い事情があるというか、俺にも予想出来なかったファンタジーな出来事が起こった結果というか」


「言い訳はいい。とりあえず、私が学を寝取られたということがよく分かった。なら、寝取り返すだけ。今すぐホテルに行こう学。すぐに上書きしてあげる……!」


「ちょっ、待って! 言い訳くらいさせて! 立ち直るのが早すぎるだろぉっ!」


 他に目もくれず俺をベッドから引きずり下ろすと、そのままずるずると俺を引っ張りホテルに行こうとする燐子に俺はたまらず待ったをかける。


「なに? 言い訳を聞く気はないって言ったと思うけど?」


「違うんだって! その……この子とは寝たは寝たけど寝取られてもらうために寝たっていうか。そもそもこの子は寝取られの神で俺の妹で……」


「学。貴方が頭のおかしいことを言うのはいつものことだけど、もう少し時と場合を選んだ方がいい。私の神経を逆なでて激しく責められたいというなら望むところだけど、寝取られの神とか妹とかは流石に意味が分からない。もう少し頑張って。特にこれからベッドの上で」


「だから違うんだってばよ! ホラ、かがみんもねと子もなんか言ってくれよぉっ! このままじゃ俺が寝取られるんですけどぉっ!」


『いやー、悪いんですけど下手に口出ししてその人に目をつけられたくないんですよね。私も自分の命が惜しいので』


「ああ! お兄ちゃんが寝取られるぅっ! リアルNTRに興奮が止まらないのぉっ! んほおおおおおおおおお!!!」


 駄目だ。こいつらは使えない。

 なんならねと子は俺のことをネタに使おうとしているし、あまりにも救えなさすぎる。


「やめてぇ! お願い、助けてぇ! 誰か、誰かぁっ!」


 もはや俺に出来るのは暴漢に襲われる生娘の如く、ただ声を張り上げることのみだ。

 ほんのわずかな可能性であろうと、俺は救いを求めて助けを呼び——



「————なにをやっているんですか、貴方たちは」



 ——果たして、その声は確かに届いた。


「あ、し、師匠! 来てくれたんですか!?」


 金色の髪をなびかせて現れたのは、俺の寝取られの師匠であるリアさんだった。

 彼女は燐子と引きずれている俺を交互に見ると、小さくため息をつき、


「全く、いつものプレイですか。人の趣向にとやかく言うつもりはありませんが、そういうのはもっと静かにやるべきですよ。私が寝取られたときなんかはですね……」


「そういうのは後にしてもらえません! 内容にはすっごく興味ありますけど、もっと他に言うことがあるでしょ!?」


 サラッとスルーして自分語りに入ろうとした師匠に待ったをかける。

 なんでどいつも人の話に耳を傾けることなく自分の都合を優先しようとするのだろうか。

 もうちょっと譲歩したり助けてくれたりしても、罰は当たらないと思うんだが。


「他に、ですか。ふむ……」


「んほおおおおおおおおお!!! リアちゃんきたぁっ! 我が最推しにして寝取られるために生まれてきたような、寝取られの権化! マイフェイバリットNTRモンスターをこの目に見れて最高だよぅ! んほぉ! ここにきて良かったぁ! 寝取られ、最高!!!」


「とりあえず、あそこで不快な言語を発しているのは一体どこのどなたなんですか?」


「えーっと、あれはその……」


 無様なアへ顔をさらしている寝取られの神を目ざとく見つけ、指差す師匠に、俺は思わず言い淀む。


「あ、私のこと言ってる? 初めましてぇ! 私、寝取れの神ことねと子で、杉原くんの妹だよっ! 君たちの近くで寝取られをより堪能しようと思ってやってきたのぉ! よろしくね! おほぉっ!」


「……あの子。頭がおかしいんですか、杉原くん。すぐに家から追い出したほうがいいと思われますが」


「あははは……」


 師匠の言葉に苦笑いで誤魔化す事しか出来ない俺を、一体誰が責められるというのだろうか。確かに傍から聞いている限りでは、頭がおかしいとしか言いようがない。


「あんな子に学を寝取られただなんて……許せない。ブチ犯す。学の身体に、私のほうがいいんだってことを刻み付ける。やっぱり今すぐホテルに行く」


「だからやめてぇっ! まだ朝だよぉっ! 間男さんのために清い身体でいさせてよぉっ!」


『うわキモ』


「推しが、推しが寝取られるぅっ! しかもその光景を最推しにも見られてるなんて、さいっこう! 駄目ぇ、このシチュエーションだけでもう……んほおおおおおおおおお!!!」


「え、なんですかこの人。他人の家で寝取られに興奮しているだとか、本物の変態……?」


 もうしっちゃかめっちゃっかだ。


「ようやく寝取られることが出来ると思ったのに、なんでこんなことになるんだよーっ!」

 誰もかれもが好き勝手なことを言いまくるカオス極まりない空間の中で、俺はただ嘆くしか出来ないのであった……。






 ちなみに後日。


「はぁ、はぁお、お兄ちゃん。今日も寝取られてくれるの? ぜ、絶好調だねぇ。うひ、うひひひひ」


「学。あの子、怖い。追い出そう? 流石にあの子がいると寝取るのに集中出来ない」


 俺を間近で寝取られまくったことで完全に脳がやられた寝取られの神に燐子がビビるようになり、彼女の攻勢が少しだけ収まったことで少しだけ我が家の修羅場が収まるようになったのは、また別の話である。

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寝取られたくてたまらない俺のところに寝取られの神が妹としてやってきたのだが、そのことにブチギレた幼馴染に寝取り返ししようとしてくるし寝取られなくて絶望しかなさすぎる件 くろねこどらごん @dragon1250

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