U ☆ Cute!

@Fuji_Araya

1章 カワイイ共同生活

第1話 カワイイ星人上陸

 それは下校中のことだった。

 帰宅部である町川 与一まちかわ よいちは足元の小石を蹴り飛ばして運びながら、ぼうっと帰路を歩いていた。

 ふと強く蹴り上げた小石は、道の脇にある薮へ飛んでいった。そして与一は石が飛んでいった先に黒い影が動いたのを見た。

 その正体は黒猫だった。かなりの猫好きな彼は暇つぶしにちょうどいいと思い、猫を追いかけることにした。あわよくば撫でさせて貰えないかと下心を忍ばせて。

 険しい草むらを何とかかいくぐり、猫の尻を目でとらえながら追いかける。そんな与一を嘲笑うように猫はしっぽを揺らして先を進んでいく。だが、

 

「そんな所も可愛い!」

 

 と思えてしまうからこそ、猫と人間の立場は変わることがないのだろう。少なくとも与一はメロメロである。

 

 

 そうこうしているうちに与一は林の随分深いところまで来てしまった。

 

「こんな奥まで続いてんのか」

 

 与一が進むことで、人がいた跡が出来ていく。そんな草むらを進んで行った先にあったものは、目を疑うようなものだった。

 

「これ、た、卵か? デカすぎるだろ……」

 

 そう驚くのも無理はない。なんせ彼の胸くらいの高さで、ちょうど人が一人くらい入れそうなくらいの卵が目の前にあったのだ。

 

「てかキモっ!」

 

 その卵には血管のようなものが張り巡らされていた。その血管のあちこちで脈打ってるように動いていることも気持ち悪さを増長させる要因となっていた。

 

「中になんかいるのかこれ?」

 

 卵の表面を見るに、どこにも欠けたり穴の空いた箇所はなかったため、まだ孵化していないことは確実だった。

 与一はふと猫の方を見ると、猫は卵と与一を交互に見ては警戒するような顔をした。

 

「これを伝えたかったのかな?」

 

 与一は猫の気持ちに寄り添った。

 

「危ないしキモイから早く離れよう」

 

 与一は猫に呼びかけ、自分も卵の元から離れようとした時、急にピーンと強い耳鳴りが聞こえた。

 与一は反射的に卵の方へ振り返った。それが原因という証拠も確信もなかったが。

 

「そんなわけないよな」

 

 そう思い、帰ろうとした時、今度は卵からピキっという音が聞こえた。

  なにか生まれる。

 与一は背筋がゾクッとしたが、同時に目を離せなかった。警戒だけではない。何が出てくるのだろうという楽観的な好奇心も混じっていた。

 卵はピキピキという音とともに、上の方にヒビができてきた。そしてヒビが一周すると、ゆっくりと蓋のように上の部分が外れて、地面にぽとりと落ちた。

 

「何かでてくる!」

 

 与一は身構えた。 すると抜けた卵の天井から、ひょこっとそれは姿を現した。

 

「人?!」

 

 確かにそれは人間の顔だった。よく目立つのは大きくて丸く、青い光を反射して輝く瞳。それに小さな鼻と、薄めだか潤いのある唇、おまけにピンクのショートボブヘアーと、全てのパーツと位置が人間のそれだったのだ。

 それもものすごく端正な顔立ちだ。

 ただ、一つ決定的に違うのは、頭の上に猫のような耳が着いていることだ。

 与一はものすごく困惑し、頭が真っ白になったが、そこにたった一つあった、本能に似た感情を思わず口に出した。

 

「めっちゃくちゃ可愛い!!!」

 

 そう、その見た目は驚くほど与一の好みにどストライクだったのだ。

 それもそのはず。見れば見るほど彼の一番好きな、いわゆる最推しというべきアイドルの「ゆりち」こと白百合 千夏しらゆり ちかにそっくりだったからだ。

 与一は、目の前の美少女? がキモイ卵から出てきたこと含め、全て夢だと決めつけることにして、目の前の可愛すぎる存在を眺めることに全てのリソースを割いた。

 

 すると、卵の中の人かも分からない何かは、

 

「僕カワイイ!? ほんと?! うれしい!! きっと与一も気に入ると思ったんだー!」

 

 と与一を見て言った。

 与一はそれを聞いて一気に現実に引き戻された。

 

「ど、どうして俺の名前を?! ……君は誰?」

 

 そう聞いた。

 

「えーっと、これで『人間です!』って言ったら信じてくれる?」

 

「いやムリ」 

 

 当然のことだ。

 

「だよねー。もう隠せないから言うけど、ボクはね、カワイイ星人」

 

「か、カワイイ星人?!」

 

「うん」

 

 そう答えるカワイイ星人に、与一は訳が分からなくてパニックになりかけた。

 

「話も通じるし、ちゃんと成功だ! 与一ありがとう!」

 

 カワイイ星人は卵の中ではしゃいでいる。与一は今の状況に全くついてこれなかった。猫を追いかけたどり着いた林の中で、でかくてキモイ卵から顔だけ出した美少女? と話している。

 

「ちょっとまっててね」

 

 カワイイ星人がそういうと、卵の両端から縦にヒビが入り始めた。

 

「え?! 外出るの?! ふ、服は?!」

 

 そこかよと我ながら与一思ったが、そこも大事なことである。

 

「フク? あ、あの体に被るやつね!  ないよ!」

 

 どんどんヒビは伸びていく。与一は顔を手のひらで隠して、

 

「ちょ、ちょっとそれはまずいよ!!」

 

 と止めようとするが、カワイイ星人は首を傾げている。

 与一は困惑しながらも超タイプの美少女? のあられもない姿が見れるとワクワクを募らせ、指の間からこっそり目をのぞかせた。

 卵が割れて、殻の手前側が前に倒れ、カワイイ星人の白く透き通った素肌が目に飛び込んできて、与一は興奮のあまり手で隠すことすらせずに目を見開いた。

 

 だか、控えめな胸の下、カワイイ星人の股下に目をやると、そこには男なら誰しもが見慣れたものが付いていたのだった。

 

「お、男じゃねーかよぉーーーー!!!!!」

 

 与一、ここに来て今日一番のショックと驚きだった。

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