ファミリートリップ〜山本家の事情〜

満月 花

第1話 プロローグ


脈動する。

扉の表面に浮かび上がった、封印と呪がシンクロするように鈍い音を響かせながら伸縮を繰り返している。

二つの月に照らされた彼らが魔法陣の上に跪いて祈りを捧げている。


この古びた建物は世界を守る三神殿の一つ。

神話の中だけの存在だと、そう信じられてきたはずだった。


しかし、それは真実。


この地に眠るものが

今、解き放たれようとしている。


呪は封印された扉全体に膨れ上がっている。

幾重にも絡められた呪文がその封印を破らんと血の色に染まっていた。


「美しい……」

男がポツリと呟いた。

祈りが蒼白い光となり帯となって、呪と光が輪舞するように重なり合う。

振動音がこの奥した部屋を揺さぶるがごとく呼応していた。


「……さあ、時は来た」


祈りを捧げる彼らの声がさらに強くなる。


月の光がより強く彼らを照らす。

男は、月の女神さえ味方していると信じて疑わなかった。


しかし、思わぬ事態が彼らを襲った。


建物が揺れた。

そして下から突き上げるような衝撃。

嫌な音を立てて、バラバラと天井が壁が剥がれ落ちていく。


「く、崩れる!」


祈りを止め、部屋を逃げ出そうとする者達。

我先にと出口に押し寄せる。

男が両手を広げ何とか収めようとするが恐怖に理性を奪われた者達には

無意味だった。


「だ、だめだ、今儀式を止めてしまっては!」


ガラガラと建物が崩れていく。その場に悲鳴が響き渡った。


「うわあぁぁ……」


凄まじい音と共に眩いばかりの閃光が建物を包んだ。

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