5話 3戦目

3戦目は、アーロン・ベック、イーロン・ベック兄弟になった。

兄アーロン15歳、弟イーロン13歳だ。

この兄弟は、既に単独でも一緒にも何勝かしているらしい。

今回も過去の放送は見ることを許されなかった。

父からアーロンは剣士、イーロンは斥候の役割をしていることだけは聞いている。

僕は少ない情報を元に戦略を組み立てるのであった。



・・・・・ 防衛戦当日 ・・・・・



「さぁ始まりました。子供防衛戦。今回も実況は私、フルイチ。解説はトンボさんが担当します。

ジン君の3回目の防衛が始まります。対するは、アーロン・ベック君15歳、イーロン・ベック君13歳だ。アーロン・ベック君、イーロン・ベック君共に単独で1勝、兄弟で力を合わせて2勝しており、子供防衛戦でトップの成績を挙げています。

ジン君の1戦はベック兄弟からの指名試合とのことでしたが、トンボさんどのようにご覧になりますか。」


「そうですねぇ、フルイチさん。ベック兄弟は、2人合わせて5勝しており、子供防衛戦の中で1っ歩抜け出しています。

攻め手が2人になることで10ポイントが1人6ポイントとなります。

イーロン君の危機察知能力とアーロン君の剣技が上手に組み合わされており、熟練のパートナーの風格を感じさせる2人であれば一人当たりのポイント数が減るデメリットより連携できるメリットのほうが大きいでしょう。

ジン君としてはこのタッグをどのように崩していくのかが課題になるのではないでしょうか。」


「対するジン君は初戦を1部屋目で終わらせており、まだまだ底が見えていない怖さがありますよね。」


「そうですねぇ、フルイチさん。初戦が人の虚をついたあざやかな勝ちでしたからねぇ。

ただまだ2戦目。既にベテランの風格を漂わせているベック兄弟に対してどのように戦っていくのか、大注目ですね。」




・・・ ジン視点 ・・・



2回目の防衛戦が始まった。

今回は2人が相手だ。僕ももう一人連れてきてもよい。と言われたが、当てもないので一人で参戦している。

もう一人は武力がある人がいいんだが、僕は文系の友達しかいないんだよ・・・

小さい弟や妹を連れてきてもねぇ・・・

弟は小さい木刀を振り回してて先生曰く僕より筋が良いらしいから将来は当てにできるかもしれないけど5歳じゃ無理だし。


そんなことを考えていると外から「アーロン・ベック参る。」「イーロン・ベック参る」と声が聞こえてきた。


モニターには、細身の男の子とがっしりした男の子が映っている。

細身のほうがイーロン君かな?


襖を開けたのはがっしりした男の子。あれ?斥候のイーロン君が先に入ると思っていたのに。

そう思っているとがっしりした男の子(がっしり君)が先に部屋を調べている。

がっしり君が斥候のイーロン君かな?棒を使って罠を調べているしそうなんだろうな。

そういや細身の男の子は木刀持ってるな。


イーロン君が襖を開けたときに前回と同じで絡繰り武者がお出迎えしている。

イーロン君は前回の防衛線を確認しているらしく、棒で畳を突きながら進んでいっている。イーロン君が少し進んだあたりで絡繰り武者が突進し始めた。


アーロン君が前に出て絡繰り武者に対応するようだ。

絡繰り武者がアーロン君へ近づいたとき突然絡繰り武者が落とし穴に落ちた。


「あははは、間抜けな仕掛けだな。勝手に罠にかかってら。」


アーロン君が絡繰り武者が落ちた場所を見ながら笑う。


「兄上。上!」


イーロン君からの鋭い指摘が入り、とっさに木刀を上に振り上げると、金盥を弾き飛ばす。

それと同時に落とし穴に落ちたはずの絡繰り武者が穴から飛び出してきてアーロン君にぶつかった。


「2ポイント獲得ぅ」


実況席から叫び声が聞こえてくる。

やっと2ポイントか連携が良いとなかなか引っかかってくれないな。


初めの部屋で2ポイント落としたベック兄弟は警戒しながら部屋の奥までたどり着くのであった。


「兄上。前回の試合ではこの襖を開けた途端に仕掛けが襲ってきていました。

私でも襖の先はわかりませんので気を付けて開けてください。」


「うむ。イーロンは少し下がっておれ。」


アーロンは慎重に襖を開けた。


パカッ


イーロンが待機していた場所の地面がなくなる。

イーロンはとっさに縁につかまったが、体の大部分が落ちてしまった。


「2ポイント獲得ぅ」


実況の声が聞こえてくる。


「イーロン!」


とっさに振り向いたアーロンの後ろから木の槌が振り子のように迫ってくる。

アーロンは咄嗟に避けたが、落とし穴から出ようとしたイーロンは、槌にあたり落とし穴に落ちてしまった。


「2ポイント+1ポイント獲得ぅ。」


イーロン君はこれで5ポイント失い、後がなくなったな。

次の部屋は、惜しい場面もあったがポイントはとれずに通り抜けられてしまった。



・・・ 2階へ繋がる階段 ・・・



ベック兄弟は、罠に気を付けながら順調に進んでいる。


だが、イーロン君が階段を念入りに調べている。

それはもう念入りに調べている。


制限時間あるんだけどな・・・


ここまでの所要時間は30分ほど。まだ30分あるとはいえ、階段と1部屋あるんだから早く来いよ。


何やら兄弟で話しているが、アーロン君がちょっとイライラしているようだ。

あっ 話し合いが終わったかな。

ポイントに余裕のあるアーロン君が先に行くみたいだな。


アーロン君がだだだだだっと登ろうとしている。

半分まで登ったところで仕掛けが動き階段が滑り台に変身する。

勢いをつけていたアーロン君。対応できずに滑り落ちてしまった。



「2ポイント獲得ぅ」


アーロン君も残り2ポイントになったな。


アーロン君が滑り落ちた階段は元に戻っている。

今度はイーロン君が縄を階段の上にかけ、階段が滑り台になってもいいように工夫して登ってくる。

階段の中腹まで来たとき、アーロン君の時同様に滑り台になったが、縄を持っているために滑り落ちることはない。

でも階段の上から矢が降ってきたのは避けきれず、イーロン君は敗退するのであった。


「イーロン君。ここで敗退。

さぁ残されたアーロン君も残り1ポイントだぁ。この階段をどうやって攻略するのかぁ。」


外から実況している声が聞こえる。

さてアーロン君はこの階段をどうやって乗り越えてくるのかな。


おぉ、アーロン君。イーロン君の残した縄をよじ登り、矢も木刀で防いで登ってくる。

やるなぁ、アーロン君。


さて僕が最後の部屋でお相手をしようかね。


僕が迎撃セットを持って降りて行っている間に歓声と悲鳴が聞こえてきた。


「アーロン君、力尽きてしまったぁ。」


アーロン君は、縄を登り切れずに力尽きたらしい・・・

僕のやる気を返せぇ~



・・・ 実況席 ・・・



「アーロン君。実に惜しかったですねぇ。

ジン君の今回の勝因はどのようなところにあったのでしょう。トンボさん。」


「そうですねぇ、フルイチさん。ジン君は2人の攻城者と戦うのは初なので2人の協力を出来ないようにすることに主眼を置いていたように見えます。

具体的には1階で時間を使わせて2階に上がったときに考える時間がなくなるように罠の配分を考えていたのではないでしょうか。」


「そうしますと、2階へ上がれさえすればベック兄弟にも勝ち目はあったということですか?」


「階段を攻略しようとしているときにジン君が2階の広間に降りてこようとしていました。

そのことを考えると、1階に罠が集中しており、2階は数個の罠と城主で対抗する作戦だったのではないでしょうか。」


「では階段の途中まで攻略できたベック兄弟はあと一息と言ったところだったということですねぇ。いやぁ~ 惜しかったですねぇ。トンボさん。」


「ベック兄弟も惜しかったですが、ジン君の策略が見事にはまった防衛戦でした。

まだ2回の防衛ですが、お父さんの様な名誉城主になる。そんなワクワク感を与えてくれる防衛戦でした。」


「そうですねぇ。フルイチさん。本日はジン君が見事防衛を果たしました。

では次回もお楽しみに~」


「「さようなら」」

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