受けて立つ

pierrot

1話 伝説の城主

ガタン ドタドタ

部屋の壁が崩れ侵入者が下敷きになる。


「決まったぁ~。これで100回連続防衛、新記録誕生です。」


実況の人の声がテレビから響き渡る。


画面には屋敷の主こと僕の父、ケント・オニキスが屋敷の奥で座っているのが映されている。

そこへレポーターが駆け寄りインタビューをしているのを僕は尊敬のまなざしで見つめていた。


「100回連続防衛。おめでとうございます!今のお気持ちを聞かせてください。」


「そうですね。1回、1回の積み重ねで100回防衛できたということは誇りに思います。」



・・・


「最後に、これで名誉城主の資格をお取りになり、通常の防衛戦ではなく、イベント戦のみの出場となってしまいます。名誉城主には次代の城主を指名する権利があるのですがどなたを指名するかは考えていらっしゃいますか?」


「そうですね。息子のジンを考えています。まだ若いし、甘いところもありますが城主として立派にやれるでしょう。」


・・・


なんだって。僕が次代の城主?いやいやいや。僕まだ10歳だよ。デビュー前だよ。親ばかにもほどがあるよ。

驚いている間にインタビューが終った。

観客席の僕に向かって男の人が歩いてくるのが見える。


僕は事務所っぽいところへ連れられてきた。

真ん中には会議用テーブルがあり椅子が片方に2つ、計4つ置かれている。

男の人に椅子を引かれたので座ると、男の人は奥の部屋から壮年の男と父を呼んできた。


3人が席に着くと壮年の男が話し始めた。


「初めましてジン君。国対責任者のジャックと言います。」


「防衛戦担当者のロイドです。ケント殿から話のありましたジン殿が城主になることについてジン殿の意向を聞きたいと思い、この場を用意させていただきました。・・・」


国対は正式名称「国境を決める対抗戦」といい、この大陸を2分する大国であるヨーテル公国とミデコ帝国の間で行われる国境線の変動を賭けた争いである。

この2国は大昔に大陸の覇者を賭け、大戦を起こした。どちらから仕掛けたのかは記録に残っていないが、それはもう大勢が亡くなる悲惨な戦いだったそうだ。

数年間ほど争っていたが決着がつかず、両国ともに疲弊していった。

その争いの終盤に戦地の南にある魔の森と呼ばれる大森林から妖魔と呼ばれる亜人や大型の獣達が溢れ出したらしい。


亜人や獣は両軍の奮闘により撃退できたようだが、両国ともに軍の被害が大きく両国ともに戦争を続けることが出来なくなってしまったようだ。

また、北にある小国群がちょっかいをかけてきて、両国の北側の領地が荒らされる被害も出始めていたらしい。


そんな時、公国の王様が帝国の皇帝にある提案を行った。

それが、国境を決める対抗戦 略して国対である。


数十種類の競技を用意し、その勝敗によって国境線を動かすというものである。

1勝に対して1m動かすことで決着したため、国対が始まってから今まで殆ど国境線は動いていない。

まぁ、国境は、南は大森林、北は小国群、両国間は、草原で区切られており、数十キロはあるので数キロうごいても影響は少ないのだが・・・


余談ではあるが僕の父であるケント・オニキスは、国境線一帯の南側を領地としている辺境伯でもある。

辺境南側には別の辺境伯が魔の森の大部分を防衛しているが、魔の森の北側は、うちの領地と接している。

父も領兵を使って魔の森の亜人や獣を対峙しているが、それでも数十年に1回くらいの頻度で亜人達が溢れて来ることがあるらしい。

僕はまだ経験したことはないが、近いところでは父が成人したてくらいの頃にあったらしい。



国対は、いろいろな競技が毎月行われており、それぞれに賭けも行われている。いわゆる官営のギャンブルだ。

始まった当初は、戦争直後ということもありギスギスしていたようだが、今となってはお祭り騒ぎとなっている。

その協議の中で特に人気があるのが100人対100人の模擬戦、屋敷への侵入を防ぐ防衛戦の2つだ。

このうち屋敷への侵入を防ぐ防衛戦が僕の父 ケント・オニキスが冒頭でおこなっていた競技である。


防戦とはある屋敷を選択し、防衛者(城主)が罠や防衛戦力を配置する。侵入者は罠などを回避しながら城主のもとへたどり着き、城主を撃破したら侵入者の勝ち、侵入者を撃退したら城主の勝ちとなる。

始まった当初は、本当に殺し合いになることが多かったそうだが、競技者が減ってしまうのでルールが決められ、ポイント制になった。

侵入者は20ポイント初めに持っており、罠にかかったり防衛戦力にやられたりするとポイントが減る、0ポイントになった時点で侵入者の負けとなる。

なお、罠は非殺傷、防衛戦力は痛くないペイント矢や刀で侵入者に切りつけると侵入者のポイントが減る。

罠や防衛戦力、侵入者の数は、ランクによって最大数が決められており、ランク1で罠30個、防衛戦力10人まで、父の様に上級者になると罠と防衛戦力の合わせて200となる。

ちなみに侵入者の数はランク1で1~2名、上級者では30名にもなる。

また、ランクによって使える罠にも決まりがあり、上級者へなるほどえげつない罠を使うことができるようになる。

また、侵入者の武器や罠については得意/不得意があるため、それぞれが許される範囲の中で用意してもよく、国対担当者の許可を経て使うことができるようになっている。


そんな国の重大事業に僕が関わっていいの?僕も将来的には父の様に立派な城主になりたいと思っていたけどまだ10歳だよ。


僕の思いを知ってか知らずかロイドさんは淡々と城主について説明するのであった。

ロイドさんの説明によると父がしているような本格的な防衛戦ではなく、一番小さな屋敷を使った子供防衛戦であるという。

子供防衛戦?って思ったが、父の100回防衛を記念して子供防衛戦を100回開催することになったんだそうだ。

子供防衛戦は、城主、侵入者共に10歳~17歳までの未成年とし、通常の防衛戦よりもさらに安全に配慮して行うイベント競技らしい。

本当は15歳以上にしたかったようだが、父の意向を考慮して10歳以降となったようだ。


本来100防衛で名誉城主となるが、子供防衛戦は10防衛で名誉子供城主となるようだ。さらに10敗で城主引退となるところが3敗でなるらしい。

城主引退となった場合、次のシーズンが始まるまでは防衛戦に出られなくなるだけのようだ。


僕は、父の思いを受け、防衛戦へ出場することにした。

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