狐ノ眠〜夜狐家〜

りんたそ

第1話『迷い込む』

ープルルルル。


………


ープルルルル。


着信音で目が覚める。今日は土曜日。

会社はない。友達からかと思い重たい瞼を擦りながら画面に視線を落とす。


…部長だ。今日は俺は休みのはずだが…。


部長『もしもし。清水くんかね?』


清水『はい。そうですけど…』


部長『おぉ、良かった。頼みがあってな。休みの日だが、君にこの前預けた商品。あれを大塚さんに届けて欲しくてね。』


清水『え…僕有給なんですけど… はぁ、まぁ、いいですけど…部長が行けばいいのでは?』


部長『私は大事な商談があるのだよ!とにかく、頼んだよ。』


ーガチャ。


通話をガチャ切りされる。このまま行かなければ、月曜に行った時にグチグチ言われるやつだな…はぁ、めんどくさい、行くか。


重たい体を起こし、着替えては車のキーを持ち、外に出る。そういえば、この辺の住人の名前のネームプレート、遊び心強いよな…大学生が住んでいるらしいが…うーん。


エレベーターに乗り込み、1階を目指す。


パチ…ッパチパチ…ッ

エレベーターの電灯が点滅する。なんだか、ホラーゲームみたいだ…などと考えながらエレベーターは1階に到着する。


ホラゲーではこれが開くと異世界だったりするが、特にそんなことはなく。普通に1階に着けば、外に出て車に乗りカーナビで大塚様宅を指定しては車を走らせる。


ーピポン。左方向です。

ーピポン。正面トンネルを直進です。


ーピポン。ピポン。ぴぴ…びびびびびび

カーナビが変な音を鳴らす。…電池切れか?


びびびびびび…びび、び、もも、目的地…目的地…しし、周辺です。…目的地、周辺です。お疲れ様でした。


車が動かなくなる。…あれ?いつの間に、こんな森の中に…?車もカーナビも動かない。スマホは圏外だ。…目の前に、古い建物が見える。和風な家だ。かなり大きい。


ー夜狐家(やぎつねけ)。


そう、標識には書いてある。


ここの家の人に、街への戻り方と、保険会社に連絡させてもらって車を運んでもらおう。


ピンポンはない。、ノックしても応答はない。というか…鍵が空きっぱなしだ。入口まで入って、声をかけてみよう…。


そして、何も知らない僕はその館へと、足を踏み入れてしまうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

狐ノ眠〜夜狐家〜 りんたそ @rin_youtube

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ