第2話 酒
村長が徳利を持ち上げた。
「先生。さあ、どうぞ」
私のコップに並々と日本酒が注がれた。
「田舎酒で・・東京の方のお口に合うかどうか・・」
私はコップに口を付けた。甘い香りと甘い味が同時に口の中に広がった。一口飲むと、陶然とした酔いが身体中に広まった。頭の芯がしびれていくようだ。私は言った。
「おいしい酒ですね」
村長が満足そうに頷いた。焚火が村長の顔にオレンジの陰影を作っている。陰影の中で村長の口が動いた。
「棺桶祭りは如何ですかな?」
私は女たちの踊りを見つめながら答えた。
「素晴らしい祭りですね。私が民俗学の調査にこの村を訪れたからといって、わざわざ棺桶祭りを開いていただいて・・本当に恐縮です」
私が頭を下げると、村長が笑った。
「いえいえ、こんな田舎の古い祭りが学者の先生のお役に立てるんでしたら、こちらこそありがたいことです」
私は民俗学者だ。山間の僻地に残っている古い伝承を一人で調査に来て・・今日、偶然にこの集落にやってきた。そして、棺桶祭りのことを聞いたのだ。私が初めて聞く祭りだった。
すると、村の人たちが好意で、棺桶祭りを私のために開催してくれたのだった。
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