ハーデンベルギアの亡き骸

月見つむぎ

ハーデンベルギアの亡き骸

 誰もいない停留所でただ一人、迎えが来るのを待っていた。


 置き去りにされた子供のように縮こまり俯いていた。時間だけが過ぎていき、待っている理由さえ忘れてしまった。


 ——もう来ないのかもしれない。そっと目を閉じ諦めようとする。一人でも歩けるのなら、そろそろ待つのをやめよう。


 思いとは裏腹に鉛のような体。まるで待っていた時間の分だけ、動き出すのに時間がかかる呪いにかけられたかのよう。それとも枯れかけた心のどこかに、まだ希望を隠し持っているのだろうか。


 郵便受けに届く手紙を嬉しそうに待ってみても、それらは遺された置き手紙。もうここにはいない。だから待っても来ない。呪文のように自分に言い聞かせる。


 もうすぐ朝が来る。

 その時はきっとハーデンベルギアの亡き骸を胸に抱いて、一人きりで歩き出しているのだろう。

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ハーデンベルギアの亡き骸 月見つむぎ @tsukimi_tsumugi

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