吸血鬼の朝は早い
きのはん
第1話 吸血鬼
雨の降る晩となりました。
そう、知る人ぞ知る、されどその知る人も時の流れと共に少なくなったと思われる旧友の
ですがその日、今日なのですが、お天気は、
ですから私はお電話でタクシーをお願いして家から離れた大きな駅まで向かい、その場で買った乗車券と特急券を改札に通し懐に納めて新幹線に乗り、降りた土地の乗り場でまたタクシーの客となり、友人の家まで着けて貰う事に致しました。雨は、あまり好きではないのです。移動の過程を味わえる気分にはなりません。新幹線の中でも、私は売店で買った薄いサンドイッチを少しばかり口に入れただけで、雲に覆われた暗い空と降る雨で景色や駅弁を楽しむような行程にはなりませんでした。
とはいえ、向かう行程から予想していた楽しみが消えたとしても、その道すがら私の心は思いに満ちていたのです。何せ
これに関しては、是非顔を見てお互いに膝突き合わせて、いえ、膝突き合わせて、とまでは申しませんが、直接にお会いして聞いてみたい事柄の一つでもあります。
そのようにお話ししようと考えておいた事ほど、いざ会って見ると別れ際になるまで聞く事を忘れてしまう、というのも常ではありますが。
思い出す限り、会ってお話しする事は
「着きましたよ。住所だと、この辺りで宜しいですかね。それとも、この坂道をもう少し入りますか」
タクシーの運転手さんに掛けて頂いた声で、私は心の中から目の前に映るものへと、意識を向け直しました。
タクシーのフロントガラス越しには、左右に門柱だけが立ち、引き扉や仕切りのない坂道への入り口が雨の中、ライトの光りに照らされておりました。
ええ、ここ先にあるのが長年の友人である
「ありがとう。ここまでで結構ですよ」
と運転手さんにお礼を述べて運賃をお支払いすると、開いた車の扉から傘を突き出すようにしながら地面に足を着け、傘を開いてから暗い足元にも怪我の無いようにと持って来た懐中電灯で坂になっている門から先の地面を照らしてみてから走り去っていくタクシーを改めて見送ると、右側の方の門柱に近付いて古びたインターフォンのボタンを押し込んで、
「こんばんは。
と門柱に語りかけるようにまず小さめの声で伝え、
「こんばんは。
とまで再び声にした所で、
「はい、こんばんは。そのまま入ってくださいよ」
と
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