魔導士ルート
第1話 無自覚ハーレム
クルニア歴1036年3月15日
『貴女は不幸にも亡くなりました。
それを私が拾い上げ、構成しました。スキルをつけて。
貴女に与えられたスキルは"記憶"。
どんなことでも詳細に覚える事ができます。
この世界には、貴女と同じ境遇の方が6人います。
それでは、良き人生を』
◇◆◇◆◇◆
「あうぅ……」
激しい頭痛と聞こえた声に思わずうずくまる。
(私、転生してたの……?それにあの声……)
衝撃の事実。
でも、それが本当なら、もう少しいい境遇がよかった。
私はマール・クリストフ。
……いじめられっ子の根暗だ。
昔はそうじゃなかった。
自分で言うのは恥ずかしいけど、活発な美少女だった。
木に登ったり、泥だらけで走り回ったり、友達と叫びながら遊んだり。
けれど――ある日を境に音を立てて崩れた。
それは、たまたま聞こえてしまったみんなの言葉。
「マールってさ、なんか……うざいよね」
「顔ばっかり可愛くて、性格ぶってるし」
「どうせ男に媚びてんでしょ。気持ち悪い」
それから私は人の目が怖くなった。
接するのが怖くなった。
髪を伸ばし顔を隠して、自分の世界に籠ることにした。
家から出ずに、たまたまあった魔導書を読み込んだ。
それだけが友達だった。
両親は心配してくれたけど、それでも外は怖かった。
また、あんな風に言われたら……。
そうしたら両親がグレイ=ナーク魔導学院を勧めてくれた。
アルマンドラ大陸の中でも魔導が発達しているタングリング帝国。
その最高峰の学院を。
ここから離れられるならそれもいいかと、自分を無理矢理納得させて通うことにした。
◇◆◇◆◇◆
痛みに思わず昔の事を思い出してしまった。
ついでに、本当についでに、漫画家になりたかった前世のことも。
……あれ?
なんか周りが騒がしい。
うずくまりながらも、顔を上げて見る。
私の周りに、5人の男性が心配そうに囲っていた。
「ねぇマールちゃん!大丈夫なのぉ!?」
学院生徒会・書記、レイノ・フィン。
人懐っこい笑みの子犬系男子。
「あまり周りを騒がせる物ではないですよ」
学院生徒会・会計、アレン・ダンルージ。
ニヒルでクールなインテリ男子。
「ハッ!俺が付いてねぇと何も出来ねぇな!」
学院生徒会・庶務、リンク・ツヴェイト。
不良っぽい俺様男子。
「保健室行くか!?運んでやるぞ!」
学院生徒会・副会長、クライド・ハミルトン。
一直線な熱血漢。
「貴女に何かあれば、胸がざわつくのです。ご自愛くださいね」
学院生徒会・会長にしてタングリング帝国次期皇帝継承権第ニ位、ターウェル・ロア・タングリング。
学院女子の憧れたちが、そこにいた。
(え、え、え……!?)
頭痛より混乱が勝る。
なんで、どうして?
こんなに集まってるの?
「嘘!ターウェル様!?」「レイノくんかわいい~!!」「なんでマールのところにいるの……?」
(あぅぅ……)
生徒会メンバーの優しい視線と、周りからの厳しい視線が痛い。
そんな私の様子を見て、リンクが舌打ち混じりに声を荒げる。
「ほら!ボーッとしてんじゃねー!立てるか?」
私が返事に詰まっていると、クライドが勢いよくしゃがみ込み、私を抱え上げようとした。
「無理しないで!ほら、俺に捕まれ!」
「クライド、落ち着いてください。マールさんを怖がらせては逆効果です」
アレンが制止するけれど、クライドは手を引っ込めず、むしろ私の手を握ってきた。
なにこれ、なにこれ、なにこれ。
もうわかんない。
なんで私にこんなに構うの?
もういたたまれなくなり、キャパシティを超えてしまった頭から湯気が出そう。
「あ、あの……」
「どうされました?」「どうしたのぉ?」
ターウェルさんとレイノくんが同時に声をかけてくる。
顔がいい。
いや、そうじゃない。
あ、ダメ。
もう無理。
「ふ……」
「ふ……?」
「ふえぇぇぇえーーーーー!」
奇声を上げて思いっきり立ち上がり、その場から逃げてしまった。
「あ……」
なんか悲しそうな声も聞こえてきたけど、今の私には気に掛ける余裕もない。
今までで、それこそ前世も含めて、出せる限りの力でダッシュしていた。
◇◆◇◆◇◆
「はぁはぁはぁはぁ……」
学院裏、人目のつかないところ。
なんとか逃げ切って、呼吸を落ち着ける。
「はふぅ……」
ようやく気持ちも落ち着いたみたい。
転生だとか、生徒会とか、色々考えることができちゃった。
(それにしても……)
昔から物覚えは早い方だったけど、スキルだったんだぁ……。
ちょっとショック。
でも、それならそれで良かったのかな。
取り柄がない私でも、少しはできることがあった。
……そして生徒会。
「なんでみんな私にかまってくれるんだろう」
ただ勉強ができるだけ。魔導が人より少しできるだけ。
根暗で、まともに話せない私に興味があるなんて思えない。
……もしかして。
私、邪魔に思われてる!?
そうだよね!
だって私に構うの意味分かんないもん!
ああいう風にかこんで、周りの注目を集めさせて、周りを嫉妬させて!
自主退学を目論んでるのか!
うぅ……。爽やかなのに思ったより陰湿だ。
でも舌打ちとかされたし、これは結構有力説なんじゃないかな。
ターウェルさんが言ってた胸がざわつくって、イライラしてたまんないってことだよね。
うぅ、私はここでも居場所がないのか
……いや、それもそうか。
あの場所が嫌で逃げてきただけだから、居場所がないのも当たり前か。
はぁ……。
大人しく生きよう。
目をつけられないように……。
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