究極の2択とか言いながら、どっちを選んでも救われないやつ
イミハ
第1話 助ける?見捨てる?――究極の2択とか言われた時点で、もう詰んでいる
正直に言うと、
こういう状況に出くわす人生は想定していなかった。
目の前に、
自分の頭に拳銃を突きつけた人間がいる。
映画みたいな話だけど、
映画と違ってBGMも字幕もないし、
「このあとどうなるか」は誰も教えてくれない。
ただ一つだけ、条件が提示された。
「あなたが100万円を渡せば、僕は助かります」
意味が分からない。
助かるって、何から?
誰から?
それとも、自分自身から?
そんな疑問を整理する暇もなく、
横でヘタレくんが声を上げた。
「え、ちょ、待って!100万円で助かるなら、助ければいいじゃん!」
ヘタレくんは、いかにも“善意”という顔をしている。
こういう時に一番最初に動くタイプだ。
一方で、コウサツくんは腕を組んだまま、ため息をついた。
「あのさ。
その100万円、どこから出てくるんだよ」
「え?」
「今、持ってるのか?100万円」
ヘタレくんは黙った。
当然だ。普通、持っていない。
「なあ、この問題さ」
コウサツくんは続ける。
「“助けるか見捨てるか”って言ってるけど、
実際はそんな単純じゃない」
拳銃を持った男は、何も言わずにこちらを見ている。
引き金にかけられた指だけが、やけに目についた。
「考えろ」
コウサツくんは言う。
「まず、こいつは誰だ?」
「俺たちとどういう関係だ?」
「本当に100万円で“助かる”のか?」
「そもそも、助かるって何だ?」
ヘタレくんが小さく言った。
「でもさ……目の前で人が死ぬかもしれないんだよ?」
「“かもしれない”な」
コウサツくんは冷静だった。
「銃を自分に向けてる時点で、
こいつはもう“選択”を他人に押し付けてる」
空気が重くなる。
時間が、やけに遅い。
「なあ、あんた」
コウサツくんは、拳銃の男に声をかけた。
「100万円を渡せば助かるって言ったな?」
男は、こくりと頷く。
「はい。100万円があれば、僕は生きられます」
「それは、誰にとっての“生きる”だ?」
男は答えない。
ヘタレくんは唇を噛んだ。
「……僕はさ、
難しいことは分からないけど、
助けられるなら助けたいよ」
「それ、自己満足だぞ」
「それでもいいよ!」
ヘタレくんは叫んだ。
「後悔するより、助けたい!」
コウサツくんは目を細めた。
「後悔しないって、
“助けた後の人生”も含めて言ってるか?」
その言葉に、
ヘタレくんは何も返せなかった。
拳銃を持った男が、もう一度言う。
「……どうしますか?」
助ける?
見捨てる?
どちらを選んでも、
何かを失う気がした。
そして、もっと嫌なのは、
選ばなかった場合ですら、
“選ばなかった”という事実が残ることだった。
この問題には、
正解なんて最初から用意されていない。
あるのはただ、
選んだあとに背負わされる現実だけだ。
Q.
あなたは、100万円を渡しますか?
それとも、見捨てますか?
――結末編につづく。
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