第4話 船旅、そして現地の人々との交流

 現地では遠藤教授の紹介で通訳兼ガイドの青年ヌルポ・ヌルヌルポを雇い入れた。彼は若いながらも非常に経験豊富で、過去遠藤教授のフィールドワークにも同行したのだという。ジャングル内の各部族の言語や風習にも通じているとのこと。我々の一行に頼りになる仲間がまたひとり加わった!


 ビデオに映っていた集落のものらしい位置情報からそこまでの道程を検討した。ヌルポくんによれば船で川を遡っていくのが一番容易で安全な方法だろうとのことである。さっそく我々は船をチャーターし、荷物を積み込んだ。


 船旅は快適であった。3日間かけて川を遡っていった。水面は濁っていて、いかなる生物の姿も見えない。時折波の動きなどでその存在を感じられるのみだ。


「向こうの方で水面が波立っているのが見えるだろう」気さくな船長が話しかけてきた。「あれは人食いピラニアモドキだよ。食いついたら離れないからね。水に入ったらダメだよ」


「ピラニアモドキ?ピラニアとは違うんですか?」花岡隊長が尋ねる。


「見た目はピラニアだけどね、なんかすごく臭いんだ」と船長。


 話を聞いて、よく見ようと山鳥隊員が身を乗り出す。そのタイミングで船が何かにぶつかったのか大きく揺れた。危ないっと全員が思うよりも先に川へ転落する山鳥隊員。水の流れに抵抗して激しく手足をバタつかせるが、船には戻れない。


 綿部隊員が大急ぎでロープを投げる。山鳥隊員はなんとかそのロープを手にした。その時、山鳥隊員が「ギャッ!」と声をあげた。隊員たちは大急ぎでロープを手繰っていく。なんとか甲板に引き上げられた山鳥隊員のお尻には鋭い牙を持った奇妙な魚が噛みついていた。「うわっクッサ!」と石崎隊員。甲板に異臭が漂う!


 間一髪であった。もし救助があと少しでも遅れていたら⋯⋯我々の背筋に冷たい汗が伝った。



 長い船旅を終え、上陸地点に到着した。船長は旅の幸運を祈ってくれた。彼はまた一週間後にこの場所に迎えに来ることになっている。それまで我々はこの未開のジャングルに閉じ込められるのだ。


「じゃあみんな、よく注意しながら慎重に進んでいこう」花岡隊長が全員へ声をかけた。「無理はするんじゃないぞ。異常を感じたらなんでもいいからすぐ報告するんだ」


「はい、分かりました」隊員全員が揃って返事をした。みんな実に精悍な表情をしている。


「ここから南西いくと、私よく知ってる部族、あります。まずはそこ目指しましょう」ヌルポくんの提案に全員が従った。


 その部族が住む集落まではヌルポくんの案内もあり順調に運んだ。日が落ちる前には到着することができた。人々の歓迎ぶりは熱烈で、すぐに宴が催された。部族の長から花岡隊長に大きな杯が回ってきた。そこにはなみなみと酒が注がれている。花岡隊長はそれをぐいっと空けた。


「くぅぅ、これは強烈だ」そう言いながらも花岡隊長は空になった杯を逆さにして笑ってみせた。手を打って喜ぶ集落の人々。それを合図に皆が火の周りで踊り始めた。酒が隊員全員へ振る舞われる。


 強い酒に顔を赤くした石崎隊員がやにわに立ち上がった。もてなしの礼に日本の踊りを披露するという。笊を借り受け踊り始めたのは伝統のどぜうすくい。彼の故郷の踊りだ。


 しかしどうも酒量が過ぎたらしい。足がもつれ、そのまま前へ倒れ込んだ。一時騒然となる広場、石崎隊員は大丈夫なのか !?


「これは⋯⋯折れていますね」と手当てした武蔵隊員。どうやら手をついた拍子に右の手首を骨折してしまったようだ。


「う~む、仕方がないな。石崎はここに残って待っていろ」花岡隊長が決断を下す。「帰りに迎えに来るから」


 悔し涙を流す石崎隊員。大丈夫だと主張するが、この負傷ではこの先の探検についてくるのは不可能だ。石崎隊員は古代超文明探索編に続く二度目の途中離脱となった。


 翌朝、我々は足を引きずる石崎隊員を含む、人々に見送られながら集落をあとにした。その際、長が気になることを言っていた。


「長の話では、私たち探している部族、とても危険ということです」ヌルポくんが通訳した。「そこで、男が女になり、女が男になる、そう言ってます」


「男が女に、女が男に?」花岡隊長が問い返す。「それはいったいどういう意味なんだ?」


「私もよくわかりません。言葉、完璧じゃないからかも⋯⋯」ヌルポくんは困惑の表情を浮かべた。


「なにか暗号のようなものが隠されているのかもしれないね」遠藤教授が口を挟む。「男と女、裏と表、東洋の陰陽思想のような⋯⋯」


「まあ、ここであれこれ言ってても答えは出ないな。先へ進むとしよう」花岡隊長はそう言って隊へ号令をかけた。

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