ダンジョンマーケット
いかづち1
第1話
「せんぱ~い、こんなところにいたんですか~。探しましたよ~。」
ワナーグ王国の王都にある王立魔法学院の図書館棟の片隅で本を読んでいたケイドに声がかけられる。
「レインか。別に探してくれなくても良かったんだけどな。」
ケイドは迷惑そうに言いながら本を閉じる。
「だって、先輩以外にわたしに勉強を教えてくれるもの好きな人いませんし。というかこんなこと先輩以外に頼めないですし。」
この学院でレイン・グリフィスという少女の立ち位置はかなり複雑だった。第一王子の後ろ盾であるグリフィス公爵の弟で宮廷の要職に就くグリフィス伯爵、女好きとしても知られる彼は娼館で働いていたレインの母に一目惚れし娘のレインごと引き取ったと言われている。とはいえ、レインの母は身体が弱く間もなく無くなり、レインは伯爵家でかなり浮いた存在になっていた。
そんなレインに転機が訪れる。王立魔法学院は一定以上の魔力量がある将来有望な子全てに入学資格を与える特殊な学院だ。レインの扱いに困っていたグリフィス伯爵はレインにもし学院の入学資格があれば嫁ぎ先を探させられると貴族の血筋以外ではほぼ合格者のいない魔力試験をダメ元で受けさせたと言われている。
そこで受けた魔力試験でレインは魔力測定のための水晶を上限越えで破壊して測定不能になるほどの才能を示した。圧倒的な才能を示したレインにグリフィス伯爵は急遽ちゃんとした教育を施す方向にシフトチェンジしたが時間が足りず結局レインは魔力はあっても魔法は使えず、読み書きの方も不完全な状態で入学する事になった。
「そりゃ、この学園じゃおまえを煩わしく思うやつらばっかだからな。放っておけば勝手に消えていくやつに手を貸すやつなんて俺以外いないだろうな。」
貴族が多く通うこの学院は将来の名誉をかけた蹴落としあいの場と化している。成績上位で卒業を目指すもの、派閥に取り入りたいものなど将来の自分のためにもライバルは1人でも少ない方がいい。それが過去に数回しか例の無い魔力量を計る結晶を上限オーバーで破壊するような圧倒的な才能の持ち主ならなおさらだ。
計測できる上限を超えてしまったため、詳しいことはわからないが彼女は圧倒的な魔力を持つと言われる魔族たちに匹敵する魔力を持っていると言われている。母親の身元が不透明なため魔族の混ざり物と揶揄する声もあるのだが。
「先輩には感謝してますよ。先輩のおかげで魔法も使えるようになりましたしこうやって頼めば勉強も教えてくれるんですから。」
入学当初はグリフィス伯爵との繋がりを求めてレインに近づくものも一定数はいた。しかし、水晶を破壊してしまったため、魔法の適性属性がわからず何故かどの属性の魔法も発動しないレインに多くの学生は何の成果もあげれなかった。そして、読み書きも不完全で勉強も魔法も落ちこぼれと化した状態のレインは前期の期末試験の突破も危ぶまれるようになる。
その噂が広まるとレインにそのまま前期で学院を去って欲しい上級貴族たちは周りにレインに関わらないように圧力をかけるようになった。そうなると他の上級貴族との関係を悪化させてまで関わる必要のないレインに近づくものは皆無になった。
「まあ、俺には失うものなんて無いし、目的もあるわけだしな。」
レインが訳ありならケイドも訳ありだった。ケイドハム・カニングはナジェル伯爵家の生まれだ。ただし、ケイドは平民出身の妾の子でありそのケイドの母はケイドを産んで間もなく亡くなっている。
ケイドの目も問題だった。ケイドは左右の目の色が異なるオッドアイであり、これはケイドが魔眼持ちである事を意味する。魔眼持ちは短命に終わる事も多く、野盗に襲われたりと不幸に遭う事も多いとされ、魔族が持っている事が多いとも言われているため不吉の象徴とされている。それに加えて小さい頃から魔眼の影響もあって魔力欠乏症でよく倒れていたため身体が弱くよく倒れていた事からナジェル伯爵はケイドを正妻の跡継ぎが生まれなかった場合のスペアとする事をかなり早い段階から決めておりケイドは父方のナジェルを名乗る事を許さずケイドは母方のキャニングを名乗っている。
そしてケイドが11歳の時に正妻の子が生まれ、もうすぐ7歳とそろそろ跡継ぎとしての計算も経つ時期になってきている。懸念点としてこのケイドがこの妹に幼いうちから魔法を教えた事から後先構わず魔法を乱射していたためこちらも頻繁に魔力欠乏症で倒れていた事だ。
とはいえ最近はその頻度も減ってきており、それも理由で跡継ぎの見通しが立ったと言える状況になってきている。ナジェル伯爵としてはこの妹がケイドに懐いている事をあまりよく思ってなく、ケイドの近くにいる事でケイドが不幸に巻き込まれた際にこの妹まで巻き込まれることを最大の懸念としており、その事もあってケイドが近い将来家から出されるというのは周知の事実だった。それゆえに貴族社会から近く離れる事が濃厚なケイドには他の貴族の圧力など気にならなかった。
「わたしまだ聞いてないんですけど先輩の目的って何なんですか?」
一部では地方貴族であるナジェル家のケイドが中央で大きな力を持つグリフィス家と関係を持つ事でケイドが家から追い出されるのを阻止しようとしてると言われているが家から出される準備として学院の入学試験を受けさせられたレインには家とのパイプ役になれるほどの力は無い。
レインのグリフィス家での立場が入学試験で変わったわけでも無ければいかにポテンシャルがあってもこのままレインが勉強を教わって成績が改善したところで成績上位とは程遠い。ましてやケイドが卒業までが期限とするならば今年で卒業のケイドはレインが3年生までに成果をあげて上位で卒業するのを待っている時間は無い。
「まあ、そのうちわかるさ」
レインから見てもケイドがそれをわかっていないようには見えないし、それが目的では無いと確信もあった。とはいえ何度聞いてもはぐらかされるので本当の目的は不明なままだ。
「そうやってはぐらかしていつになったら教えてくれるんですか?」
「そう焦らなくても時がくればそのうちわかるって」
やはり今日もケイドは答える気が無いようだった。
ダンジョンマーケット いかづち1 @ikaduchi1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ダンジョンマーケットの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます