いつの日かの俺が正解の道に辿り着くまで
鈴木 柊
第1話
俺は生まれた時から1人、だと思う。はっきりしてないのは、記憶がないから。小さい頃は、親というものは死んで、俺は「汚染エリア」で生まれたからここに居るんだろう。そんな感じで思ってた。今思えば、ここで産んでなくても、捨てられてここにいる可能性も無くはない。でも正直そんなことはどうだっていい。だって俺という存在はここに存在している。そう、くっきり、ハッキリとね。
「あーーー腹減ったなー、よし、奪ってこよーーー」
ひょいひょいと慣れた手つきで皆が気づかない間に、売り物を自分の懐に入れていく。
「あれ、りんごがまた1個ないよ。まーたサンだね」
「俺んとこもねえ!サンの野郎!!ちったあゆっくり面でも見せてみろってんだ!!」
その口調とは裏腹に皆、どこか嬉しそうだ。
「今日のりんごは甘えな」
「おーい、盗人様ー」
この男は『ジョイン』。なんでもあの『バツサイ』のメンバーらしく、1年前より姿を見掛けるようになった。
黒色の髪に、左耳にはピアスをつけている。
銀色のエンブレムが着いた、如何にも高そうな紺色のセットアップを着用している。
「お前、いい加減、しっかり仕事しろよ」
ジョインは呆れたようすでサンに語り掛ける。
サンも面倒臭そうに口を開く。
「ここで仕事は出来ねえだろ。」
ニヤッとジョインが笑う。
「ここではな!!」
「?」
サンは理解出来ずに首を傾げ、林檎を口いっぱいに頬張る。
「まさかお前、世界はここだけとか思ってねえか??外には色んな人間が色んな仕事しながら生きてる、そしてこの俺様もそうだ。」
ジョインは勢い良く立ち上がり鼻高々に語り出す。
「あーーそういえば、外では有名だって言ってたやつか。いいんだよ。俺はここから出る理由がねえ。元気に生きてられてっからな!」
サンはジョインの話の聞く耳も持たない様子に溜息を着く。
「はあ〜頑固は誰に似たんだかな……おっと、それじゃあ俺はそろそろ行くぜ。最後に国1番のヤンチャ坊主を導きに来たんだがな〜。」
「へいへい、行ってくれ。元気でな〜」
サンは振り向きもせず手を振る。
「ったく、お前には可能性があるぞ〜俺には見つける「才」がある。」
「へいへい、じゃあな〜」
しばらくすると何やら街の方が騒がしくしていた。サンは汚染エリアの柵を登り街の様子を見に行く。
あぁ、ジョインが凱旋してんだな。ジョインは、この国出身唯一の『バツサイ』らしい。
皆、彼の凱旋を誇らしげに見ている。
「ジョイン様、悪いやつらをまた締め上げに行くんだろ?連れてけー!!」
「僕も貴方みたいなバツサイになれますか!!!」
「才と根性があればな!」
ジョインは得意気にそう言い残し、この国を去った。
おーおー眩しいな。
「才」ねえ。大袈裟なこった。 俺は人よりちょっと足が早くて、ちょっと力が強いだけで、「才」とはまた違う。ましてや、親が誰かもしらねえ、盗っ人には関係ねえ話だ。
汚染エリアへ戻ってくると、不審な男が3人何やら話し込んでいる。
ん?見ない顔だな?
ジョインの仲間か?
「おい、ジョインなら国を出たぞ」
遠くから、サンは声を掛ける。
「ジョインのこと知ってんのか〜、おい坊主、お前ジョインの所まで案内してくれ。」
金色の髪の毛の男が、何やら気怠そうに立ち上がりサンの方へ歩き出す。
「ん?いや知らねえ……よ」
奇妙だな、ここの連中の奴らと何かが違う。
こうゆう時は逃げるべし!ってな〜!
パシッ―
銀色の髪をした高身長の男が、サンの手を掴んで離さない。
「なんだこいつ、才持ちか?早えな。」
「後々、大きくなってから名を売りそうだね〜。どうする〜?」
「いや、面倒だな。才だけ取って殺そう。」
腫れ物を見るかのような目でサンを見ている。
(いやいや、待てよ。殺すな殺すな。物騒だな。
いや、「汚染エリア」は元々そうゆうやつの集まりだろ。なに寝ぼけてんだ。)
くっそ、そうかよ。こうなったらやってやるよ。
サンは拳に力を込めれるだけ込めた。
「喧嘩はあんまり好みじゃなくてなあっ!!」
思いっきり相手の懐に拳を入れる……!
「っ!?」
しかし、無情にもサンの拳は届かない。
まただ、拳を止められた?確かに、喧嘩に自信があったわけじゃねえが、ここの奴らは戦おうと思えば、多分俺が勝てる。だから、皆んな俺から奪おうとしない。
「なんだ、こいつ。力も強え。連れて帰るか。」
新しい新種でも見つけたかのような目で見てくる。
俺の名前はサン。
今から人生終了しそうなやつの名前だ。
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