魔王さまは懲らしめたい!

鍵錠 開

第1魔 勇者と魔王

 世界は渾沌に飲まれていた。

 天空は漆黒に染まり、地上では魔王の創り出した魔獣が蔓延っている。

 人類の安全地帯は最早帝都クラウスカイのみ。

 しかし、この絶望を斬り裂く一筋の光が人類を照らす。


「よくぞここまで辿り着いた」


 魔王城・魔王の間。

 人が座るにはあまりにも大きな玉座のみが存在する異質な空間。

 だが、魔王の姿を見れば玉座の大きさも納得出来る。

 座高だけでも五〜六メートルはありそうな程の巨体。

 こちらを見つめる、たったそれだけの動作で自然と呼吸が荒くなる威圧感。

 それだけではない。人類が、否、全種族が束になっても勝てるかどうかという魔力。

 常人であれば近付くだけで失神してしまいそうな魔王の目の前に、一人の青年がいた。


「ああ。ここに来るのも一苦労だったよ。お陰で骨が折れた、物理的にね」


 軽口を叩く青年は白銀の鎧で身を包んでいた。

 それだけであればただの騎士に見える彼だったが、他とは明らかに違う要素があった。


「ほう、それが破魔の剣。この目で見るのは初めてだ」


 彼の背中に担がれた一本の剣。

 選ばれた者にのみ使用を許された伝説の聖剣。

 ホリー・ブレイブ。

 魔王最大の天敵であり、人類最後の希望。

 彼こそが────。


「自己紹介といこうか。我が名は勇者・ホリー。この剣でお前を討ち、人類に再び光を灯す者」


 ────勇者であった。


 その言葉に、魔王は嬉しげに口元を歪める。


「そうか、我を討つか。良かろう、相手になってくれるわ。我はこの世の征服者・魔王である。どちらかが死ぬまで存分と楽しもうぞ」


「望むところだ────いくぞっ!」


 魔王が立ち上がり、何もない空間から巨大な漆黒の剣を顕現させる。

 勇者も背中から聖剣を抜き取り、魔力を全開させる。

 勇者と魔王。光と闇。白と黒。人類と魔族。


 互いの全てを賭けた戦いは三日三晩続いたという。

 先に倒れたのは────魔王だった。

 全身傷だらけ。欠損箇所多数。崩壊寸前の城の中で、背中を床に付けてしまった。

 魔力の塊たる魔王には、破魔の剣は相性が悪すぎたようだ。


「ふふふ…………フハハハハハッ! やるではないか、勇者……。最期の戦が、お前のような男で良かった」


「こちらこそ、礼を言うよ。お前との戦いのおかげだ。僕達人類は、これからも強くなる」


 こうして勇者と魔王、たった二人による戦争は勇者の勝利で幕を閉じたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る