結婚式の鐘は元旦に鳴る

天照うた @詩だった人

Happy new year!!!!!

WGS初ワンライ、勝手に書かせていただきました…大目に見てください…

「年末」×「鐘」に私の好きなTot Musica イメージから「呪い」で執筆しました!

新年あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!!


◇◆◇◆◇◆



 ……一月一日は、の命日だ。

 テレビのアナウンサーは馬鹿みたいに陽気な声で「新年あけましておめでとうございます!」なんて言ってる。

 俺の友達は、なにも知らない顔で「あけおめことよろ!」なんて軽い言葉のLINEを送ってくる。

 ……何も、知らないくせにな。

 この世界で俺は、今に抗って過去を求めている。

 俺が新年に向かうのは、なにも縁起のいい神社なんかじゃない。町はずれの、小さな墓地だ。

 そこに俺の妻は眠っている。

 三年前、12月31日にプロポーズをしたばかりだった。彼女は嬉しそうに笑って、婚姻届けに印を捺してくれた。除夜の鐘がちょうど鳴り響いて、「結婚式の鐘みたいだね」と二人で笑いあったのを覚えている。

 街角のはずれ、なにか他と違う神聖な空気を纏ったはいつも通りに静まり返っていた。

 なぁ、どうしてだろうな。そういう、運命なんて俺にはどうしても信じられないんだよ。

 街の連中は騒いで新年を喜んでいるのに、どうして君だけこんな静かな場所で黙りこくってなくちゃいけないんだろうな。君は騒がしいのが好きだった。その箱の中から、みんなのこと見てんのかな。好奇心旺盛なお前にはそれ、狭すぎんだろ……。


「なんでだよ……」


 毎年だ。涙が、どうしてかあふれる。

 なんで、なんでだろうな。婚姻届けなんて、あの日に出しに行かなくたってよかったんだ。

 どうしてあんな真夜中に、俺とお前は笑って街を歩いたんだ? あの声だけが、耳の奥に残っている。どうしてお前だけ、事故に巻き込まれたんだ?

 その時のことは、よく覚えていない。俺の頭の中では、除夜の鐘に共に嬉しそうに微笑むあいつの姿しか残ってない。

 好都合すぎるんだよ。

 なんで、俺は生きてるんだろうな……。

 彼女の墓に上から酒をかけて、前にドカッと座った。そして、手を合わせる。

 今、君は笑っているだろうか。天国でゆかいな仲間に囲まれて、楽しい新年を迎えているだろうか。かわいい君のことだから、俺よりもっとかっこよくて素敵な男の人をみつけているかもしれないな。

 どうであっても、君が幸せでありますように。

 君が、笑っていられますように。

 ゆっくり、目を開けた。明るい初日が入り込んでくる。それと同時に……今まで、見えなかったものが僕の前に飛び込んできていた。


『どうして、そんなに辛気臭い顔をしているんだい? 愛しの旦那くんダーリン?』

「……なんで、ここにいるんだよ」


 紛れもなく、俺の前にいるのは妻だった。三年前に死んだ、俺の、妻。


『う~ん、どうしても旦那くんが元気ないから、ちょっとこれることになったの! にしても、元気ないね~新年なのに。もっと楽しいことしようよ』

「楽しいこととか、お前、どれだけ……」


 情けないことに涙があふれてきた。視界がゆがむ。そんな俺を、彼女は笑顔で見つめている。


『ありがとう。旦那くんが、どれだけ私のこと好きだったのかわかったよ。私、幸せ者だね。だけど、私はもうこっちにいちゃいけない存在だから』

「……そんなこといいだろ。なんでだよ」

『私は幽霊だよ。だから、私は帰らなきゃ。私、旦那くんに会えてよかった。天国での暮らしはね、君がいないから退屈なんだよ。でも、いい子にしてたらまた会いに来れるから』

「じゃあ、俺が死ぬから」

『……旦那くん。冗談でも、そんなこと言わないで。私の分まで、めいいっぱい生きて』


 彼女は、俺の頬へと手を伸ばした。それはすり抜けて、でもたしかにそこに


『私ね、旦那くんに呪いかけにきた。幽霊っぽいでしょ? はるばる天国から来たんだから、感謝してよね』


 首を傾げた俺の前に、彼女は跪く。まるで、女神のようだった。

 あの頃とは変わってしまった君に、思わず息を飲んだ。また溢れ出しかけた涙を止めるように、きつく歯を食いしばる。

 彼女は両手を組み合わせて、目を閉じた。幸せそうに微笑んで、そして、一言。



『旦那くんが、私のことを忘れられますように』

「……は?」



 彼女は目を開けて、もう一度幸せそうに微笑んだ。


「なぁ、今の、なんだよ? 取り消してくれ。なんで、そんなこと」

『ごめんね……今まで、本当にありがとう。大好きだよ、私の愛しの旦那くん』


 彼女は、陽に照らされて姿を消した。まるで、何もが戯れだったかのように。嘘だったかのように、静かに。


 ……あれ。なんで俺、こんなとこにいるんだ?

 って、誰だ? 心当たりがない。

 スマホを確認する。一月一日、元旦だ。

 街を見る。朝陽に照らされた町は、眠っているようで明るかった。


「初詣……いくかぁ」


 うーんと伸びをしてその場に立つ。


ゴーン……ゴーン……



「ん?」



 どこからか、鐘の音が聞こえた。

 おかしいな。もう、今日は一月一日なのに。


 除夜の鐘のようなそれは、俺には結婚式の鐘に聴こえてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

結婚式の鐘は元旦に鳴る 天照うた @詩だった人 @umiuta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画