第3話

猫としゃべった日から私は恋バナをしたいときに、例の公園に行くようになった。


猫は疾患がなければ少しならスイカを食べられるらしいので、コンビニのカットスイカを分けながら話したこともあった。


好きな人の話をするのはとても楽しかった。

「授業で他の人といつも一緒だったのに、今日は私の隣にきてくれたの!私の隣がいいって言ってくれたんだよ!」

「なるほど、他の集団にいたのに君の隣を選んだのか。それは嬉しいな。」

なんて人間のように相槌を打つものだから話がはずんだ。


「今日は寒いからって手を繋いでポッケに入れて歩いたの!」

「手を繋ぐなんて猫の私には出来ない経験だな。」

「クールな人なのにそんなことするなんて珍しいし、実は付き合ってるでしょってクラスメイトに言われちゃった〜」

と惚気たり、

「休み明けに久しぶりに会ったら駆け寄ってきてハグされて!」

「君に会えたのが嬉しかったんだろう。」

と浮かれた報告をしていた。


そんな生活が半年ほど続いた。私の恋バナは嬉しかったことを話すのが定番だった。


『猫さん』は自分の話はあまりせず、聞き役に徹することが多かった。オスなこと、フルーツをちびちび食べるのが好きで、そして猫にしては紳士なことしか分からなかった。


私が話をしている時は、隣のブランコに座って、前を見て、片耳だけをピクピクさせて話を聞いていた。その様子は、まるで私が独り言を言っているようにも見えたと思う。

向かって話をすればいいのに、これが普通になってしまった。あと、最初に名前の話をすれば良かった。呼び方が『猫さん』で定着してしまった。

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