【アインズ様は変わりたい】変身の魔法を会得したアインズ・ウール・ゴウンはハーレム生活を満喫する

空花凪紗~永劫涅槃=虚空の先へ~

第1話 魔導書

 玉座の間にて俺は座る。配下たちはひざまずいて俺の声を、言葉を待っている。


「先ずはコキュートス、及びシャルティアの遠征からの帰還を祝すとしよう。二人には褒美をやる。アルベド。報告を」

「アインズ様。この度、コキュートスおよびシャルティアによるドワーフ王国の地下に眠っていた古都リーレーラインにて、発掘調査を行った結果、このような魔導書を発見致しました」


 アルベドが俺にその本を差し出す。


「ふむ。『魂と身体についての省察。変身に関する魔法の考案』か」

「はい。私たちではその本をタイトルを解読するので必死でした。もしかしたらアインズ様ならあの神具で解読できるのでは?」


 確かに俺の保有する『森羅万象の瞳』では全ての言語を解読できる。


「なになに……」


 俺は『森羅万象の瞳』を起動し、魔導書へと視線を落とす。瞬間、紙面に踊る未知の文字が意味を持った言葉へと変換され、俺の思考へ流れ込んできた。


 ――魂とは器に縛られしものにあらず。

 ――肉体とは魂を定着させるための仮初の錨である。


「……なるほど」


 無意識に感嘆の声が漏れる。これは単なる変身魔法の研究書ではない。魂と肉体の関係性そのものを再定義しようとする、極めて危険かつ高度な理論書だ。


「アインズ様、いかがでしょうか?」


 アルベドが期待と不安の入り混じった眼差しで俺を見る。背後ではデミウルゴスが眼鏡を押し上げ、シャルティアは興味深そうに身を乗り出し、コキュートスは微動だにせず忠義の姿勢を保っている。


「……この魔導書は、魂と肉体を切り離し、再構築する理論を記している」


 その言葉に、玉座の間の空気がわずかに張り詰めた。


「既存の変身魔法とは根本的に異なる。種族やレベルによる制限を超え、“魂の本質”を書き換える可能性すら示唆しているな」


「なっ……!? そ、それは……」


 シャルティアが息を呑む。アンデッドである彼女にとっても、魂の在り方は決して無関係ではない。


 デミウルゴスが一歩前に進み、深く頭を下げる。


「つまりアインズ様、この書が完成していれば……ナザリックの守護者たちは、さらなる進化を遂げられる可能性がある、と?」


「理論上はな」


 俺は魔導書を閉じ、玉座の肘掛けに指を組む。


(……これは危険だが、使い方次第では計り知れない価値がある)


「よって、この魔導書はナザリックの最重要研究資料とする。管理はアルベド、研究はデミウルゴスが主導。コキュートスとシャルティアには、今回の功績として個別に褒美を与えよう」


「はっ! ありがたき幸せ!」


「アインズ様のご慈悲、身に余る光栄でございます!」


 配下たちの忠誠の声が玉座の間に響く。


(……また俺、すごいこと言ってないか?)


 内心で冷や汗をかきつつも、俺は威厳を崩さないよう静かに頷いた。


「では次の議題に移る。――この世界における“魂”の研究は、まだ始まったばかりだ」


 ナザリックの未来は、この一冊の魔導書によって、また大きく動き出そうとしていた。


 ◇


「では、シャルティアとコキュートス。褒美は何がいい?」


 シャルティア「はい! 私は――」


 勢いよく立ち上がりかけたシャルティアだったが、その瞬間、隣から低く重厚な声が響いた。


 コキュートス「待たれよ、シャルティア・ブラッドフォールン」


 シャルティアはぴたりと動きを止め、コキュートスの方を見る。


 コキュートス「私たち守護者は、アインズ・ウール・ゴウン様をお守りするために創られた存在。ですので褒美は――本来、望むべきものではありませぬ」


 玉座の間が静まり返る。コキュートスはそのまま片膝をつき、頭を垂れた。


 コキュートス「ですが……もし、どうしてもお与えくださるというのであれば。我らの力が、さらにアインズ様のお役に立つものであることを、お許しいただきたい」


(……くっ、忠義が重い! 重すぎる!)


 内心でそう叫びながら、俺はゆっくりと頷く。


「なるほど。実に守護者らしい答えだ、コキュートス」


 その言葉に、コキュートスの外骨格がわずかに震えた。


「だがな。褒美とは、忠誠に対する対価であると同時に、主が配下の望みを知るためのものでもある」


 俺は視線をシャルティアへと向ける。


「シャルティア。お前はどうだ?」


「は、はいっ!」


 今度は勢いを抑えつつも、シャルティアはしっかりと手を挙げた。


 シャルティア「私は……その魔導書の研究に、少しでいいので関わりたいです!」


「ほう?」


「魂と身体の関係……それはアンデッドである私自身の在り方にも関係します。アインズ様のお役に立てるかもしれませんし、何より……知りたいのです!」


(意外と真面目な理由だな……)


「よかろう」


 即答すると、シャルティアの表情がぱっと輝いた。


「シャルティアには研究補助としての参加を許可する。ただし、デミウルゴスの監督下だ」


「は、はいっ! ありがとうございます、アインズ様!」


 次に俺は再びコキュートスを見る。


「コキュートス。お前の望みは“力”だったな」


「はい。我が武と忠義を、さらなる高みへ」


 俺は少し考える素振りを見せてから、口を開いた。


「では、お前にはこの古都リーレーラインの防衛および再調査を任せる。未知の敵、未知の技術が眠っている可能性が高い」


「……!」


 コキュートスは深く頭を下げる。


「この任、命に代えても果たします」


「うむ。期待しているぞ」


 玉座の間に、再び満足げな空気が流れる。


(……よし、何とか“偉大な支配者ムーブ”は保てたはずだ)


 俺は内心で安堵しつつ、次なる議題へと思考を巡らせる。


 ――この魔導書が示す“魂の可能性”は、ナザリックに何をもたらすのか。


 その答えは、まだ誰にも分からなかった。

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