レッツゴー!取材リョコー!

田鶴

第1話 取材旅行だ!

 2025年元旦、私達夫婦はドイツ・バイエルン州の州都ミュンヘンから普通電車で1時間ほどの小さな集落ヒッテンキルヘン(Hittenkirchen)へ向かいました。とある歴史上の人物が一番幸福だった時期に住んでいた場所です。


 当時、その歴史上の人物(仮にRとします)について、いずれ小説を書きたいと思っていましたので、取材旅行のつもりでした。歴史上と言っても、彼がヒッテンキルヘンに住んでいたのは100年ちょっと前で割と近い子孫が存命ですので、Rの名前は内緒にしておきます。


 ただ、取材(?)旅行でたいした収穫がなく、スランプに陥ったこともあり、未だに小説は書けておらず、いずれ書くかどうかも分かりません。でもせっかくなので、事前の下調べ(大した事してませんが)と取材旅行のよもやま話みたいなことを書いてみます。


 私が調べている歴史上の人物Rにはドイツ語のウィキペディアに記事があるので、全くの無名ではありません。彼が長期間住んでいたヒッテンキルヘンに記念碑の類がないか、この村のあるキーム湖畔ベルナウ市(Bernau am Chiemsee)にメールで質問しましたが、なしのつぶてで嫌な予感がしました。


 でも転んでもただでは起きません! ヒッテンキルヘンはキーム湖を見下ろせる風光明媚な場所なので、小さな村にも拘わらず、ホテルがあります。予約サイトで予約したホテル「ランドガストホフ・ヒッテンキルヘン」(Landgasthof Hittenkirchen)に村の観光名所について質問メールを送ってみました。


「村の観光名所」と言っても、Rの記念碑や彫像、Gedenktafelゲデンクターフェル(記念銘板)は村にあるかと言うように、ほぼひたすらRに関することなので、観光名所と言えるか微妙、いや言えないでしょう。でもメールのタイトルにRについて問い合わせと書いていたら、ホテルの人にメールを開いてもらえないかもという姑息な考えです。


 ちなみに記念銘板とは、歴史上の人物や出来事を記念して作られた石板もしくは金属製の板のことで、建物の外壁に掛けられていることが多いです。歴史上の人物がいつからいつまで住んでいたと当時居住していた家の外壁に記念銘板が掛けられていることがドイツでは結構あるので、Rが当時住んでいた家にもあるかもと思ったのです。


 結論を言えば、ヒッテンキルヘンにRの記念碑の類はおろか、記念銘板もありませんでした。でもホテルオーナーのお兄さんは、とてもフレンドリーで親切な返事をしてくれて他にも貴重な情報をくれました。このホテルのことは、第3話でもう少し詳しくお話します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る