祝福のために神様を限りなく0に近く信じた方が良いことの証明

さわみずのあん

パスカルの賭けに、限りなく小さく0を賭ける。

 大晦日。

 12月31日。

 み、そ、が。3×10であるなら。

 おおが。+1である。

 0=1になるんじゃないか。

 矛盾だ。とくだらないこと。

 そんなことばかり考える。

 と。そ。

 と、が10。そ、が10なら。

 屠蘇。とそ、は、10×10。

 100である。

 まさに百薬の長に相応しい。

 百薬は、189で。医薬品だ。

 189。

 9で割れて、21。21は3×7。

 189=7×27。

 ということは、17の2乗は、

 (17-10)(17+10)=189

 17^2-100=189

 より289。

 そんなことをしなくても、覚えている。

 18の2乗は、324。

 19の2乗は、361。

 寒い。

 寒い。寒い。

 布団の中ぬくぬく、ぬぬはちじゅういち。

 ぬぬってなんだよ。

 ぬの2乗。

 布自重。

 布。布団を自分に重ね直す。

 布自重は、SOVなのか。

 S省略の、O1O2Vかも。

 でも布団は、やっぱり守護だよな。

 と、午後五時五十五分。

 をスマホが表示して。

 通話アプリが立ち上がった。

 のを座らせようとしたが。

 手を滑らせた。

「ももじゅうろく。ももじゅうろく」

 女の子の声であるが。

 桃などという名前ではない。

 もちろん、十六歳でもない。

「せんろっぴゃく」

 ももは、百でもあるので、そう返答する。

「へー、百の事をもも、って読むんですね。もしもし、ももじゅうろく、せんろっぴゃくなんですね。あっ、だとだと、すると。もが十なんですね。もももぱい」

「先輩を、もももぱいにするな」

「じゃあ、そそそぱい」

 この間教えた。

 そ、が十であることの応用で返してくる。

「そもそも、なんで携帯の番号知っているんだ」

「そもそも、は一万ですね。番号なんて、たったの八桁。そもそもそもそも通りしかないじゃないですか」

「総当たり攻撃かよ」

「そう、当たりです」

「はあ。まあ、冗談はさておき」

「下段にですか?」

「話を中断するな、進まねえ」

「上段に戻します」

「戻すな」

「あなたは神を信じますか?」

「かみ?」

「やそそもももそのかみです」

「やそそもももそのかみ?」

「ににににごのにじょうみこと」

「ににににごの、待て待て待て。ににに、が、8で、にごが10、んや、にごのにじょう、10の2乗? いや2の3乗乗」

「いえ、にごのにじょうみことは、10の2乗を3回かけてください」

「10の6乗。百万じゃん。ににににごのにじょうみこと。だと、やそそもももそのかみそのものじゃん。八百万の神なのに唯一神じゃん」

「やそそもももそのかみににににごのにじょうみことを、あなたは信じますか?」

「やそそもももそのかみ、八百万の神なんて嘘八百万。ににににごのにじょうみこと、ニニギノミコトも信じちゃいない。っというか、ニニギノは何した人だよ」

「神ですよ。神。ほら、イワナガヒメ振って、コノハナシサクヤモキイタヒメと結婚した神です」

「ああ、そいつか。いや、コノハナサクヤヒメだろ。人が永遠の、岩の命から、儚き花の、短い命になってしまったの由来になった、ていう」

「コノハナシサクヤモキイタヒメです」

「うーん。すまん。正解のツッコミが分からん」

「正解は、千夜一夜物語で、間違えて昨日話したお話をもう一回話してしまって、シャフリヤールに殺されてしまう、シェヘラザードかよ、でした」

「ああっ。くそっ。いや。昨夜と姫で、いけたか。いけたな」

「行けましたか?」

「いけた、と思う」

「なら、初詣行きましょう。集合は、」

「待て待て待て、行かない行かない。その行けるじゃねえよ」

「でも、さんぜんひゃくよんじゅういちてんごーきゅうにーろくごーさんごーはちきゅー、」

「Qの答えは、1000πか?」

「正解。先輩の返答の集合の要素は、 {行く} しかないみたいですよ?」

「バカめ。集合の要素には、空集合、φが存在する」

「初詣に行きますか?」

「φ」

「ふぁい。寝ぼけ眼の、はい。ですね」

「 {} 。 {} で返答する」

「なるほど、集合。Should goですね。行くべきですね。行きましょう」

「I shoud goだ。行くべきだろうがいかないだろう」

「そんな構文あるんですか?」

「文法的には、have goneだろうけど、通じるだろう。多分」

「I can't understand English」

「できるできる。で、切るぞ」

 通話アプリを切った。

 切断の後、刹那。

「なんで切るんですか? この、引きこもりっ!。行動範囲半径0.5kmっ!」

「えーっと、500mの円の2πrで、先輩なんだろうが、2πrは、円周の長さの公式だろ。面積じゃないと、意味通じないだろ」

「φ」

「しないしない。ファイトしない。リングのゴングを鳴らすなよ。落ち着け落ち着け。深呼吸深呼吸」

「 {} 。 {} 。 {} 。 {} 。」

「波かっこ中かっこの、かっこいい読み方。ブレースだけれどもよ。それじゃ深ブレスになってないだろ」

「ブレーズ・パスカルを知っていますか?」

「人間は考える葦である、とか。ヘクチ、パスカルの?」

「ゴッドブレスユー」

「くしゃみしてないし、神のご加護も別にいらない」

「いえいえ、神のご加護があるかないか、それ自体は、どうでもいいのです。あなたは、神を。信じた方が良い。と、信じさせてみせます」

「ああ、パスカルの賭け? か」

「神様のいる確率をpとします。神様がいるとき、神を信じていると得られる祝福は、」

「にににのにぶんのぱい回転」

「そう、8のπ/2、90度回転。∞です」

「期待値は、祝福×確率。∞×pで、∞だ。これが、神様がいるとき神様を信じることの期待値。神様がいないとき神様を信じることの期待値は、祝福は、0。このときの期待値は、当然0」

「神様を信じることの期待値の合計は?」

「∞+0=∞」

「そうです∞。インフェルノです」

「地獄のゴーカート、八の字コースだよ、インフェルノだと。∞はインフィニットだろ」

「いえいえ、神様を信じないと、インフェルノです」

「神様がいるとき神様を信じていないと地獄行き、-∞。神様がいないとき神様を信じていると、0。期待の合計は、-∞」

「そうです。まとめますと、神様を信じていると期待値は∞。神様を信じていないと期待値は-∞。いかに虚無主義の1000φといえど、神様を信じないわけにはいかない。つまり。初詣に行って、神様にお参りしましょ。ねっ。ねね」

「そうだな」

「ねっ」

「さっき、俺は、嘘を言った」

「行きたくなってきたでしょ、初詣」

「神を信じていない。と嘘を言った」

「良いのです。神は全てを許されます」

「俺は。限りなく0に近く神を信じている」

「はあ。何言ってんですか先輩。虚言が極限に?」

「いや、俺が初詣に行かないことを証明する」

「もういいですって。行きましょうよー」

「パスカルの賭けでは、神様がいるとき神様を信じることの期待値は∞だ。なら、神様がいるとき限りなく0に近く神様を信じることの期待値はいくつだ?」

「あっ」

「神様を1。100%信じている敬虔な人間と、神様を0.5。半信半疑50%信じている人間がいる。100%の人の期待値は、1×∞=∞だ。しかし、50%の人の期待値も、0.5×∞=∞だ。10%、1%、0.1%、0.01%。0.1×∞=∞、00.1×∞=∞、0000.1×∞=∞ ……。限りなく0に近く神を信じていても、期待値は∞。ならば。俺は、神様を信じてはいるけれど、初詣に行って、お参りをするほどは、信じていない。だが、初詣には行かないけれど、期待値は∞だ。初詣に行かなくても、俺は最大の幸福を、祝福を得ることができる」

「……本当に初詣行かないんすか?」

「寒い」

「……着物。着て来ますけど」

「…………寒い」

「361?」

「19×19」

「つまり?」

「行く駆ける行く」



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