月は綺麗なんかじゃない。

第1話

「お月様に、成りたいの」

 

 四歳の頃、瑠奈は満月に焦がれていた。瑠奈ん家の縁側で、瑠奈と一緒に作った月見団子を夢中で食べながら。


 もっとも、主に俺が口に運んでいて、真面目に月見をしていたのは瑠奈だけだったけど。

 

 二人で作ったという特別な感傷に浸りながら、歪な形をした団子を放り込んでいた、と思う。


 瑠奈の通常運転である、頓珍漢な発言が飛んできて、団子の味が薄くなった。

 

 ルナという月の女神と同じ名前だと知った時からか。満月を見る度に、繰り返し言っていた。

 

 瑠奈がその妄言を吐く度、俺は団子を口奥で丸い形を潰しながら、本当に馬鹿げていると鼻で笑っていた。そんなだからあいつは周りから奇異な目で見られるんだ。

 

 元から不思議ちゃんでマイペースで危なっかしい。クラスでも浮いた存在ナンバーワンだ。だから、幼馴染である俺がいつも瑠奈のそばについていた。

 

 それは、10年経った今でも……。

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