GO GATE

ののせき

プロローグだにょん

 2010年 4月


 何かと人生の転機となり得るこの時分。咲き誇る桜が人々を寿ぎ、暖かくなりつつある風が彼らの背中を後押し、皆が皆、大きな期待を抱きながら新しい人生を歩もうと心に刻む。


 その、4月1日という日が始まる少し前。


 11時58分に起こった出来事。突如、小規模な場所でとても小さな地震が起こる。それは日本だけでなく、世界でおよそ、3000もの地域で発生した。


 【ダンジョン】の出現である。


 地面に穴が空き、中は寸分も見えないほど暗い。それは地面だけではなく、空にも、ぽっかりと黒い穴が出現したまま微動だにもしない。


 そしてその中から突如、異型の生物が現れ人々に暴力を振るった。


『これが、当時の映像です』


 アナウンサーが真剣な顔で頷き、注目を促した。


 地面に現れた穴を観察していた男達が居た。タンクトップを身に付けた筋肉質な男達は、背中を押し合いながら笑い、中に入ろうかとしている。するとその穴の中から棍棒を持った緑色の肌を持つ人型の生物が現れ『キィ!!』と鳴いた。


 棍棒を振り翳し、男達を襲った生物だったが、男達は叫びながら、引っ叩いた。


 パァンッ!!!


『キッ……』


 ピクピクと痙攣しながら、どうやら、絶命したらしい。


 ちょっと待てぃ!!!


 赤いテロップが画面に現れると、お笑い芸人が手をアシカみたいに叩きながら大きく笑い始めた。


『勝っとるやないか!!!』

『よっわっ!! え、モンスター弱ない!?』

『なにコイツ弱いの?』

『棍棒ガーッ!っていったらビンタ一発ウソやろ!!』

『どっちがモンスターやねん!』


 シンプルに【モンスター】と呼ぶようになった生物は、この【ダンジョン】の中を住処として生活し、時に表に出てきては暴れ出しているらしいが、駆逐するのは至って容易だった。


 彼らは人間の人知を遥かに超える謎の【力】を使うようだ。


 時には何も無いところから火を起こし、時には空気中から水を集め自在に操る。時に重い物を触れる事もなく浮かび上がらせる事が出来るようだ。


 そんな力【スキル】を有するものは滅多に表には出てこない。【ダンジョン】の深みに潜んでいるという。


 学者も、政治家も、コレを想像するのは容易い。


 彼らには、人類が文明を開くのに必要としてきた、油や湧き出る水、それらを必要としないらしい。


 ならば潤沢にあるのではないか、と。更にはこの時代の更なる発展に必要な、彼ら特有の様々な資源もまた豊富にある可能性はどうしても捨てきれないものだった。


 中を探検出来る者が必要だ。


 そう考えるのは、馬鹿でも容易い。


 あらゆる国々が独自の理を以て、各々が組織を設立した。


 日本ではそれを【ギルド】と名付け【冒険者】として人材を募った。


 だが残念な事に、理想とするべき資源はそれほど多くは無い。分かった事は、ダンジョン内は、もはや人間の常識が通じる場所ではないこと。そしてモンスターは、それほど大きな脅威には成り得ないという事実である。


 普通に銃火器で対応する事が出来るが、無限と言えるほど大量に湧いてくる。が、『それほど多くは無い』は此処に掛かる。鉄や火薬などが、モンスターもまた用いる故に手に入れる事が出来る。それでどうにか、プラスマイナス、微妙なところに持ち込んでいる。


 ところが、ある冒険者がダンジョンの最奥に辿り着いた。そこには巨大な門があり、その奥にはまるで待ち構えるようにして高い知性を持つ生物が待ち構えている。


 それを、冒険者は10人掛かりでの討伐に成功する。すると、その更に奥、宝箱が発見されたのである。


 ダンジョンの奥には金銀財宝が眠っている。


 それが明るみに出ると、冒険者が急増した。


 時代は【大冒険時代】に突入することになる。


『ですが、私はそんな時代は望んでいません』と当時、ダンジョンを攻略したという冒険者の一人が語った。


『私達は、あのボスモンスターから聞き出しました。彼らの上にはまた更に上の存在。このダンジョンを統括している者が居る。私達はそれを、【魔王】と呼ぶことにし、今もなお警戒し、今も探し続けています。……怖いのです。まるで、時間稼ぎのように感じるのです。私達の目を宝物に逸らしながら、魔王は今も何処かで英気を養っているのではないか、と。国は早急に、宝ではなく、魔王を探すべきです。私は訴え続けます』


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