凡才少女の異世界学園物語〜私、能力なしだったはずなのに!?〜

@YUYU228613305

第1話


スターライトアカデミーの入学式は、魔法の祭典そのものだった。


 空には色彩豊かな魔力の花火が打ち上がり、噴水からは意思を持った水鳥たちが飛び出して新入生を歓迎している。


​(ああ、やっぱり来る場所を間違えちゃったかも……)

​ 私は背負った剣の重みを感じながら、小さく息を吐いた。


 周囲を見渡せば、宝石が埋め込まれた杖や、古めかしい魔導書を抱えたエリートばかり。腰に鉄の塊をぶら下げている女子生徒なんて、広大な式典会場を見渡しても私一人だけだ。


​「おい、見ろよ。あれが例の『推薦枠』だろ?」

「リーヴェ基礎学院の学園長が直々に推したっていう……」


「でも、魔力測定は『ゼロ』だったらしいぜ。ただの凡才をなんでこんな名門に?」

​ ひそひそと刺さる視線が痛い。

 父さんからもらったこの剣だけが、今の私の唯一の支えだった。

​「あのー、大丈夫ー?」

​ 聞き馴染みのない、弾むような声がした。

 振り返ると、そこには明るいオレンジの髪をハーフツインに結った女の子が立っていた。彼女の指先が私の肩に触れた瞬間、ほんのりと温かい熱を感じる。


​「あ、ごめんなさい! つい考え事をしてて……」


「いいってことよ! あ、あなたが噂の剣士ちゃん? 私はユズハ・ルビー!。炎を操る能力があるんだー!。あなたの名前は?」


「……エレナです。エレナ・ウェルムです」


「エレナね! よろしく! ねえ、その剣、後で私に見せてよ。魔法なしで戦うなんて、逆にかっこいいじゃん!」

​ 屈託のない笑顔。

 周囲の冷たい視線を一瞬で溶かしてしまうような、太陽みたいな明るさ。

 

「……うん!、よろしくね。ユズハちゃん」

​ この学園で初めて、私の居場所が少しだけ温かくなった気がした。

 けれど、その直後。

 私たちの前に、影が落ちる。

​「ふん。仲良しごっこか。……反吐が出るな」

​ 低く、地響きのような威圧感のある声。

 そこには、周囲の重力が一段階重くなったかのような錯覚を抱かせる、鋭い瞳の少年が立っていた。

 

 これが、私とレオ・タリクの、最悪で最高な出会いだった。



そうして始まった入学式は、退屈な校長先生の祝辞や、在校生の歓迎の言葉が続き、気がつけば閉式の時間が告げられていた。

​ 生徒たちがぞろぞろと教室へと移動を始める。

 ユズハは私に「じゃあ、また後でね!」と手を振って別れ、配られた座席表を確認しながら、指定された教室の扉を開いた。

 教室はすでに半分ほどの生徒が着席しており、それぞれが自慢の能力について語り合っている。


​(私の席は……っと)


​ 窓際の一番後ろ。日当たりが良くて、なかなか悪くない。

 そう思って自分の席に向かうと、そこにはすでに先ほどのオレンジの髪の少女が座っていた。


​「あ! エレナじゃん! ここ、隣だよ!」

​ ユズハが満面の笑みで隣の席を指さした。

 まさか隣の席とは。神様は私を、一人ぼっちにはしないらしい。

 ユズハと二人で、今日の入学式の感想や、お互いの出身地について話していると、ガラッと教室の扉が開き、女性の先生が入ってきた。

​「おーい!新入生!副担任になったホーク・ゼファーだ!俺は勝負が好きだ!勝負してえやつはいつでも歓迎だぜ!」

見た感じゼファー先生には羽が生えているので能力は鳥化?っぽい

 そう勝手に考察していると

「ホークさん!勝手に行動するなとあれほど…!」

またまた女性の先生が入ってきた


「ああ?フィリアせんせー別にいーだろ!仲を深めるために、な!」


「もう…あ、失礼しました私担任を努めさせてもらいます、フェアリー族のファリア・シルヴィアですよろしくお願いしますニコッ」

とても優しくて美しい担任…いかにも熱血系な副担任…すごいことになりそうだなあ


​「では、今日から一年間を共にする仲間だ!順番に自己紹介と、能力について好きに話してくれ!」


​ 一人、また一人と、個性豊かな能力が披露されていく。

 水を自在に操る者。

 身体を鋼鉄に変える者。

 植物の成長を促す者。

 隣のユズハは、にこやかに立ち上がると、手のひらに小さな炎を灯してみせた。

​「ユズハ・ルビーです! 炎を操る能力があります!。みんなと友達になりたいな!」

​ 教室が「おおー!」という感嘆の声に包まれる。

 そして、私の番が来た。

 重い足取りで席を立ち、教室の視線が一点に集まるのを感じる。

​「エレナ・ウェルムです……。えっと、得意なことは、剣術です」

​ 私はそう言って、背負った剣にそっと触れた。

 教室が、シンと静まり返る。誰もが「能力は?」という視線を向けている。

 喉が、カラカラに乾いていた。

 それでも、嘘はつけない。

​「……私の、能力は、ありません」

​ その瞬間、教室の空気が凍りついた。

 ざわめきが起こるかと思いきや、誰もが私を憐れむような、侮蔑するような、そんな視線を向けてくる。

 その中で、一際冷ややかな声が響いた。

​「ハッ、笑わせるな」

​ 声の主は、教室の後方から現れた長身の少年だった。

 先ほど、入学式で感じた「威圧感」の持ち主。

 レオ・タリク。

 彼は教卓の前に進み出ると、私を上から下まで見下し、鼻で笑った。

​「『能力はありません』だと? そんな凡才が、このスターライトアカデミーにいることが、すでにこの学園への侮辱だと思わないのか?」

​ レオの言葉に、教室中の視線が私へと突き刺さる。

「なっ!レオあんたねえ!」

 ユズハが何か言いたげに立ち上がりかけたが、私は首を振ってそれを制した。


​「……でも、私は推薦でここにいます」


「推薦? ああ、リーヴェ基礎学院の学園長の気まぐれか何かだろう。だがな、ここはおままごとをする場所じゃない。」


たしかにその通り…だけどせっかく推薦を貰えたんだ…期待に応えたい

私がそう思っていると


「早々喧嘩はやめましょうよ!ね?」

とフィリア先生が止めに入るが

「いいねいいねえ!なら勝負しな!!よぉし全員グラウンド来い!!!」

ホーク先生はとても強制的で勝負をすることになってしまった…



え、むりなんですけど!?相手能力持ちじゃん!?嫌がらせかなにかなの!?

そう思いながら渋々グラウンドへ行った

グラウンドへ着くと直径五メートルほどの円形のフィールドが現れる。

 そして、彼の足元に、どこからか現れた木刀が転がった。


「ルールは簡単!この円の外に出た方の負けだ!」

「…面白い、せいぜい、その鉄の棒で俺を 楽しませてみろよ剣士サマ」


挑発的な、嘲りの声。

 私は震える拳を握りしめ、転がる木刀を拾い上げた。

 心臓が、ドクドクと警鐘を鳴らす。

 

 これが、私とレオ・タリクとの、最初の戦いだった。

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