ギリシャの風に吹かれて

あぐつ

プロローグ

 南ヨーロッパに位置する共制国家『ギリシャ』

 そこへ一人の日本人が降り立った。青年の名前は速水律佳はやみりつか。名前だけでは女性と間違えられるが、彼は男性だ。

 黒髪に細身な体格。これといって特徴もない平凡な大学生である。

 律佳は荷物が詰め込まれたリュックを背負っていた。首にはデジタルカメラを下げ、片手には古びた手帳を持っている。

 空港の前。太陽の日差しに目を細め、青空を見上げた。


「来ちゃったな」


 周囲からは多言語が聞こえ、異国の地へ降り立ったことを実感する。

 おもむろに古びた手帳を広げた。黄ばんだページには、とある一文が刻まれているのだ。

 『約束の地 ここで』

 律佳は万年筆で書かれた文字を優しく撫でる。


「じいちゃん……」


 暫くページを眺めると、決心したように前を向く。

 そして青年は、異国の大地を踏みしめた。

 

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