俺の屍がまだ冷めていない妻は、俺の推しVだった
@fataku3000
プロローグ 新婚、はじめまして
序章 新婚、はじめまして
仕事を終えて家に戻ると、ソファベッドの上に一人の女性が座っていた。
……おかしい。
おかしい点が多すぎるので、順に説明する。
まず、俺は一人暮らしだ。
次に、その女性の見た目があまりにも奇妙だった。
深い青緑色の髪。頭の左右には、大きな三角形の団子のようなまとめ髪があり、その下を三つ編みが取り囲むようにして、さらにツインテールが垂れている。
肩を露出した長袖のチャイナドレスを着ていて、袖口はやけに広い。
そして何より――顔が、やたらと可愛い。
その姿は、俺の推しのVである尾花日々草と、驚くほどそっくりだった。
どう考えても、どこかの頭のおかしい女が、俺の好きなVのコスプレをして、鍵をこじ開けて侵入してきたとしか思えない。
問題は、俺がそんなに可愛い女の子と知り合いだった覚えがないことだ。
仮に知り合いだったとしても、俺はほとんど女性と関わらない。こんなことをされる理由が、まったく思い当たらない。
彼女は俺のほうをちらりと一度だけ見てから、また正面に顔を戻し、ぼんやりと座り続けていた。
その冷淡で、まるで当然とでも言いたげな態度に、俺は完全に面食らい、しばらくその場に立ち尽くしてしまった。
「……あの、どちらさまでしょうか?」
彼女は勢いよくこちらを振り向き、目を見開いた。
「え? あなた、私が見えるの……? 昨日は、確かに見えてなかったのに……?」
これで完全に確信した。これは、いわゆる頭のおかしいヤバい女だ。
どこかで偶然俺と接触して、勝手に恋愛脳をこじらせた結果、こんな病的な行動に出たんだろう。
「一昨日、私たち結婚したでしょう」
「えっ!?」
確かに、俺は一昨日結婚した。
だが、その事実を知っている人間はごくわずかだ。
俺は妻の写真を見ている。
どれだけコスプレをしたところで、こんな美少女になるはずがない。
そして何より問題なのは――
俺が結婚した相手は……。
どうしていいかわからず立ち尽くしていると、彼女は立ち上がり、ソファベッドの前に置いてあったローテーブルをそのまま通り抜けるようにして、俺のほうへ歩いてきた。
「これで、信じた?」
チャイナドレスの下から伸びるのは、下へ行くほど透けていく脚だった。
「私は、あなたの冥妻。○○○。芸名は――尾花日々草」
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