バグノイズ・リフレイン

ヨイクロ

第1話


 目が覚めた瞬間、世界が少しだけズレていた。


 カーテンの隙間から差し込む朝日が、いつもより白く、冷たく感じる。アラームは鳴っていない。けれど、僕の中の何かが「遅れている」と警告を鳴らしていた。


「……また寝坊か」


 呟いて、制服に袖を通す。


 鏡に映った自分の顔は、どこか他人のようだった。目の奥に、薄くノイズが走る。まるで、画面の解像度が一瞬だけ落ちたような、そんな違和感。


 玄関を飛び出し、アスファルトを蹴る。冬の空気が肺に刺さるたび、現実に引き戻される気がして、僕はただ走った。


 そのときだった。肩に、ふわりと何かが落ちた。


「……ん?」


 白い、小さな何か。羽虫か、埃か。よく見もせず、反射的に指でつまんだ。


 潰れた。


 ぬるりとした感触。指先に、透明な液体がじわりと広がる。


「……うわっ」


 思わず立ち止まり、手を見つめる。その瞬間、世界が“音”を立てて歪んだ。


 キィィィィィン


 耳鳴り。視界が一瞬、白黒に反転する。電柱が揺れ、空が波打つ。そして、誰かの声が聞こえた。


「エヴィノイジザパオビウ――」


 意味のない、けれどどこか懐かしい響き。その言葉が、頭の奥で何度もリフレインする。


「……なんだよ、それ……」


 気づけば、僕はさっき通ったはずの角を、もう一度曲がっていた。同じ犬が、同じタイミングで吠える。同じ風が、同じように頬を撫でる。


 世界が、ループしている。

 いや、違う。

 これは――バグだ。


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2026年1月3日 09:00
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バグノイズ・リフレイン ヨイクロ @yoikuro

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