尊敬する人の好きな人、僕が好きになれない人


 僕の尊敬する『彼』の好きな人を、僕が好きになるのは罪だと思ってた。

 それは彼への裏切りであると同時に、僕の死だから。

 僕はバレないように隠すことを決めた。

 ポーカーフェイス。

 仮面をかぶって彼としゃべってたし、彼女と話してた。

 

 バレたら死、バレたら死。

 そう思いながら。


 でも、自分の好きな人としゃべれるんだ。

 内心嬉しかった。隠すけど。

 好きな人を聞かれても曖昧に答えるし、彼女とは別のタイプをあげる。


 こうすることが彼の役に立てると信じて。



 でも、ほんとに、なんでかな。

 

 尊敬する彼から、親友の彼から、なんか距離を置かれてる気がするんだ。


 え、え? なんで?


 なんか、彼が僕をよく弄って周りを笑わせようとしてる。

 彼は人気者だ、僕と違って。

 彼の友達も彼を思って笑っている。

 僕を弄って笑っている。


 な、なんで? 僕は仲間だよ? そうだよね? 親友??


 広く浅く、誰でも友達であり、みんな普通に話せる人が僕だ。

 僕も人と話すとここに生きてることを感じれる。

 

 そう、これも一種のコミュニケーションだ。

 話せるなら僕はまだ仲間なんだ。


 おいおい、君もこうだっただろう?

 彼の友達を同じように弄ると、シーーーーン。

 

 あ、間違えた。









 え? いつから? え? 僕は? ここにいちゃ行けないの? 彼の友達じゃいられないの?? え? 死……





 ははっ、僕は彼の友達じゃなくなったみたいだ。

 なんでだろ?

 心当たりがない? ほんとに? 探せ、探せ探せ探せ探せ。



「おぉい、お前ってあの子好きなの?!」

 1人で帰ろうと校庭を横切ると後ろから友達が話しかけてきた。彼が指差す先には元親友の僕の尊敬する人が好きな人。そう、女子バスケグループをまとめて歩いている彼女を指差していた。


 え? どこでバレた? なぜ? 


「え? なんで? 僕の好きなタイプはあんなうるさくてガサツな女の子じゃなくてもっと大人しい子だけど?!?! なんでそう思ったの??」


「え? なんか噂になってるぜ? お前が○○を好きだって」


 ど、ど、どこでバレたんだ? 隠してた。上手く隠せてたはず! バレるわけはないんだ!

 誰にも話してないんだから! 話さなければ噂で収まる!

 


 ……いや、こっちから別の噂を広げればいいんだ!


「いやいや、どこからの噂だよ! 僕が聞いたのはあの子が好きなのは△△△(元親友の名前)だって聞いたよ」


「いやいや、それこそ違うだろ、あいつ彼女いるぞ」


 ……は?





 ……………は? なんで?


 バッ!


 僕は彼女の方を振り向いた。

 一瞬、彼女と目が合う。

 彼女が謎に笑って、こっちに手を振る。


 なんで? なんで、そんなことするんだ。


 僕はバレてない。僕はバラしてない。

 僕はいつだって仮面を被ってるんだ。

 わかるわけがない。

 ずっと第三者からどう見られてるか考えながら喋っているんだ、バレるわけがない。



 ……でも、自分の好きな人に笑顔を向けてもらえるのは嬉しかった。嬉しいのにそれを隠さないといけないことがキツい。苦しい。

 でも、ここでほんとにバレたら元親友の彼に申し訳が……

 

 仮面をつけたまま、友達に言う。

 

「まさか、僕があの子を好きなわけないだろ。そんなことより、早く帰ってあのゲームソフトやろうぜ、そろそろクリアできるだろ?」

「そうだな!お前は今日はクラブ?」

「いや、今日は休み。だから夜までやれるぜ?」

「いいね! 早く行こうぜ!」


 僕は逃げるように走ってその場を後にした。

 彼女の笑みを考えず。



 そして、僕は浅く広くの友達関係でどうにか生きて小学6年生に上がった。


 これからまた僕は死と天国を経験する。



 


 

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僕は後悔から学べない 咲春藤華 @2sakiha

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