僕は後悔から学べない
咲春藤華
それがカッコいいことだと
ずっと胸に残ってることがある。
ある小学生のときの記憶。
それがいいことだと。それがカッコいいことだと。
そう、信じていたとき。
それは、一番優先的に考えるべき相手は親友である、ということ。
僕は友達が少なかった。
僕は誰かと話すのが苦手だった。
その人が僕に対してどう思っているのか、僕の話を聞いてくれているのか、つまらん奴だと思われてないか。
そう深読みし続けてしまう。
苦しかった。
意外と誰も僕のことを気にしていない、そう思えばよかったかもしれない。
1人でいる方が何も考えなくて楽だった。
でも、ときどき。
僕が仲間ではないと、友達ではないと思われているのではないか、そう考えてしまう。
恐れすぎだ。
怖がりすぎだ。
考える。でも、不安は消えない。
学校という、クラスという、小学生のなかではそれは1つの世界で、全てだった。
そこから外されることは、死と同等のものだと思う。
死になくない。
……怖がりすぎか。
僕は友達が少なかった。
そう、少ないだけでいないわけではなかった。
クラスの人とよく喋れる。
グループを作れといわれてもすぐに作れる。
ある程度は社交的だったから嫌われてはなかった。はずだ。
友達100人はできていた。
でも、その中で僕の親友はそんなことはない奴だと知っていた。
僕の親友だと、僕を除け者にしない友達だと確信を持って言える奴がいた。
そいつは身長が高くイケメン、細マッチョでスタイルがいい。学力は学年トップ、身体能力も高く、友達も多い。
クラスでは自ら進んで学級委員長になったり、クラスをまとめたり、みんなの光のような存在。
僕も憧れていた。尊敬していた。
そんな存在と友達で親友でいられることが嬉しかったし、彼だけは絶対に信頼できるやつだと声を大にして言える存在だった。
そして、当時彼から言ってもらえた言葉が僕の救いだった。
『おまえは俺より足の速い1位だから学年対抗リレーのアンカー出れるか?俺がバトン渡す』
彼は僕と一緒の陸上クラブに所属していた。
僕より何もかも完璧な彼に唯一勝てる、並べるこの足の速さは自分で世界一だと思っていた。
彼から彼の友達に僕を紹介するときに『俺より足の速いやつ』とよく紹介してもらった。
でも、足の速さよりももっと凄いことを沢山持っている彼を前に立たせないと、という考えがあったから毎回僕は謙遜して彼の話題を前に持ってきた。
彼の友達が彼を褒めるのを聞いて僕は満足だった。いい仕事をしたと思った。
彼の役に立てた。尊敬する人の役に立てた。
彼も嬉しかったのか彼の1歩半斜め後ろにはいつも僕がついていた。
勉強も身体能力も何もかもが中途半端な僕が、彼の仲間として傍にいれることが嬉しかった。
だって、彼が僕の世界だったから。
彼から嫌われることは、死だったから。
そう、それで僕は彼の親友になれた。
親友の僕に彼はいろんな話を、相談をしてくれた。
例えば、彼には気になっている人がいる。
僕らの学年の女子の中で一番運動ができる女の子を。僕が好きになれない女の子を。
成績で言えば、県の代表として小学生女子バスケのメンバーとして全国に行ったり、体力検定は全国上位の記録を持ったり、一番は彼女をチームに入れればリレーは確実に勝てると言われるほどの足の速さ。
男子の1位は僕、女子の1位は彼女。
そう言われるほどの女の子。
ふーん、そんな子が好きなんだ。
僕は相談には乗るけど、なにぶん僕も恋愛はしたことがない。
女の子の気の引き方なんて知らないから、彼がこのままの活躍をすれば気が引けるのではないかと考え、言ってみたりはした。
成功はしてなかった。
それから少し経って、なぜか彼女が僕らの陸上クラブに入ってきた。
僕は彼がいるから彼女も来たんだと思っていた。
彼が成功したんだと、ほんとに、心の底から思っていた。
でも、あれ? 彼は全然彼女としゃべってないよ?
……ああ!! 僕がいつも近くにいて話しかけづらいのかな!!
よし、僕が1人で練習すれば彼が話に行けるかな? 彼女が話しかけに行けるかな?
そう、考えた僕は1人ペースを上げていつもよりもキツい練習を行うようになった。
でも、彼は彼女としゃべる素振りもない。
なんでだろ。
まあ、このまま続ければ話せるかな?
それからというもの。
僕は小学生5年の後半から彼と話すことが減った。
それが尊敬する彼の役に立つと思って。
彼の好きな人だから僕は好きと言えない人。
その2人をくっつけることが相談を受けた僕の使命だと。
自分の恋よりも親友との友情。
それを優先することがカッコいいことだ信じて。
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