何度負けても、立っていたのは私だった
なおや ゆかり
第1話最初の敗北
私は、また負けた。
土の上に背中を打ちつけ、息が詰まる。
剣は指から滑り落ち、遠くで乾いた音を立てた。
「終わりか?」
目の前に立つ相手は、まだ余裕があった。
剣を構えたまま、私を見下ろしている。
終わりじゃない。
私は、そう思った。
腕に力を入れる。
震える。
でも、動かない。
何度目だろう。
こうして地面に転がされるのは。
観客のざわめきが耳に入る。
笑い声。
同情とも嘲りともつかない視線。
才能がない。
何度も言われた。
剣の筋が悪い。
反応が遅い。
覚えも悪い。
全部、分かっている。
それでも、
私は目を閉じなかった。
呼吸を整える。
一度だけ、深く。
そして、立つ。
膝が笑う。
腕が重い。
それでも、
地面に座り込むよりは、ましだった。
「……まだだ」
声は、小さかった。
それでも、確かに届いた。
相手の眉が、わずかに動く。
次の一撃で、
私はまた倒された。
勝敗は、そこで決まった。
それでも私は、
倒れたままでは終わらなかった。
剣を拾い、
血を拭い、
もう一度、立つ。
勝てなかった。
でも、逃げなかった。
それだけで、
今日は十分だった。
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