「練習」ラブコメに世界に転校してきたバトル主人公

@Shxbsk

第1話 異端転校生

放課後の教室で、僕は一人の女の子を待っていた。


彼女の名前は、桜明日香(あすか)。

幼馴染であり、たぶん――いや、間違いなく一番仲のいい女友達だ。

もっとも、相手が僕のことを本当に「友達」だと思っているかは、定かではないけれど。


黒髪のボブで、顔立ちは整っている。

派手ではない分、目立たない。

そのせいか、彼女には密かなファンが多い――そんな印象があった。


今日は、そんな彼女が「話がある」と言っていた。

約束の場所は、この放課後の教室。

部活が終わるまで、僕は一人で待つことになっている。


スマホで、最近ハマっているゲームをぼんやり操作していると、通知が鳴った。


『もうすぐ教室に着くからね♡』


ハートの絵文字はさておき、

なぜか胸がざわついた。


数分後、教室の扉から彼女が顔を出す。


「待たせてごめんね」


「別に大丈夫だよ」


正直に言えば、今日はソシャゲの周年イベントで早く帰りたかった。

……けど、幼馴染の頼みだ。

それに、こんな美人の言うことを断れるわけがない。


「私、君のことが好き。付き合ってほしいの!」


やっぱり、そう来たか。

薄々気づいてはいた。

彼女が僕のことをどう思っているかくらい。


「いいよ。でも、僕でいいの?」


「幼稚園の頃から、好きな人は変わってないよ?」


――なんて可愛いことを言うんだ。


こうして僕たちは、付き合うことになった。

帰り道、初めてできた彼女に胸をときめかせながら、家へと帰った。



翌日。

彼女ができてから、初めての登校。


教室に入った瞬間、なんだか騒がしい。

もう明日香と付き合ったことがバレているのかと思ったけれど、どうやら違うらしい。


自分の机に鞄を置き、隣の席のやつに声をかける。


「なあ、今日なんかあったの?」


「いや、転校生が来るらしくてさ。男か女か気になるよな。美人だったら最高なんだけど」


……いるだろ。

僕の彼女、めちゃくちゃ可愛いだろ。


そんな噂が飛び交う中、担任が教室に入ってきた。


「みんな知ってると思うが、今日は転校生が来ている」


「安田、入ってきていいぞ」


次の瞬間だった。


本来ならスライド式のはずの教室の扉が、

教室の中心に向かって、勢いよく吹き飛んだ。


破片が床に散らばり、教室が静まり返る。


「……は?」


クラス全員の声が、重なった。


「なんだよ。カビ臭え部屋だな、ここ」


そう言って現れた転校生――安田。

想像していた「普通の学生」とは、あまりにもかけ離れていた。


黒いフードを深く被り、制服は着ていない。

ボロボロのダメージジーンズ。

首元には、緑色に淡く光るひし形の宝石がぶら下がったネックレス。


歩き方、視線、立ち姿。

行動というより、纏っている空気そのものが違う。


――なんだ、こいつ。


なぜか、そう思った瞬間。

胸の奥が、ひどくざわついた。

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