第12話神の手に守られた命 ── 妻が繋いだ、命のラリー

僕が今の妻と出会う前、彼女は何度も死線を越えてきた。

それは、今の科学や常識では説明のつかない、壮絶な「命の戦記」だった。

​長女の出産は、二日半に及ぶ陣痛と大量出血。近所の人に「あの人はもう死んだ」と噂されるほどの惨状を、一人の神がかった助産婦さんが救ってくれた。

長男の時は、どの病院からも「出産は無理」と断られ、最後に辿り着いたのは、飲み屋街にある閑散とした古い病院だった。「産んでみな分からん」と言ってくれたあの先生がいなければ、今の僕たちの家族は存在しなかっただろう。

​そして、次女の出産後に彼女を襲った先天性白血病。

抗がん剤の副作用で、朝起きると黒くなった自分の足の爪が、あちこちに剥がれ落ちていたという。絶望の中で彼女を救い上げたのは、またしても「針治療の神様」と呼ばれる人との出会いだった。

​妻の人生には、常に「神の手」が差し伸べられてきた。

いや、彼女の「生きたい」という執念が、その手を引き寄せたのかもしれない。

​科学では証明できなくても、現実に奇跡は起こる。

いくつもの困難を乗り越えて、彼女が今、僕の隣で笑っていること。

それが何よりの証拠だ。

​妻の話を聞くたびに、僕は心の中でこう呟かずにはいられない。

「ありがとう。僕と出会うまで、生きていてくれて。」

​命は、受け継がれるラリーだ。

彼女が必死に繋いできたこのバトンを、僕は大切に、大切に守り抜きたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る