祝いの天使・呪いの悪魔
かごのぼっち
悪魔の子・天使の子
王家の血筋は特別だ。
総じて魔力が高く、なにかしらの祝福が備わっている。
祝福とは女神から授けられた異能とされ、身体能力に優れていたり、治癒能力に優れていたり、魔力量が通常の倍だったりと、その内容は様々なものだ。
通常ならばその能力を活かし、第一子は世継ぎ、第二子以降は国の高官に就いて国政を牽引した。
だが
半世紀に一度ほど、突然変異的に『悪魔の子』が生まれる。頭に角、口に牙、耳は尖り、爪は長く、半獣のように毛深く、醜悪だとされる。
生まれた嬰児が『悪魔の子』だと判ると秘密裏に処分される。処分と言っても殺処分と言うわけではない。通例に従って、魔素が濃く、凶悪な魔物が棲む山、恐山の祭壇へ奉られることとなる。
「いいか、決して誰にも悟られるな!」
「はっ!」
祭壇への奉納を任された従者も漏れなく処分されるのだが、この因習は国の一部の者しか知らない為に、使わされる従者が知る由はない。
「それにしても、なんと禍々しく、忌まわしい嬰児か。これが王家の血を引く者だと思うとゾッとする」
鼻柱が強く、目の覚めるような深紅の瞳が、出産の厄祓いに立ち合った司教の目を捉え、まだ幼い小さな牙を剥き出しにして睨みつけている。それを見て疎ましく思った司教は、男の子の嬰児を布で顔まで覆ってぐるぐる巻きにした。
「早く持ってゆけ!」
「はっ!」
おくるみに包まれた緑児を受け取った従者は、すぐにも城を発った。
「はあ⋯⋯忌々しい。それにひきかえ、なんとも愛らしいことよのう。あれが『悪魔の子』とするならば、この子は『天使の子』ではないか!」
司教の腕の中には真っ白な肌を薄桃色に染めた、天使のように微笑む女の子の赤子が抱かれていた。
この時生まれたのは双子。一人は『悪魔の子』として忌避されて、一人は『天使の子』として祝福された。
─三日後─
姫の出産に伴い、各国から祝辞と贈り物が届けられ、国を挙げての祝いの宴が催された。
恐山から戻って来た従者は通例に従って処分される予定だったが、事情が変わった。従者は嬰児が絶命するのを見届けなければならないのだが、今回にあってはそれが成されなかった。なぜなら、従者が帰って来なかったからである。
国王は表立って騎士団などの調査隊を出すわけにもいかず、秘密裏に暗部を恐山に送り込んで様子を見に行かせた。
しかし、戻って来た暗部の報告によると、嬰児と従者の姿は無かったと云う。
「おそらく、魔物たちに喰われたと推測しますが、残念ながら確認は出来ません」
「ふむ。仕方あるまい。引き続き警戒を続けよ。仮に生存を確認した場合はその場で処せ!」
「は、仰せのままに」
影に消えた暗部を見送ると、国王は髭を触り、窓の外の遠くに見える恐山へと視線を向けた。
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