透明な壁

@namino_

第1話

透明な壁を叩く私は命が途切れるのを恐れている様に必死で泣いている。


その光景を前はよく想像した。

今はたまに思い出す。

その間に、壁を叩くよりも違う出口があるよ、こちらからも開くんだよ、と声をかける時期もあった。


壁の向こうには触ることの出来ないとても欲しいものがありそうで。わたしに触って欲しい、透明な壁の外へ出してくれと泣いている様で。


触れないものの代表例に両親の心と浮かび、私の心とも分かる。両親の心は触れなかったし、私の心にも私にもわかりづらい固く空虚な箱みたいな物を感じる。触れない親達は軽口を叩いたり、今日のニュース番組の感想を言い合ったり、美味しいものを分け合って喜び合う、その程度のコミュニケーションは難なく完璧にこなせる。だけれど、その程度のコミュニケーションなら今バス停で乗り合ったばかりの人とも可能だ。


つまり角度を変えたら私の両親は一期一会の良いところしか思い出にない他人の位置だ。嫌なところも良いところもその時だけだから後腐れないしそれで終わり。その出会って容易く接してそれで終わりが延々と続いている。見たくないものは見ない。その程度で済ませて自室へ引き上げる。それから私は引きこもり自傷するようになる。


心に抱えた空虚な箱は親から万全な愛で満たされたかった感情だ。(万全な愛なんてあるのか知らないけど)

だから一生かかっても空虚は消えないだろう。そうと分かればもうこの箱の存在に振り回されることはない。満たされなかった感情はいっぱい戦ってきたんだなあと思う。

私の毒親はその親からいっぱいに愛されたかった空虚を抱えて、見ないことにして、頑張った人達とも呼んで良いかも知れない。それを私が「見ろよ!見てよ!」と騒いでも対応は難しいということ。愛されなかった空虚を実感することを躊躇っている。自分の親は立派だったんだと言っている。それで終わり。


寂しかった、愛に飢えていた、そんな風に見つめるのは納得がいかない。自分の親は立派だったんだ、そう思う自分は間違ってないんだ、そこから外れることをとても嫌がっている。


信じるものが揺らぐのは誰でも怖いだろうと思う。

わたしは人間関係を深く築く、その事に困難がある。とても難しい。


同じ悲しみを抱えていて、そして向き合い方は全く違っていた。分け合って分かち合うことは出来なかった。親子間にはいつまで経っても復旧しない通行止めの道一本しか無くて、それでいて父と母が人間関係を築いたらしい事が今は全く腑に落ちない。


壁のことは忘れて、もう四角い箱に感情を詰めて隠すことはしなくて。あの場所で生きなければいけなかったけど、もうそんなことはしなくていい。もう終わった。ひとり死に、ふたり死に、感じなくても考えなくても実感出来ていく。立ち止まってばかりいる。焦っている。立ち止まることができる。

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