異世界帰りの俺、唯一所持していたパッシブスキル【被支援効果増幅・極大】が現代でも使えてしまった件
徒然書
第1話 俺、魔王を倒して現代に帰還する
「ひ弱な人間ごときがよくぞ余の元へと辿り着いたな、褒めてやろう。しかし…勇者の貴様からは全く力が感じられん。とんだ拍子抜けだな」
「…みんな。魔王が油断している内に一気に勝負を付けるぞ! ありったけの支援効果を俺にかけてくれ!!」
「「「わかったわ!」」」
とうとう魔王ベルファタンの前に辿り着いた。女神にいきなり異世界転移させられて半年間––––ここまで辿り着く事が出来たのは、勇者が唯一持っているパッシブスキルの効果と三人の仲間たちのお陰だ。
「
「ありがとう、ディアナ!力が漲ってくるよ」
貴族の娘ながら踊り子のスキルを持つ、ディアナ・グレイス。金髪ポニーテールの彼女の舞は、いつも文也に勇気と力を与えてくれる。【勝利の舞】は対象の身体効果を二倍に増幅させ、更にその負荷に身体が耐えられるよう増強されるという優れものだ。
「わたくしも参ります…文也さん、受け取ってください! 【
「ロザリアの結界のお陰で、聖なる力が湧いてくる!」
今代の聖女、ロザリア・エミール。この世界の女神を信奉するエミール教、その女神の名前を与えられた彼女は銀髪の長い髪を靡かせる。比類なき彼女の神聖な魔力による【聖属性強化結界】は、魔法力を持たない文也に神聖属性を持たせ更に闇属性の魔王への攻撃を二倍に増幅させる。
「待たせたわね、文也! 私の全魔力を込めた支援魔法––––必ず魔王を倒しなさい! 【
「フレイ、この力で絶対魔王を倒してみせる!」
ハミルトン王国の第一王女にして世界一の支援魔法の使い手、フレイ・ハミルトン。赤髪ツインテールの彼女はやや幼く見えるものの、フレイの支援魔法の効果は絶大だ。【攻撃力極大増幅】は通常の攻撃支援魔法と異なり、魔力を全て注ぎ込む代わりに対象の攻撃力を五倍にアップさせるというここぞの時の切り札だ。
「さあ魔王、俺の…いやみんなの力を受けてみろ!」
「そ、それが貴様の真の力か⁈」
「「「文也!」」」
三人から受けたバフ効果を俺のパッシブスキル【
(半年間、一緒に旅をする中で彼女達との間に芽生えた絆。この世界に暮らす三人の為にも、この一撃で魔王を倒して見せる!)
文也はオリハルコンで出来た長剣を構え、飛躍的に向上した身体能力で跳躍する。
「や、奴はどこに消えた⁈はっ、上か?」
魔王ベルファタンが気付いた時にはもう遅い––––全ての力をこの一撃に掛け、魔王の頭上から一気に斬り下ろす!
「喰らえっ!【フミヤ・ダイナミック】!」
「ぐっ、ぐあぁぁぁっっっ!」
聖属性を纏った青白い斬撃が、魔王の身体を真っ二つに両断する。増幅された聖女の魔力が魔王の再生能力を完全に抑え込み、文字通り一撃で勝負が決まった。
「よ、余がこれほど簡単にやられるとは…しかし覚えておくがよい。いつか余の意志と力を継ぐものが現れるであろう––––」
魔王ベルファタンは意味深な言葉を残して、その身体は跡形もなく消滅した。辺りを警戒するもこれ以上魔族が現れる様子は無い。バフ効果も切れ、ようやく肩の力を抜いた俺に仲間達が駆け寄って来る。
「やった、文也! あたし達遂にやったのよ!」
「文也さん、貴方は紛れもなくこの世界の救世主です!」
「文也…国を、世界を救ってくれてありがとう」
「はは…俺の力じゃなくて、みんなが助けてくれたお陰さ。俺一人じゃ何も出来なかった––––ここまでついて来てくれて、本当にありがとう」
勝利を喜び、お互いを讃え合う。彼女達は魔王に勝つ事が出来たら、文也に伝えようと決めていた事があった。フレイ・ディアナ・ロザリアの三人は目を合わせた後、フレイはコクリ頷いた。
「あのね、文也…魔王ベルファタンを倒したら、貴方に伝えたい事があったの。良かったらこの世界に残って、私たちと一緒に––––」
「魔王の討伐、おめでとうございます。約束通り、文也さんを元の世界に戻して差し上げますね」
フレイが言い切る前に突如光と共に現れたのは、文也をこのスカイ・スクエアの世界に異世界転移させた女神エミール本人だ。彼女が手を翳した瞬間、文也の目の前にゲートのようなものが出現して飲み込まれる。
「えっ、ちょっ…」
「「文也!」」「文也さん!」
三人が文也の名前を叫んだ時には、既に彼の姿は消えて無くなっていた––––。
「う、うーん…はっ!ここは?」
暫く意識を失っていた文也が目を覚ます。辺りをキョロキョロと見回すと、そこは見慣れた自室の中であった。
「本当に元の世界に帰ってきたんだな…あの女神、みんなとの別れを惜しむ間も無く飛ばしやがって…」
文也は現代日本に帰って来られてホッとしたものの、生死を共にした三人にしっかりと別れを告げる事も出来なかった。
(そういえばあの時––––フレイは何を言おうとしていたんだろう?)
話の肝心な所で女神が現れ、いきなり転移させられたため有耶無耶になってしまった。もう彼女達に会えない事だけが文也にとっては心残りだった。
(そういや戻って来たのはいいけど、一体今はいつなんだ?向こうの世界ではゆうに半年は過ぎたはず…)
次に文也が気になったのは現在日時だった。恐る恐る久しぶりに自身のスマホを手に取り操作してみた。
「2026年1月10日の土曜日––––転移する前と全く同じ日か。俺が居なくなってた期間が無いのは色々と面倒じゃなくて良かったのかな。でも、あれ…という事は?」
元の世界での時間が経過していなかった事に安堵したのも束の間、文也は慌ててスマホのカレンダーを開きスケジュールを確認し無常な現実を突き付けられてしまう。ちょうど一週間後には大学共通テストが行われるのだ。
「あ、あれだけ必死に勉強したのに…異世界の記憶で折角暗記した項目も、すっかり頭から飛んじゃってる!最悪だ…これで浪人でもしたら、あの女神のせいじゃないか⁈」
(続く)
------------------------------------------------------
[あとがき]
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!本年最終日に新作を投稿…考えてみると現代ファンタジーもの書くのは初めてかもしれません。拙い部分あるかもしれませんが、何卒温かい目で見ていただけると幸いです。
もし物語が面白かった・続きが気になるという方は♡や⭐︎と作品・作者のフォロー、また感想をいただけるとありがたいです( *・ω・)*_ _))
異世界帰りの俺、唯一所持していたパッシブスキル【被支援効果増幅・極大】が現代でも使えてしまった件 徒然書 @10101162
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界帰りの俺、唯一所持していたパッシブスキル【被支援効果増幅・極大】が現代でも使えてしまった件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます