祝ってあげましょう

あざみ忍

第1話 祝う≒?

 或る日のこと、友人のめぐみからこんなメッセージを受け取った。


 To 沙織さおり

 久し振り、元気? 私は相変わらず、世界を飛び回っています(笑)

 突然ですが私、来春に結婚します!

 お相手は沙織も知っている、朽木くちき圭吾けいごくんです。どう、驚いた?

 沙織にはぜひとも結婚式に参列して、祝ってくれると嬉しいな~


 惠は大学時代の同級生。文武に秀でており、異性はもちろん同性からも羨望の眼差しを向けられるビジュアル。まさに完璧人間。現在は日本を代表する、トップモデルとして活躍中。この前もファッション雑誌の表紙を飾っていた気がする……。


 それにしても、まさか惠が結婚するとは思わなかった。だって大学時代の彼女と言えば、「結婚は人生の墓場」だと常々口にするようなタイプで、告白してくる野郎を片っ端からフリ続け、4年間でおよそ100人という記録を樹立した。


 そんな難攻不落の彼女の心を射止めた圭吾も私たちと同じ大学の同級生で、私とはテニスサークルでダブルスのパートナーを務めてくれた。ちなみに私の元カレ。いろいろあって別れたけど、最終的なゴールがまさか惠との結婚とは、世の中何が起こるか分からないものである。


 さて、結婚式に参列して、祝ってくれると嬉しいか。仕方ない、ここはアレに頼るかな。スマホを取り出すと、とあるホームページのアドレスを入力する。『大切なあの人を祝ってあげましょう』。うん、ここならOK。私は慣れた手つきで依頼内容を打ち込んでいく。

 お相手の名前:篠宮惠

 お相手の年齢:27歳

 お相手の性別:女性

 お相手の住所:東京都○○区△△町◇-◇◇

 お相手との関係:友人

 最後に『本当にお相手を祝いますか?』という質問に『はい』と答えれば、準備万端。あぁ、結果が楽しみだな~。


 ※1ヶ月後※

 To 沙織

 この前結婚するって話したけどゴメン、圭吾が亡くなったからナシになりました。

 それと私、もうこの世にいる理由が無くなったので、自殺します。

 さようなら。


「あれれ、死を選んじゃうとは……。よっぽど圭吾のことが好きだったんだね」

 私は漢字辞典を取り出すと、付箋を貼ったページを開く。ここは私のお気に入り。

『祝』音読み:シュク・シュウ

   訓読み:いわ(う)

   意味:おいわいする。幸せを祈る。断ち切る。

      (人を)


 ※あとがき※

 祝うと呪う、もともと同じ漢字が派生したものだそうですよ。そして『祝う』と書いて、『のろう』と読むこともできるそうです。ネタを集めていたら、そんなことを知りました。運営さんが推奨したような楽しい話にならなくてゴメンなさい!(笑)

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祝ってあげましょう あざみ忍 @azami_shinobu

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