頭痛のタネ
夢野ありか
第1話
日高明彦は、いつも通り会社へ向かう電車の中で、もやもやとした頭痛を感じていた。彼の頭痛は数年前から続いていて、もはや生活の一部となっていた。何か所か病院を受診しても、原因は不明だという。仕事が忙しい日常の中で、この頭痛は彼に一層疲労感をもたらしていた。
明彦の妻、美砂子はプライドが高くて気が強い女性だ。日高家の主導権を握る彼女は、いつも家族に対して厳しい目を向けていた。特に中学生の息子、翔太の進路に関しては、厳しい意見を持っていた。翔太は料理が大好きで、調理科のある職業高校への進学を希望していたが、美砂子はそれに強く反対し続けていた。「料理なんて趣味の延長でしょ!」というのが彼女の主張だ。
「翔太には将来大学へ行って一流企業に入ってもらいたいのに、こんな進路を選ばせるなんて……」美砂子の声はどんどん大きくなり、明彦は心の中で葛藤を抱えながらも、息子を応援するために彼女をなだめようとした。
「……人生は一度きりだ。翔太が本当にやりたいことを応援してあげてほしいんだ……」明彦は優しい口調で言葉を紡いだ。
その時、部屋の空気が一変した。美砂子が突然、顔色を変え、ふらふらになりながら床に崩れ落ちた。
「美砂子!」明彦の声は驚きと恐怖で震えた。急いで彼女を抱きかかえ、救急車を呼んだ。しかし、運命は無情だった。病院に運ばれた美砂子は心筋梗塞で、そのまま帰らぬ人となった。
明彦は、出口のない頭痛とともに、人生の不条理さを感じていた。美砂子との口論が、最後の会話になったことを思い出し、彼は心の中で彼女に謝罪した。翔太には、自分の進みたい道を見つけることがどれだけ大切かを、これから教えていく覚悟を決めた。
日高明彦の新たな戦いが、静かに始まるのだった。彼は息子と共に歩みながら、頭痛のタネがどこまで心を痛めても、家族を守る決意を固めた。どんな苦しみも乗り越えられる、そのためなら何だって頑張れると信じて。
頭痛のタネ 夢野ありか @lolore
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