祝日の各駅停車
清水らくは
祝日の各駅停車
いつもとは違う様子の乗客が多い。そういえば今日は、祝日だったか。
カレンダーとは関係ない仕事をしており、今日が何曜日だったのか、何の日だったのかをよく忘れる。貰ったシフトを元に一か月分の目覚ましを設定し、機械に起こされた日には仕事に行く。そんな日々を続けてきた。
大きな花束を持った人がいる。きれいな和服を着た女性がいる。
そのほかの人々も、どこか楽しそうで、特別な日の顔をしていた。
僕は今から仕事だ。好きだからやっているのではなく、お金のためにやっている仕事だ。
列車が止まると、多くの人が下車し、いくらかの人が乗車した。
花束を持った人も下りて行った。満面の笑みだった。
終点が近付いてくると、乗ってくる人の数はがくんと減る。車窓から見える景色には緑と一戸建てが増えていく。
すでに車内はガラガラだ。
そして終点ひとつ前の駅で、和服の女性も電車を降りた。
今からどうするんだろうか。地元のみんなで集まって騒いだり、家族と楽しんだり。祝ってくれる人がいるんだろうなあ。
ついに終点に着いた。ゆっくりと、ホームへと降りる。列車は折り返して、町に戻っていくことになる。
「おはようございます!」
足元から声がしてびっくりした。目の前で男女が困惑しながら笑っていた。足元には野球帽をかぶった小さい男の子が。
「あ、えーと、おはよう」
もう朝ではなかったのだけれど、満面の笑みを見て僕も朝の挨拶を返した。
「おじさんお仕事の服だ。 行ってらっしゃい!」
手を振りながら子供は電車に乗っていった。「すいませんねえ」と両親らしき男女が小刻みに頭を下げていた。
今日は祝日。
祝日の各駅停車 清水らくは @shimizurakuha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます